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37話 蜜月の後は濃密に4 ボルカンside
しおりを挟む頬に被さった漆黒の髪を、カナルが指で払い退けた時に、髪の一部分が不自然に短くなっていると気づき、ボルカンは顔をしかめた。
<う゛う゛っ…! カナルの髪の短くなった、あの部分は… やはり私が焦がしたせいなのか? そうなのか?! うう~むぅ… そうに決まっているよなぁ…?!>
昨夜の失態を思い出し反省しつつ、ボルカンはカナルの話を再び思い出し、考え込んでしまう。
いくら可愛いカナルの話でも…
"夜の精霊の力で時間が巻き戻った" …などと突飛な内容では、さすがにボルカンもすぐには信じられなかった。
<だが、私自身が精霊を呼び出すために、自分の心臓を貫いた不快な感覚が、今もこの手に残っている…>
裾の長い上着を脱ぎ捨て、シャツの上から胸に触れ、ボルカンは今も変わらず動き続ける、自分の心臓の拍動を掌で確かめた。
<精霊の加護を受けた後、剣で貫いた胸の傷が綺麗に消えていた… あれはいまだに自分でも信じられない出来事だった! だが確かに私自身は、あれを体験した!>
普通ではあり得ない話だが、王家の霊廟で自分に起きた出来事と、照らし合わせてみれば…
カナルから聞いた出来事は、けしてあり得ない話ではないと、ボルカンは納得し、今ではカナルの話を全面的に信じている。
何よりもボルカン同様、カナルも夜の精霊の不思議な力を使えることが、真実だと裏付ける証拠なのだ。
その事実を無視して、信じないと言うのなら、それは単に間抜だからである。
<それにしても、痛ましい話だ…>
『身籠った我が子を失い、僕は絶望して湖で自殺しようとしたのです』
自分の腹を撫でながら語る… 悲しみに支配されたカナルの瞳から、止め処なく涙が流れた。
<私は面白い癖だと思いながら、腹を撫でるカナルを何度か見ていたおぼえがある… だがあれは… 失った子を悼んで無意識のうちにしていた仕草なのだろう… 情けないことに、私はそんなカナルに慰めの言葉さえ思いつかず、動揺して見ていることしか出来なかった>
自分の無骨さに苦い思いが込み上げて、ボルカンは唇を歪める。
ブラウスを脱いだカナルの優美な背中を…
自己嫌悪におちいったボルカンは、どう慰めれば良かったのだ? と思い悩みながら、気持ちとは裏腹の怖い表情で、睨みつけるように眺めた。
革の靴と靴下を脱ぎ、下衣を足首から引き抜いて、カナルは靴の上にぱさりっ… と落とす。
隠すことなくカナルは振り向き、ボルカンの前に真っ直ぐ立った。
「ボルカン様、抱いて下さい…!」
キスで赤く腫れた唇も…
さらなる愛撫を期待して、ピンッ… と尖った乳首も…
ボルカンが放つアルファのフェロモンに反応し、張り詰めてしまった華奢な性器も…
蜜壺からあふれた淫密で濡れた内腿…
心の奥底に沈めていた悲しみ… 苦悩… 秘密…
「ボルカン様…」
カナルは、何一つ隠さず、ボルカンに全てを見せ…
両手をボルカンに伸ばし、抱きしめて欲しいと訴えかけて来た。
「本当に綺麗だな、カナルは…」
ソファから立ち上がり… 怖い顔で睨みつけていたボルカンの頬がゆるみ、満面の笑みがあふれる。
<ダメだ、ダメだ、今は思い出すな!! 昨夜の記憶を上手く隠さないと、またカナルが悲しみに支配されて泣いてしまう! それに私の腕の中で… フィリレレ…レレ…? だったか? そんな面倒な名前の奴のことなど、絶対に思い出させてなるものか!! フンッ!!>
昨夜の記憶をカナルに見られないよう、心の奥底に隠し…
ボルカンは目の前に立つ最愛の番を、腕の中に閉じ込めるように、しっかりと抱き締めた。
9
今回の名前はスペイン語にお世話になりました。カナル→運河、国王ボルカン→火山、姉エリダ→傷、元夫フィエブレ→熱、兄エレヒル→選ぶ、ルイナス公爵→遺跡、宰相パラグアス→傘、正妃ディアレア→下痢、補佐官ベンタナ→窓、叔父インセンディオ→火事、 ○ ○ やっぱり外国語の響きは面白いですね( ´∀` )
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