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54話 懐妊報告3 ボルカンside

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 仕事中の事務官たちが絶え間なく行きかう廊下で、淫らな声を上げながら達してしまったカナルは…
 尊敬する国王ボルカンにされたこととはいえ、あまりにも恥ずかしくて涙ぐみ嗚咽をもらした。

「…陛下ぁ… ううっ…! こんな場所で… 陛下ひどいよぉ… うううっ… くうっ…!」
 ガッシリとボルカンに抱きしめられたまま、真赤に染まった顔を掌で隠して泣いてしまうカナル。

「うぐぐっ…!」
<しまった…!! やり過ぎた――っ!!>

 待ちに待った懐妊の報告を伝言で済ませられ、溺愛するカナルに、素っ気なくあしらわれたような気がしたボルカンは微妙に傷つき…
 カアァ――ッ… と頭に血がのぼり、大人げなくついついやり過ぎてしまったのだ。

<ほんの少し意地悪をして止めるつもりだったが… 恥ずかしがるカナルが、あまりにも可愛い過ぎて… 途中で止められなくなってしまった!! う゛う゛、これはまずい! 非常にまずいぞぉ――っ?!!>

 そして…
 結局はカナルに泣かれてしまい、ボルカンの方が慌てふためくこととなった。

 何でも、ほどほどにするのが肝心である。


 国王の執務室の並びに、大臣たちが集まり議論するための、審議の間もあり…

「何やら騒がしいな! 何事だ? 我々は大切な…話し合いを… 陛下…?! それにカナル様まで…?! んんん?!」

 ボルカンがカナルを捕まえて起こした、少々慎みに欠けた騒ぎを聞きつけ、何事だ? と審議の間からわらわらと大臣たちが顔を出した。

 カナルの細い肩をつかむとくるりと回し、大臣たちに泣き顔を見られないよう迎え合わせにして、ボルカンは自分の胸に抱き込んだ。

「ううっ… っ…」

「腹が立ってやり過ぎた… 許してくれカナル! 悪かった!」
 真っ赤になったカナルの耳に唇を寄せて、ボルカンは心から謝ると…
 顔を伏せたまま、カナルはこくりっ… とうなずく。

「悪かった!」
 赤い耳にキスを落として、もう一度謝ると… もう一度、カナルもうなずいた。


「これはこれは…! ボルカン陛下、側妃様とお揃いで! 本当に仲睦まじいお姿を見ることが出来て、臣下一同嬉しく思いますよ! 王位継承の問題もすぐに解決しそうですね!」

 宰相のパラグアスはニヤニヤと笑い、ボルカンを揶揄からかった。

 元々パラグアスはボルカンの長兄、王太子の優秀な学友であり、側近であった人物で…
 腹違いでも兄弟仲の良かったボルカンとも、4歳ほど年齢差はあるが、その頃から友人関係にあった。
 その気安さから、パラグアスは年下の友人である国王を、よく揶揄うのだ。

「ああ、そっちの心配は要らない! すでにカナルは懐妊しているからな!」
 パラグアスに揶揄われて、表面上はむすっ… としながらもボルカンは、内心自慢げに語った。 

「・・・っ!!」
 驚いた宰相パラグアスはパカリと口を開け、言葉を失うが…
 宰相と国王の会話を、脇で聞いていた大臣たちが、瞳を輝かせた。

「おめでとうございます、陛下!! おお、なんと嬉しいことだ!!」

「陛下、カナル様! おめでとうございます!!」

「おめでとうございます!! おめでとうございます!!」

「これは喜ばしい!! 我が国にとって本当に喜ばしい!!」

「お前たちともっと話をしたいところだが… 私は身重の妃をこのような場所にいつまでも立たせておくわけには行かないから、後宮へ送らなければ!」


 腕の中で、まだぐずぐずとしているカナルを抱き上げ、ボルカンは意気揚々と後宮へと向かう。




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