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3話 双子の姉エリダ
しおりを挟む「信じられない…っ!?」
<なぜ、エリダが?! そんな… エリダがいるなんて!!>
側妃候補として王都へと旅立ち、死んでしまった双子の姉のエリダが、カナルの目の前に立っていた。
ジッ… と見つめるカナルの視線を遮ろうと、フィエブレは自分の大きな身体でエリダを隠す。
そんなフィエブレをまじまじと見つめていると、カナルはあることに気づいた。
「あれっ?! ひも飾りが無い…」
<フィエブレの騎士服が、騎士団長のものではない? あれぇ~ 何で?!>
「答えろ! お前は誰だ?!」
兄エレヒルに再び怒鳴られ…
「誰って… 僕はカナルに決まっているでしょう? 僕が他の誰だって言うのさ?!」
「…お前が、カナルだって?」
「本当に何なんだよ、兄上まで! ひどいよ、こんな…」
眉間にしわを寄せる兄エレヒルの肩すれすれまで伸びた月光色の髪を見て、また一つ、カナルは気付いた。
<心身共に流産の激痛に襲われ、苦しんでいた僕を心配して、騎士団の仕事で出掛けていたフィエブレに代わり、付き添ってくれた兄上の髪は確か… もっと短く、切り揃えていたような…?>
ハッ… と息を吞み、カナルは自分の唇に指先で触れると…
<これって… もしかして時間が巻き戻っているの…? 僕の願いを"夜の精霊"が聞き入れ、奇跡が起きたのか?!>
「間違いない… 僕の願いが届いた!!」
<また姉さんに会えるなんて!こんな奇跡が起きるなんて!!>
「姉さん… エリダ姉さん…っ!?」
ベッドから飛び降り、カナルは薄い寝衣姿のまま、廊下から不安そうに室内をのぞく、姉のエリダの元へ駆け寄ろうとするが…
「動くな―――っ!! 命が惜しければ、大人しくしろ!!」
大声で怒鳴り威嚇するフィエブレは、鞘から剣を抜くと切っ先をカナルの鼻先に突き出した。
「フィエブレ! 何を言っているんだ?! 僕はあなたの… 妻…っ…」
<あっ、違った…!! そうだよ、少し落ち着かないと! だって今のフィエブレは僕の夫ではないから… ああ、何て複雑な状況なんだ?! 良く考えて慎重に行動しないと!!>
自分を落ち付かせるために、カナルは胸に手を当てて深呼吸をした。
<元々フィエブレは姉エリダの婚約者だから… エリダを誰よりも優先するのは当たり前だし、それに2人は子供の頃から愛し合っていて…>
――――時間が巻き戻る前…
王宮の使者がこの地へ来訪し、姉エリダが側妃候補に選ばれたと伝えられて以来、愛し合う2人の運命はガラリと変わってしまう。
そこから全ての悲劇が始まった。
エリダとフィエブレは婚約していたけれど、国の決定には逆らえず従うしかなかった。
<姉のエリダはフィエブレとの婚約を解消し、泣く泣く国王の後宮へ入った… それで確か、 国王がエリダを求めなければ、2年で側妃候補を解かれ実家に返されるはずだと聞いて…
迷うコトなくフィエブレは婚約解消をした後も、エリダが側妃に選ばれずに侯爵家に帰って来ることを願い、その時まで待っと誓っていた>
だが、エリダは王都へ旅立って数か月後には、後宮内で亡くなり…
フィエブレは失意の中、仕方なくカナルと政略結婚をしたのだ。
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