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41話 有能な従者バイラル

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 後宮入りして早々に、国王陛下に可愛がられ寝室のベッドの寝心地の良さを堪能することとなったカナルだが…
 有能な従者バイラルは、ふかふかのベッドで熟睡するのんきな主を見つけ、大慌てで起こした。
(カナルが寝落ちした後、ボルカンは執務室に戻った)



「カナル様! カナル様!! 起きて下さい!!」

「うんんん~っ… だから、揺らさないでよぉ~… バイラルぅ~… もう少しだけ眠らせてぇ~… もう… ボルカン様がぁ… とおぉぉぉ~てもぉ…すごく…… てぇ~… お尻………がぁ~……ね…………… … … ……」

 バイラルが身体を揺するのを止めた途端、深い眠りに落ちそうになったカナルに…

「正妃様にご挨拶に行く予定を忘れたのですか―――っ?! 晩餐会の前に必ず行かなければ、いけないと… カナル様がおっしゃっていたでしょう―――っ?!! よろしいのですか?!―――っ!! ねぇ! カナル様――――――っ?!!!」

 なかなか起きようとしないカナルの耳元で、バイラルは大声で叫んだ。

「う゛う゛わあぁぁぁ――――――っ!!!!! 忘れてたぁ!!!!!」

 がばっ!! とカナルは、上掛けを跳ねのけて飛び起きた。

「カナル様に大切な予定を、無事に思い出して頂けて、嬉しいです」

 淡々と澄ました顔で、バイラルはちくちくと嫌味を言いながら…
 カナルの項に歯形が増えていても、見て見ぬふりをして、有能な従者は裸の背中に国王陛下からの贈り物の一つ、丈の長い深みのあるワインレッドのローブを羽織らせた。
(ボルカンが言うには、この色のローブをカナルに着せると、抱かれた後の乳首がより可愛く見えるのだそうだ)

「どうしよう! どうしよう! どうしよう! 寝ちゃったぁ!!」
 漆黒の髪をわしわしとかき混ぜながら、ローブ一枚でベッドの周りを言ったり来たり、うろうろとするカナルにバイラルは…

「カナル様、湯あみの時間はございませんから、こちらで身体を拭き清めてはいかがでしょうか?」
 お湯を満たした洗面器と布が、すでにベッド脇のテーブルに用意してあった。

「わわわっ!! 助かるよぉ~ありがとう~!! バイラルぅ~…!!」
 さっ… と布を取って、ジャバジャバとお湯で濡らし、カナルはその場でゴシゴシと身体を拭き始める。

 一瞬…
 やれやれ、これでは先が思いやられるなぁ~?! 大丈夫なのか、うちのお主人様は?! …という顔をするが、若くとも有能な従者バイラルはけして余計な言葉は口に出さなかった。



 そしてバイラルは時間を無駄にはせず、カナルが眠っている間に国王陛下から届けられた、晩餐会用の礼装をサッサッサッサッ… と手早くクローゼットから取り出して、ベッドの上に並べた。










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