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71話 夜の後宮で5
しおりを挟むディアレアの護衛騎士、アブリルとコノセルは血を分けたパラグアスの兄弟たちである。
ボルカンの叔父インセンディオの護衛だった兄弟たちの父親は、忠誠を誓った主人の反逆に巻き込まれ…
主人インセンディオと共に、王宮の霊廟でボルカンに焼き殺された。
後に"炎の惨劇" と呼ばれることとなったその処刑劇が起きた当時、パラグアスの兄2人は、それぞれ別々の主人に仕えていたため、反逆罪を問われることは無かったが…
インセンディオの護衛騎士だった父の汚名は、兄2人にも影響を及ぼし暗い影を落とす。
『アブリル、お前は実に良く働く勤勉な騎士だが、お前を私の護衛として連れて歩けば、私までボルカン陛下から謀反人の疑いを受けかねないのだ』
『で、ですが伯爵様、私は伯爵様のお仕事で外国へ同行することが多く、父とはこの2年会ってもいません!!』
『いや、執事から聞いたが、父上とは手紙のやり取りをしていたのだろう?』
『それは… でも、私は反逆のことなど知りませんでしたし!』
『だが、すでにお前についての悪い噂が、立ち始めているのだ… これでは今年社交界にデビューした娘の結婚にも影響が出るだろう… アブリル、最期の報酬を倍にしておくから、悪いが辞めてくれ!』
反逆者の息子というレッテルを貼られ、パラグアスの長兄アブリル、次兄のコノセルは当時の主人に護衛職を解雇され、表舞台で活躍する機会を一切奪われた。
そこでパラグアスは…
『アブリル兄上、コノセル兄上、父上を殺しあなた達を苦境に立たせたボルカンに、復讐したくはありませんか?』
『勿論したいさパラグアス!』
『少し待てコノセル! パラグアス、お前は一体、何を企んでいるのだ?!』
『なぜ、迷うのですかアブリル兄上! このような立場に追い込んだボルカンに復讐できるなら、私は何だってします!!』
『しかしコノセル! 私たちまで反逆者になるのだぞ?!』
『アブリル兄上だって、父上が反逆者として扱われたことに、腹を立てていたではありませんか?! 父上の復讐がしたくはないのですか?!』
『私の計画を手伝ってくれるなら、兄上たちを、必ず今の立場からお救いすると約束しますよ』
『パラグアス、本当にそんなことが出来るのか?!』
『兄上たちも私と同じ方法で、名を変えれば良いのですよ』
少年時代に養子に出たパラグアスは、運よく実父との関係を悟られることなく難を逃れ、養父から伯爵位を継ぎ、当時の宰相ルイナス公爵の片腕として頭角を現していた。
既に金も権力も兼ね備えていたパラグアスは、多額の借金がある貧乏騎士を探し出して買収し、養子縁組を成立させ、兄2人に新たな名前を与えることで、"反逆者の息子" というレッテルから解放することに成功する
「ディアレア様ワインをご用意しました、少し召し上がられてはいかがでしょうか?」
騎士たちを後宮へ引き入れ、カナル誘拐を手伝った侍女が、自分の主人が密かに怯えて震えていると気づき…
ワインを満たしたゴブレットを、ディアレアに差し出す。
ディアレアが少女時代から仕えている年配の侍女は、自分の主人がとても気が小さい質だと知っていた。
「ええ、そうね… ありがとう」
侍女から震える手でワインを受け取り、ディアレアは緊張でカラカラに乾いた喉を少しづつ潤した。
正妃ディアレアは宰相パラグアスと、護衛騎士2人が実の兄弟なのは知っているが…
ディアレアが最初に愛した亡き婚約者、王太子テルミナルを殺害した、反逆者たちの息子たちだとは知らされてはいない。
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今回の名前はスペイン語にお世話になりました。カナル→運河、国王ボルカン→火山、姉エリダ→傷、元夫フィエブレ→熱、兄エレヒル→選ぶ、ルイナス公爵→遺跡、宰相パラグアス→傘、正妃ディアレア→下痢、補佐官ベンタナ→窓、叔父インセンディオ→火事、 ○ ○ やっぱり外国語の響きは面白いですね( ´∀` )
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