アルファの初恋に、溺愛はツキモノ

金剛@キット

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23話 妻が好き過ぎて泣きたい センリside

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「メチャクチャ、ヒロキを愛している!! それは本当なんだ、信じてくれる?!」

 婚約者という障害が無くなったとたん、ヒロキが好きで好きで…
たまらなくなったのだ。


「分かっているよ」

 素っ気なく答えられた様子から、ヒロキの機嫌を損ねてしまったのだと分かり、センリは焦りに焦った。


「ゴメン! 本当にゴメン!!」

<ヤバい! ヤバい! ヤバい! どうしよう―――っ…!!>

 メチャクチャ愛しているのに、ナゼかいつもヒロキとは微妙に気持ちのズレが生じてしまい…

 本気で誰かを好きになると、こんなに苦しいモノなのだと…
 センリは今まで誰かを愛する気持ちを、分かったつもりになって、ベータ女子たちをもてあそんで捨てていた自分に腹が立った。
 
<…て、いうか… オレって最低…!>

 泣きわめく女の子たちを、面倒だって簡単に切り捨てた報いを…
 愛するヒロキによって、センリは受けているのだ。


「僕はね、出張先で初めてセンリに抱かれた時… センリをあんなに怒らせたのに… スゴク気遣って抱いてくれて、優しかったから、センリに愛される人は幸せだろうなと、いつも思っていたよ」

 チラリと見上げて、ヒロキがガッカリしたようなため息をつき、そっぽを向いた。


「ぐわっ…!! 愛してるよ!!ヒロキさん!!」

<ううっ… オレって、さっきからコレしか言ってないぞ?! カッコ悪っ!!>

ギュッ… とヒロキを、センリは背中から抱きしめた。


「アルファにもアルファの強い本能があって、執着心とか独占欲とか… 自分の番を守るのに全力で戦うとか… それに強い性欲とか… そういう部分を僕は甘く見ていたと思う」

 ヒロキはポソポソ愚痴っぽく、自分の気持ちを話し始めた。


「いや、違うぞヒロキ!! オレはアルファの本能ダケでヒロキに惚れたワケではないから… だってずっとオメガフェロモンを感じ取れずに、ヒロキがベータだと思ってた時から尊敬してたし! スゲェ綺麗だって、盗み見してドキドキしてたし!」


「そ、そんなコトしてたの?!」

 ヒロキが自分を抱き締めるセンリの太い腕を、キュッ… とつかんだ。


「いや、だって見るダケなら罪は無いし… 時々、ドキドキして同僚たちにヒロキを意識してるってバレるのが嫌で、ワザと大声で男にはたないと言ったりして」

「あ…!」

 出張先で喧嘩の原因の一つだった、センリの性差別的発言を、ヒロキも忘れるハズが無かった。


「だって、ベータの… それも男相手に惹かれてるなんて、アルファ的には受け入れられられない常識っていうか… モラルに欠けるというか…」

 ゲイに目覚めはじめた思春期のベータ男子が、同性に恋愛感情を抱き、自分は変態なのか? と思い悩む感覚と似ていた。

 理性では全否定しているのに、心がかれるのだ。


「地味に僕は傷ついていたから… 男性オメガにはたないと聞いて、僕はハズレで粗悪な欠陥品扱いされた気がしたんだ… 実際女性のオメガのように多産でもないし…」

 男性アルファの性器を受け入れる、男性オメガの性器の場所が場所だけに、あまりセックスにも適した身体ではないのだ。


「うわっ! 傷つけてゴメン!!」

 アルファらしい傲慢ごうまんさから、自分を守るための言動や行動で、センリは多くの人たちを傷つけて来たのだと、ようやく自覚した瞬間だった。




 センリは本気で後悔し泣きたくなった。













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