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85話 尋問

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 今まで使っていた執務室は、ボルカンが火の精霊の力で燃やしてしまったため…
 急遽きゅうきょ用意された仮の執務室で、ベンタナとカナル、公式文書を残すための書記官を2人同席させて調書をとらせながら、ボルカンは大臣の尋問を行った。

 最初にベンタナがパラグアスが話した内容が、正しいかどうかをたずねると、大臣は素直に認めたため…
 その後の尋問は、カナルが引き継いだ。

「大臣殿、あなたのオメガの御子息がルイナス公爵に誘惑され、公爵にその身を捧げ身籠ってしまわれた… あなたはその御子息を醜聞から守りたくてパラグアスの脅しに屈して、私の姉エリダを婚約者がいる身と知りながら側妃候補に選び、最も重要な有力候補だとボルカン陛下に進言した」

 椅子に座りがっくりと項垂うなだれる大臣の肩に手を置き、カナルはパラグアスから盗み見た記憶を、"パラグアス自身に聞いた" と偽り大臣に語って確認を取った。


「はい、その通りでございますカナル様… 私は宝石商から報酬の金品を受け取ることを強要され、その後はパラグアスの共犯者として、あの男に協力していました」

 パラグアスは宝石商を通すことで金品が動いた痕跡(証拠)を残し、嫌々でも大臣に、その金品を受け取らせることで、表面的には金品の代償として大臣が協力していると見せかけた。

 そうすることで、大臣の気が変わっても脅されて仕方なく協力していたと、言い逃れを出来ない状況へと追い込み、パラグアスは自分を裏切らないよう、大臣を絡め取り計画に協力させていたのだ。


「私は一人息子を溺愛するあまり、間違いを犯しました!! 私はどのような罰でも受け入れるつもりです!! ですが、デビューしたと言っても、息子は当時… 16歳でした!!」
 大臣は顔を上げて必死に嘆願した。

「ご子息は、まだ子供と言っても良い年齢ですね… 私も同じオメガですから、ご子息のお気持を考えると胸が痛みます」
<ああ… 本当にお気の毒としか言いようがない…! 年を取ってから出来たお子様だから、余計可愛がっておられたのですね? その子の輝かしい未来をこんなかたちで散らされるなんて!!>

 同情を示しながらカナルは大臣の肩に触れ、過去のパラグアスや1人息子との記憶を盗み見て、全てが真実だと確認し… 新しい執務机に着くボルカンと視線を合わせてうなずき、合図を送る。

「申し訳ありませんカナル様!! 我が子のことばかり考えて、お恥ずかしい!! 本当に申し訳ありません!!」

 大臣の心に、カナルの同情と優しさが響いたのか、罪悪感から涙をこぼしては掌で顔をゴシゴシと拭っていた。


「ルイナス公爵はそなたの息子に、どの様に関わったのだ?」
 ボルカンが涙ぐむ大臣にたずねると…
 
「ルイナス公爵は奥方と別れて、息子を娶りたいと… そう言って息子を騙したのです!! 息子も始めから公爵を信じていたわけではありません!! ですから誘惑を受け入れた息子が全て悪いとは思えないのです!! どうか公爵にも罰を!! どうかパラグアスと共に、我が息子をおとしいれたルイナス公爵デトラスにも厳罰を!!」

「・・・っ」 
<ルイナス公爵! あの人ならば、その手の卑劣な行いぐらい平気でやるだろう!!>
 カナルのお披露目をした宮中晩餐会の時に盗み見た、ルイナス公爵の記憶は実の妹である正妃ディアレアに対しても、オメガだからと蔑んでいたのを思い出したのだ。

<大臣殿の御子息に対しても、相手はオメガだからと、私欲のために利用することに何のためらいも無く、16歳の少年をもてあそんだに違いない!!>


 大臣の記憶を盗み見ながら、カナルの胸にもカッ… と激しい怒りの火が着いた。

<本当にルイナス公爵という人は、なんてゲス野郎なんだ!!>




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