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59話 相思相愛3 ボルカンside
しおりを挟む後日…
ボルカンは自分のせいで舞踏会で発情し、恥ずかしい思いをした伯爵令嬢に謝罪の手紙を送ることにした。
『可哀そうなことをした… おかしな醜聞にならなければ良いのだが…』
深く反省し、後悔していたボルカンは、直接令嬢に会って謝罪したかったが…
<謝罪に行って、再び彼女を発情させてしまうことにでもなれば、謝罪する意味が無くなってしまうからな… 手紙で済ませるしかないか…>
だが、謝罪の手紙を送った伯爵令嬢から、返信が送られて来て…
その内容は、王族に対してとても礼儀正しいと言えるものでは無かったが、少々子供っぽいが愛嬌のある文面がボルカンの興味を引き、伯爵令嬢に好感を持った。
"王子殿下が初めて誘って下さったことを、心から光栄に思っています。 殿下と最後までワルツを踊れなかったことが、とても残念でなりません。 私が初めて招待された舞踏会で、殿下が初めて誘って下さったのが私だったと後から母に聞き、私の胸は感動でいっぱいになりました。 それなのに殿下と最後まで踊れなかったことがとても悔しいのです"
『ふふふっ… 面白い令嬢だな! 初めての社交デビューを台無しにされて、私に怒りを感じているのではないかと思っていたのに… ワルツを踊れなくて残念だったとは… 私も残念に思うよ、君ともっと話がしたかったのに…』
それがきっかけで、社交界のことを令嬢の目線で教えて欲しいと依頼し、ボルカンはしばらくの間、伯爵令嬢と文通を続けた。
気付けば社交シーズンが過ぎても、伯爵令嬢との文通は続いていた。
"ボルカン様、先日姉が嫁いだ北部へと行った時、すでに森の木々が紅葉し、地面に落ちた葉がまるで豪華な絨毯のように見えました。 夕暮れ時の赤い夕陽に照らされて息を吞むほど美しくて、なぜか私の瞳から涙がこぼれてしまいました。 不思議ですね… 美しい光景を見ると、悲しくないのに心が震えて泣きたくなるのです。 ボルカン様にもあの美しい光景をお見せしたかった"
『私も見てみたかった! 私が王族でなければ… ただの貴族だったら、君と共に美しい景色を見れたのに… 私も残念だよ』
始めの出会いこそ最悪だったが…
手紙のやり取りを続けるうちに、お互い心を通わせるようになり、ボルカンは伯爵令嬢に淡い恋心を抱いていた。
―――― 2人の兄が毒殺され、ボルカンとニエブラの王女との婚約は白紙に戻される。
次々と王太子と第二王子が亡くなり、国王は重い病に加えて心労が重なり…
2人の王子の後を追うように、国王はひっそりと崩御した。
自分の命を守るため、ボルカンはルイナス公爵との約束を守り、王太子の婚約者だったディアレアとの婚約と結婚を同時に進めた。
そしてボルカン自身も叔父インセンディオに襲われ殺されそうになり、霊廟で火の精霊の加護を受け、叔父と母を霊廟で焼き殺し…
辛うじて生き延びたボルカンは、国王に即位して一番最初に、臣下に命じたのが叔父の反逆行為に加担した貴族たちを、全員見つけ出して処刑することだった。
―――― "残虐王"
望んだことなど無い王座につき… 得られたのは、そんな不名誉な蔑称だけだった。
妃に王女が産まれ、ディアレアと王女を心の拠り所にしたくて、ボルカンは2人に歩み寄るが…
『残酷に人を殺した手で、私に触らないで!! 私があなたと結婚したのは娘のためです! 愛するテルミナル様のお子を守るためで、あなたの妻になるつもりはありません!!』
幼い王女を胸に抱きガタガタと震えながら、怯えた顔でディアレアはボルカンを拒んだ。
『申し訳ありません陛下…』
『公爵は約束通り、今も私の力になってくれている… だから拒まれたとしても、私はディアレアを大切に扱うと保証する』
『陛下の温情… けして忘れません! どうか陛下、側妃をお娶り下さい』
息子や娘と違い…
義理難い前ルイナス公爵は、娘ディアレアの不敬をボルカンに謝罪し、側妃の選定を進めた。
『"彼女"がまだ未婚ならば… 一人、側妃候補に入れて欲しい令嬢がいる』
ボルカンは文通で親交を深めた伯爵令嬢の名を公爵に伝えた。
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