側妃候補は精霊つきオメガ

金剛@キット

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48話 晩餐会の前に

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 新たに側妃となった、カナルのお披露目のために開かれた、宮中晩餐会が行われる広間前の廊下から…
 すでに席に着き、ずらりと並んだ招待客たちの様子を盗み見て、カナルは顔を強張らせた。


「わわわっ… 遅れてしまいましたね!  皆さまを待たせてしまっている!! どうしよう! どうしよう!! 陛下ぁ?!」

<これって… 初登場から悪目立ちしてしまうような、僕は大失態を犯してしまったのではないのぉ~?! 側妃失格のレッテルとか貼られたりする、大惨事になりそうな気配がするし?! ああ、嫌だよっ! どうしよう――っ!!!>

 後宮の自室で話をするうちに、2人はすっかり晩餐会に遅れてしまっていた。


「少し落ち着け、カナル!」

「でも、陛下ぁ…?!」

「カナル、主役とは一番最後にゆっくり現れるのが、夜会の常識なのだよ… だから遅れた方が丁度良いぐらいだ!」

「だ… だって正妃様まで、席に着いておられるしぃ! これは本当にどうしよう?!」
<僕だけではなく、エスコートをするボルカン様まで、だらしないと思われてしまうかも?! そんなの嫌だよぉ――っ!!>


「良いから落ち着け! ディアレアは自分の立場を良く理解しているだけだ」

「でもぉ~…? えええええ~っ?! 」

「ふふふっ… 仕方ないなぁ… カナルは」
 人前だというのにボルカンは、カナルの小さな唇に、チュクゥッ… と音を立ててキスを落とす。

 補佐官のベンタナや案内役の使用人、大扉を開く使用人、それに広間の警備をする騎士たち、国王専属の護衛騎士たちは…
 蕩けるような笑みを浮かべて、カナルにキスをする国王ボルカンの珍しい姿にギョッ… と目を剥く。


「ボっ… ボルカン様ぁ――っ?!!」
<なななっ… なにごと?! ええええ――っ?!>

 人前でキスをされ、小さな叫び声を上げて、真赤になったカナルが口をぱくぱくさせていると…
 ボルカンは真っ赤になった額にも、キスをチュウッ… と落とした。

「カナル、そろそろ落ち着かないと、次のキスは舌を入れるぞぉ~?」
 艶っぽく笑うボルカンに甘い脅しをかけられ、カナルは慌てて唇を隠す。 

「そ… そんにゃっ…!」

「…にゃ?」

「そんなこと… されたら… 僕は発情してしまいぃますぅ…」

「アハハハハハハ―――――ッ!!!」
 ボルカンは楽し気にカラカラと笑い、カナルの腰をグイッ… と引き寄せ頬にチュウゥゥッ… とキスをして、ギュウギュウと抱き締めて放さない。

「んんんん――っ~… 陛下ぁ~! 陛下ぁ~! んん――っ~… ボルカン様ぁ~!」
<わわっ…! こんなに大勢の人前で、はしたないことしたら、ボルカン様の品位が落ちてしまうぅぅ―――っ!! 僕を可愛がってくれるのは嬉しいけど…っ! で… でも、これはダメだよぉ~?!>

 ボルカンの胸にギュウギュウと抱きしめられ、人前でイチャイチャしている自覚のあるカナルは、恥かしさからうめき声を上げ…
 広い背中に回した手でボルカンをばんっ… ばんっ… と叩き、放して欲しいと一生懸命、抗議した。


「カナルは本当に、可愛いなぁ!! アハハハハハハ―――――ッ!!!」

 ばたばたと慌て、恥かしがるカナルの反応が気に入り、ボルカンは増々大喜びで、長く逞しい腕でガッチリと捕まえて離さないようにする。



 浮かれて大声で笑う国王ボルカンの姿など、初めて見たと…
 補佐官のベンタナも… ボルカンが国王に即位して以来ずっと付いている護衛騎士たちも… 宮中で長く務める使用人たちも… 驚きを隠せずに目を丸くしていた。





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今回の名前はスペイン語にお世話になりました。カナル→運河、国王ボルカン→火山、姉エリダ→傷、元夫フィエブレ→熱、兄エレヒル→選ぶ、ルイナス公爵→遺跡、宰相パラグアス→傘、正妃ディアレア→下痢、補佐官ベンタナ→窓、叔父インセンディオ→火事、 ○ ○ やっぱり外国語の響きは面白いですね( ´∀` )
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