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86話 尋問の後
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パラグアスの口から出た、協力者たちの名前を元にカナルが真偽を確認しながら、ボルカンは1人ずつ尋問すると…
ほとんどの重臣たちが、ボルカンに真実を語っていた。
叔父インセンディオを処刑した"炎の惨劇" 以来、前ルイナス公爵レクエルドと共に反逆に関わった貴族たちに対して、ボルカンが容赦なく厳罰で対処した記憶が新しく、不正を働くような邪悪な考えが育つほど、時間が経過していなかったことが幸いだった。
「大臣殿、正式に罰が下るまで自宅で謹慎して下さい、御子息のためにも、けして浅はかな行動はされないように! 宜しいですね?」
強い口調でベンタナが項垂れる大臣に、言い渡す。
ボルカンの報復を恐れ、国外へ逃げ出そうとした者が出ていたため、面倒な仕事が増える前に、ベンタナは釘をさしたのだ。
現在は国中の騎士を王都へ呼び寄せ、大勢いるパラグアスに関わった重臣たちの邸回りを監視させている。
「私はこれ以上、陛下に背くつもりはございません、補佐官殿の指示に従います」
パタンッ… と静かに扉を閉めて、大臣が執務室から退室するとボルカンはさっ… と立ち上がり、カナルの側へ行き抱き上げる。
「今日はここまでだ、カナル! これ以上、身重のお前を疲れさせてはいけないからな!」
「え…? い… いえ、ボルカン様! 僕はまだ大丈夫ですよ?!」
「ダメだカナル! 自分では分からないのか? 顔色が悪くなっている」
腕にカナルを抱き上げたままソファセットへ移動し、ボルカンは憂い顔でどさりっ… と腰を下ろす。
「確かに少し顔色が、お悪いようですね… カナル様、侍医殿を呼びますか?」
「本当に、大丈夫ですから! ベンタナ殿も過保護にし過ぎですよ?!」
「そうですか? ですが今日の尋問はここまでにしましょうね、陛下の方が我慢出来そうにありませんから…」
ベンタナはチラリとボルカンを見る。
「無礼だぞ、ベンタナ!」
むすっ… と不機嫌そうにしているが、ベンタナにずばりと気持ちを言い当てられ、薄っすらと頬を染めるボルカン。
「・・・・・・」
国王ボルカンのそんな可愛い姿を、今まで見たことが無かったベンタナは、まじまじと強面主君の赤い顔を眺めた。
「ははは…」
自分を膝の上に乗せるボルカンの腕を、トントンッ… と叩きなだめながらカナルが苦笑する。
「そうだバイラル! 疲れが取れるように、カナル様がお好きなお茶を淹れてくれ」
「はい、ベンタナ様」
執務室のすみで、カナルのために控えていた従者バイラルが、ベンタナの依頼を受け、急ぎお茶を淹れに調理場へと向かう。
尋問の内容を細かく調書に書き記していた書記官たちを退室させ、ベンタナ自身も国王夫妻を気遣い、丁寧に頭を下げて執務室から去ってゆく。
火の精霊の力を見た補佐官ベンタナと護衛騎士デレチャには、ボルカンが精霊の加護を受けた経緯と…
カナルも夜の精霊の加護を持つ者であると伝えていた。
「フゥ―――ッ… やれやれ…」
「大丈夫か?」
大きなため息を吐くカナルを見て、ボルカンは心配そうにたずねた。
「確かに、少し疲れました」
カナルは脱力し、ボルカンにぐったりともたれた。
「バイラルの茶を飲んで少し休憩したら、後宮へ連れて行ってやる」
「ありがとうございます、でも… あの… ボルカン様と少しお話がしたいです」
「何だ? 何か気になることでもあるのか?」
「王女殿下のことが気になって… ディアレア様をどうされる、つもりですか?」
ボルカンの眉間にしわが寄り、厳しい表情になる。
ほとんどの重臣たちが、ボルカンに真実を語っていた。
叔父インセンディオを処刑した"炎の惨劇" 以来、前ルイナス公爵レクエルドと共に反逆に関わった貴族たちに対して、ボルカンが容赦なく厳罰で対処した記憶が新しく、不正を働くような邪悪な考えが育つほど、時間が経過していなかったことが幸いだった。
「大臣殿、正式に罰が下るまで自宅で謹慎して下さい、御子息のためにも、けして浅はかな行動はされないように! 宜しいですね?」
強い口調でベンタナが項垂れる大臣に、言い渡す。
ボルカンの報復を恐れ、国外へ逃げ出そうとした者が出ていたため、面倒な仕事が増える前に、ベンタナは釘をさしたのだ。
現在は国中の騎士を王都へ呼び寄せ、大勢いるパラグアスに関わった重臣たちの邸回りを監視させている。
「私はこれ以上、陛下に背くつもりはございません、補佐官殿の指示に従います」
パタンッ… と静かに扉を閉めて、大臣が執務室から退室するとボルカンはさっ… と立ち上がり、カナルの側へ行き抱き上げる。
「今日はここまでだ、カナル! これ以上、身重のお前を疲れさせてはいけないからな!」
「え…? い… いえ、ボルカン様! 僕はまだ大丈夫ですよ?!」
「ダメだカナル! 自分では分からないのか? 顔色が悪くなっている」
腕にカナルを抱き上げたままソファセットへ移動し、ボルカンは憂い顔でどさりっ… と腰を下ろす。
「確かに少し顔色が、お悪いようですね… カナル様、侍医殿を呼びますか?」
「本当に、大丈夫ですから! ベンタナ殿も過保護にし過ぎですよ?!」
「そうですか? ですが今日の尋問はここまでにしましょうね、陛下の方が我慢出来そうにありませんから…」
ベンタナはチラリとボルカンを見る。
「無礼だぞ、ベンタナ!」
むすっ… と不機嫌そうにしているが、ベンタナにずばりと気持ちを言い当てられ、薄っすらと頬を染めるボルカン。
「・・・・・・」
国王ボルカンのそんな可愛い姿を、今まで見たことが無かったベンタナは、まじまじと強面主君の赤い顔を眺めた。
「ははは…」
自分を膝の上に乗せるボルカンの腕を、トントンッ… と叩きなだめながらカナルが苦笑する。
「そうだバイラル! 疲れが取れるように、カナル様がお好きなお茶を淹れてくれ」
「はい、ベンタナ様」
執務室のすみで、カナルのために控えていた従者バイラルが、ベンタナの依頼を受け、急ぎお茶を淹れに調理場へと向かう。
尋問の内容を細かく調書に書き記していた書記官たちを退室させ、ベンタナ自身も国王夫妻を気遣い、丁寧に頭を下げて執務室から去ってゆく。
火の精霊の力を見た補佐官ベンタナと護衛騎士デレチャには、ボルカンが精霊の加護を受けた経緯と…
カナルも夜の精霊の加護を持つ者であると伝えていた。
「フゥ―――ッ… やれやれ…」
「大丈夫か?」
大きなため息を吐くカナルを見て、ボルカンは心配そうにたずねた。
「確かに、少し疲れました」
カナルは脱力し、ボルカンにぐったりともたれた。
「バイラルの茶を飲んで少し休憩したら、後宮へ連れて行ってやる」
「ありがとうございます、でも… あの… ボルカン様と少しお話がしたいです」
「何だ? 何か気になることでもあるのか?」
「王女殿下のことが気になって… ディアレア様をどうされる、つもりですか?」
ボルカンの眉間にしわが寄り、厳しい表情になる。
3
今回の名前はスペイン語にお世話になりました。カナル→運河、国王ボルカン→火山、姉エリダ→傷、元夫フィエブレ→熱、兄エレヒル→選ぶ、ルイナス公爵→遺跡、宰相パラグアス→傘、正妃ディアレア→下痢、補佐官ベンタナ→窓、叔父インセンディオ→火事、 ○ ○ やっぱり外国語の響きは面白いですね( ´∀` )
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