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47話 契約結婚2
しおりを挟むボルカンはカナルのために、予想できる面倒ごとは前もって解決する努力を…
カナルを側妃にすると、重臣たちに宣言した日から、すでに始めていた。
つまり、正妃に対しても先にボルカンは、カナルを無駄に傷つけないように、手を打っていたのである。
「私の寵愛を受けるお前を傷つけ、私たちの間に水を差すような愚かなまねをすれば…
正妃の役目を疎かにしたと、職務怠慢を理由に重臣たちを説得し正妃の座から引きずり降ろすと警告した」
「ええっ?! 正妃の役目を疎かに? そ… それはつまりボルカン様の… そ… その… お子様作りのために、夜のお相手をしなかったから、正妃から降ろすという意味ですか?」
<そんな警告をしたら… 正妃様が気持ちを変えて、これからはボルカン様の、夜のお相手をすると言い出したらどうしよう?! そんなの嫌だよぉ~?!>
「いや、そっちのことではない! あいつは普段から正妃が受け持つはずの公務を何一つやらずに、全て私一人に押し付けているからだ」
へたに正妃に公務をやらせると、失敗が多くなり、その尻ぬぐいで結局ボルカンの仕事が増えることになり…
そんな理由からボルカンは、あまりディアレアに公務の強制はしないようにしている。
最初からボルカンが正妃の執務までこなした方が、効率が良いのだ。
そのくせやたらと王宮で夜会を開きたがり、ボルカンに必要経費を要求し、贅沢をしているのだから…
器が歪んだ正妃とボルカンが軽蔑するのはこの辺りの事情からだ。
(正妃は典型的なパーティー・ピープルである)
「ああっ… なるほど…」
ホッ… とカナルは胸を撫で下ろし…
<エンペサル侯爵領ではずっと領地運営の手伝いをしていたから… 正妃様の分のお仕事を、僕がこっそり手伝うというのはどうかなぁ?>
ついでにカナルは心の中でメモを取る。
「亡くなったルイナス前公爵には、私が一番苦しい時、支援してもらった恩がある… だから私としては、ディアレアを正妃から降ろしたくないのだ」
「はい、王女殿下のためにも、その方が良いと思います」
ニコリと笑ってカナルはボルカンの意志に同意した。
そんなカナルを見つめ、しばらくボルカンは黙り込んだ後… 口を開いた。
「なぁ、カナル… お前は、正妃になりたくないのか?」
なぜかボルカンは、ほんの少し不機嫌そうな顔をして、カナルのお腹を撫でながらたずねた。
「ええ? なりたくありませんけど?」
首を傾げてカナルは答えた。
「なぜだ?」
「なぜと言われても… 僕は目立つのが嫌なのです、出来れば静かに地味に暮らしたいので…」
<そもそも、この僕がボルカン様に気に入られて、側妃になるなんて想像もしていなかったもの… でも、今はボルカン様の側にいるためには側妃の立場が必要だと知っているから、頑張るつもりだけどね>
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