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2話 金切り声で目覚めてみると
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「キャアアアアアァァ――――――ッ!!!!!!」
若い女性は、再び大音量で金切り声を上げ、ドタッ… バタッ… と大慌てで部屋を飛び出して行き、廊下で狂ったように叫んだ。
「誰かぁぁぁ―――っ!! 誰か、来てぇぇぇぇ―――っ!! カナル様のお部屋に不審者がぁぁぁぁ―――――――っ!!」
「ええええええぇ――――――っ?!!!」
寝ぼけた頭で、カナルは慌てて自分の周りをキョロキョロと見回し、不審者を探したが…
<不審者?!! ボ、ボ、ボクの部屋に、不審者?! ど、ど、どこ?! どこ?! 不審者、どこ?!! どこだよ不審者っ?!!>
居間と寝室が一つになった自分の部屋には、どう見ても不審者など見当たらず… カナル1人がぽつんっ… とベッドの上に取り残されていた。
「んんんん―――…?」
うなり声を上げてカナルが考え込んでいると…
寝ぼけ頭が少しづつ覚醒し、自分の置かれている状況に違和感を感じ始める。
<あれれ? 僕は確か… "精霊の棲み処"へ行き、気が遠くなるほど冷たい湖に入り死のうとして… 確かに頭まで湖水に沈んだと… なぜ、ここにいるのかなぁ? あれれぇ…?>
真冬の湖で、入水自殺を決行したことは思い出したがその後のことがわからず… カナルは首をひねる。
自分の平らなお腹に触れると、子供を失った時の、生きたまま身を裂かれるような痛みの後に残った… 虚脱感もジクジクとした疼痛さえも、綺麗さっぱりと消えていた。
<唯一の希望だった、お腹の子が流れてしまい… 昨夜の僕は死に囚われ、窓からぽっかり浮かぶ満月を見て、侯爵家に代々伝わる精霊伝説を思い出した>
「僕は生きるのが嫌になって、精霊と契約を交わし死ぬはずだったのに… なぜ、まだ生きているのだろう? やっぱり精霊伝説は… ただのおとぎ話…で…」
自分が熟睡していたベッドや部屋も、確かに自分のものではあるが結婚した時、夫フィエブレの家に移ったため、すでにカナルが使うのを止めた、侯爵家のベッドと部屋であると気づき、ハッ… と息を吞む。
「あっ!」
1つ気付くと、次々と気付いてゆき…
<叫び声を上げて、部屋から出て行った若い女性の顔にも見覚えがある! 確か彼女は、春の祭りで呼び寄せた旅芸人と駆け落ちをして、いなくなった使用人のピエではなかったかな? 何で彼女がいるの?! ええええ―――っ?!!>
荒々しい足音と共に、カナルの夫フィエブレと兄のエレヒルが、ばた… ばた… と荒々しい足音を立て、カナルの部屋に断りも無く飛び込んで来た。
「我が弟の寝室に忍び込んだ、不審者はお前か―――っ?!!!」
侯爵家の現当主で、5歳年上の兄であるエレヒルは、アルファらしい180cm以上ある堂々とした体格を活かし、手に持った剣を鞘から抜くと、ベッドの上のカナルを攻撃的に威圧した。
「なっ… 兄上?! 僕が不審者?! えええっ?!」
たとえ実の兄でも、アルファに本気で威嚇されては、オメガのカナルは本能的に怯え、身体がびくりっ… と震えてしまう。
助けを求めカナルは夫のフィエブレを見るが…
「お前はどこの誰だ?! 名を名乗れ―――っ!!」
夫のフィエブレも、兄より一回り大柄な身体に容赦の無い殺気を漂わせて、カナルを脅すように怒鳴った。
「そんな…っ!」
<何がどうして、こんなことになっているの? 何でぇ~?!!>
朝から金切り声で飛び起き、背中に嫌な汗をかきながら、いきなり威嚇されて、カナルにはそうなった理由がまったく分からず…
目を見開き2人をまじまじと凝視する。
「カナルは? カナルは大丈夫なの?!」
廊下から、おずおずとカナルの双子の姉エリダが心配そうに顔を出し、部屋の中をのぞいていた。
「だめですエリダ様! 不審者の正体がはっきりするまでは危険です! 中に入ってはいけません!!」
「でも、カナルは? カナルは無事なの?!
さっ… とカナルの夫フィエブレは、姉のエリダを守るように、一歩前に出た。
若い女性は、再び大音量で金切り声を上げ、ドタッ… バタッ… と大慌てで部屋を飛び出して行き、廊下で狂ったように叫んだ。
「誰かぁぁぁ―――っ!! 誰か、来てぇぇぇぇ―――っ!! カナル様のお部屋に不審者がぁぁぁぁ―――――――っ!!」
「ええええええぇ――――――っ?!!!」
寝ぼけた頭で、カナルは慌てて自分の周りをキョロキョロと見回し、不審者を探したが…
<不審者?!! ボ、ボ、ボクの部屋に、不審者?! ど、ど、どこ?! どこ?! 不審者、どこ?!! どこだよ不審者っ?!!>
居間と寝室が一つになった自分の部屋には、どう見ても不審者など見当たらず… カナル1人がぽつんっ… とベッドの上に取り残されていた。
「んんんん―――…?」
うなり声を上げてカナルが考え込んでいると…
寝ぼけ頭が少しづつ覚醒し、自分の置かれている状況に違和感を感じ始める。
<あれれ? 僕は確か… "精霊の棲み処"へ行き、気が遠くなるほど冷たい湖に入り死のうとして… 確かに頭まで湖水に沈んだと… なぜ、ここにいるのかなぁ? あれれぇ…?>
真冬の湖で、入水自殺を決行したことは思い出したがその後のことがわからず… カナルは首をひねる。
自分の平らなお腹に触れると、子供を失った時の、生きたまま身を裂かれるような痛みの後に残った… 虚脱感もジクジクとした疼痛さえも、綺麗さっぱりと消えていた。
<唯一の希望だった、お腹の子が流れてしまい… 昨夜の僕は死に囚われ、窓からぽっかり浮かぶ満月を見て、侯爵家に代々伝わる精霊伝説を思い出した>
「僕は生きるのが嫌になって、精霊と契約を交わし死ぬはずだったのに… なぜ、まだ生きているのだろう? やっぱり精霊伝説は… ただのおとぎ話…で…」
自分が熟睡していたベッドや部屋も、確かに自分のものではあるが結婚した時、夫フィエブレの家に移ったため、すでにカナルが使うのを止めた、侯爵家のベッドと部屋であると気づき、ハッ… と息を吞む。
「あっ!」
1つ気付くと、次々と気付いてゆき…
<叫び声を上げて、部屋から出て行った若い女性の顔にも見覚えがある! 確か彼女は、春の祭りで呼び寄せた旅芸人と駆け落ちをして、いなくなった使用人のピエではなかったかな? 何で彼女がいるの?! ええええ―――っ?!!>
荒々しい足音と共に、カナルの夫フィエブレと兄のエレヒルが、ばた… ばた… と荒々しい足音を立て、カナルの部屋に断りも無く飛び込んで来た。
「我が弟の寝室に忍び込んだ、不審者はお前か―――っ?!!!」
侯爵家の現当主で、5歳年上の兄であるエレヒルは、アルファらしい180cm以上ある堂々とした体格を活かし、手に持った剣を鞘から抜くと、ベッドの上のカナルを攻撃的に威圧した。
「なっ… 兄上?! 僕が不審者?! えええっ?!」
たとえ実の兄でも、アルファに本気で威嚇されては、オメガのカナルは本能的に怯え、身体がびくりっ… と震えてしまう。
助けを求めカナルは夫のフィエブレを見るが…
「お前はどこの誰だ?! 名を名乗れ―――っ!!」
夫のフィエブレも、兄より一回り大柄な身体に容赦の無い殺気を漂わせて、カナルを脅すように怒鳴った。
「そんな…っ!」
<何がどうして、こんなことになっているの? 何でぇ~?!!>
朝から金切り声で飛び起き、背中に嫌な汗をかきながら、いきなり威嚇されて、カナルにはそうなった理由がまったく分からず…
目を見開き2人をまじまじと凝視する。
「カナルは? カナルは大丈夫なの?!」
廊下から、おずおずとカナルの双子の姉エリダが心配そうに顔を出し、部屋の中をのぞいていた。
「だめですエリダ様! 不審者の正体がはっきりするまでは危険です! 中に入ってはいけません!!」
「でも、カナルは? カナルは無事なの?!
さっ… とカナルの夫フィエブレは、姉のエリダを守るように、一歩前に出た。
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