側妃候補は精霊つきオメガ

金剛@キット

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84話 カナルのお願い

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 霊廟から救い出された後、動揺が激し過ぎてカナルは体調を壊し、ボルカンを死ぬほど心配させながら、3日間寝込んだ。

 そんな不運を体験したカナル自身が、パラグアスの陰謀について一番知っているという自覚があったからこそ、その後の対処についてしっかりと間違いの無いよう、話し合わなければならないとボルカンに問い質した。

 するとボルカンは、渋々… 嫌々… 何度も… 聞くのが面倒になるほど…
 何度も…

「その可愛い耳がけがれそうだから、お前にはこれ以上、奴の毒々しい話は聞かせたくないのだが…」

「もう!! 過保護過ぎますよ、ボルカン様は! 僕は大丈夫ですから、はっきりさせたいのです!!」

「カナル、お前は死にかけたのだぞ? だからもっと休養が必要だと、侍医も言っていたのだ、腹の子の為にも本当に休養が必要だから、嫌な話は聞かない方が良いと私も思うし、きっと侍医もそうすすめると思うぞ?」

 ・・と長い長い前置きをしてから、ようやくボルカンは語った。


 宰相パラグアスの陰謀は未然に防がれ、首謀者3人に計画の全貌を自白させた後、国王ボルカンが自ら主犯格である3人に死刑を言い渡した。

 尋問前は誰もが、パラグアスが練り上げた計画の全貌を、把握するのは困難だと考えていた。
 
 だが、最初に尋問した騎士が聞き上手でおだて上手だったせいか、反省することを知らないパラグアスは、自分の能力を自慢しようと、どれだけ綿密で素晴らしい計画だったかをペラペラと告白したため、思いのほか簡単に明らかにすることが出来たのだ。

 その際パラグアスは、国王ボルカンを無能者と呼び、自分の功績を盗んだ泥棒だと誹謗中傷ひぼうちゅうしょうしたが…
 その部分のみ、書記官たちに書き記した調書から綺麗に削除させ、削除した部分について忘れるようにと言い含め、尋問した騎士たちは自分の胸の中に納めた。

 そこまでは良かった。

 問題はパラグアスの悪しき計画に取り込まれていた、王国の中枢でボルカンの重臣として権威を振るう者たちが含まれていたことだった。


「ううう~んん…」
 思わずカナルは腕組みをして、唸りながら考え込んでしまう。

<僕があのままパラグアスに殺されていたら、本当にあの妄想のような陰謀が成功し、ボルカン様は窮地きゅうちに立たされていたかもしれない!!>

 時間が巻き戻る前の、エリダが殺されたと知った時の記憶を掘り起こし、カナルは兄エレヒルの言動や行動を考えていた。

<領民のことを一番に考える、エンペサル侯爵の兄エレヒルが、簡単に踊らされるとは思えないけど… 兄上はかなり慎重にそのことを分析していた記憶がある… うう~ん・・ でも悪魔のような狡猾こうかつさと詐欺師のような口の上手さが、パラグアスにはあったからなぁ~・・?!>

「ほらな! 聞かない方が良かっただろう? 何も考えず休養に専念しろカナル!」

「いいえ、ボルカン様! 出来れば僕も、重臣たちの尋問に立ち会いたいのですが? 夜の精霊の力はこのような時に、一番頼りになる力だと思うのですよ?」

「ううううん~んんっ・・ 確かにそうだが」
 今度は渋い顔で、ボルカンが腕組みをして唸り声をあげ考え込む。

「ね? ボルカン様!」
 カナルはボルカンの心を蕩かすために、ニッコリと微笑み雄々しい頬を優しく撫でて、チュッ! チュッ! とキスをした。

「カナルぅ~っ! 私を誘惑するなぁ~!! 我慢できなくなるだろぉ~?!」

「ふふふっ…」


 可愛らしく頬にキスをされ、ボルカンは苦笑いを浮かべ、寵愛する妃の願いを叶えないわけには行かないと…
 大きなため息を、ハァ―――ッ… と吐いた。








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今回の名前はスペイン語にお世話になりました。カナル→運河、国王ボルカン→火山、姉エリダ→傷、元夫フィエブレ→熱、兄エレヒル→選ぶ、ルイナス公爵→遺跡、宰相パラグアス→傘、正妃ディアレア→下痢、補佐官ベンタナ→窓、叔父インセンディオ→火事、 ○ ○ やっぱり外国語の響きは面白いですね( ´∀` )
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