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30話 朝の光の中で4

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「私の父、先王が崩御し、母上は恋人の叔父と共謀して王太子だった長兄と次兄を殺した… 私は身の危険を感じ、先王の側近で親友だったルイナス公爵に助けを求め話し合った結果、王座に就くと決めたのだ」

「ああ… 何てことだ…!」
 ボルカンの記憶、火の精霊に加護を受けた時の状況を思い出し、カナルはその過酷さに胸が痛んだ。

「陛下のお母様も…?!」
<その話は知らない…>

「政敵であり数々の罪を犯した叔父はともかく… 共犯であっても実の母親まで私の手で処刑したのは、あまりにも外聞が悪すぎると、その場にいたのは叔父とその支援者ということにして闇に葬り、後はルイナス公爵がそれぞれの邸から罪の証拠を集めることに成功し、早々にこの件に幕を引くことが出来た」

 火の精霊の加護を受けた直後、ボルカンの自分で貫いた胸の傷も、暗殺者たちに負わされた腕の傷も、綺麗に消えていたが…
 ボルカンは暗殺者たちと共に現れた、叔父と母親に追い詰められることとなった。

 自分の身を守ろうとして、わけも分からず上手く制御できない精霊の力を暴走させ、ボルカンは霊廟れいびょうにいた者たち全員を焼死させた。

 それ以来ボルカンは、王都の貴族たちに… 陰で"残虐ざんぎゃく王"と称されるようになる。



「もしもお前が私を裏切った時は、叔父と同じ運命をたどることになると覚えておけ、カナル… 私にそんなまねは絶対にさせるなよ?!」
 言葉は厳しいが、ボルカンの目はうれいを帯びて悲し気だった。

「肝に銘じます、陛下…!」
<もしも… 僕が陛下の命令を無視して、誰かに陛下の記憶の内容をもらしたりすれば、精霊の力を使い容赦なく僕を燃やし尽くすと… 今のはそういう脅しだった>

 ボルカンは、それほど自分の記憶には国全体を揺るがすような、危うい内容が含まれていると、カナルに警告したのだ。


「私に可愛がられて、子供を産み育てる… ただの側妃ならばお前も気楽だっただろう… だが、お前は精霊の加護を受けた者だ、私と共にこの国のために、その力を使え!」

「はい… 陛下」

「怖がらせて悪かった、カナル」

「いいえ、陛下の心配も理解できますから…」
 長い腕でボルカンにグイッ… と腕を引かれ、怖い記憶が見えるのではないかと、カナルはびくっ… と震えた。

 だが、暖かいボルカンの胸に包まれても、カナルに記憶が流れ込むことは無く…
 カナルは、ホッ… とため息を吐き、おずおずと広い背中に腕を回してギュッ… と大きな身体を抱き締めた。

「・・・・・・」
<僕は陛下に全てを捧げてお仕えするつもりだから、陛下が望まれるだけこの力を使おう> 



 濃紺の瞳を閉じて、カナルはたくましい胸に耳を当て、ボルカンの力強い心臓の拍動を聞いた。










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