アルファの初恋に、溺愛はツキモノ

金剛@キット

文字の大きさ
上 下
16 / 27

15話 センリの思惑2

しおりを挟む
<正直、あの婚約者と会う度にウンザリしていた、オレが結婚に何の夢も持てないのは、何度会っても一緒について来る母親が邪魔で、あの婚約者と意志の疎通そつうが出来ないからだ… 婚約者が何を考えているのか理解できず、まったく興味が持てない>


 どう考えても、あの婚約者と結婚すれば離婚するだろう。

 失敗が見えていて、結婚しろと言われても嫌に決まっている。


<オレと上手くやれるのはヒロキしかいない… 婚約者がヒロキだったら? 迷わず結婚する! 24時間顔を見ていても足りないぐらいだ!! …って言うか、今すぐ結婚してヒロキを確実にモノにしたい!>


 下手に親を通すと、親の責任問題になるから…

 勝手にセンリが話を進めた方が、センリ自身の"不徳ふとくいたすところ"だと、相手もほこを出さずに収めるかも知れないと、神田家からの絶縁覚悟で婚約者の家に単独でセンリは乗り込んだ。

 相手は意外なほどスンナリと(ホッ… とした様子で)、二つ返事で婚約解消を了承した。
事業の方も今まで通りだと確約してもらった。

<当然だけど、ココまで順調に利益を出している共同事業を止めたら、お互い損するダケだし>


『何だよ、もっと早くヤレば良かった!』

 グダグダ今まで悩んでいたのがバカみたいだと、思わずセンリが後悔したぐらいだ。

 一応、筋は通そうとそのコトを実家に帰り父親に報告すると、拳骨で思いっきり殴られて絶縁された。


 就職先を兄たちと同じように、神田家が経営する企業ではなく、母方の親戚筋、相模家の系列にして良かった。





 その翌朝、会社でヒロキの顔を見たとたん…

 センリは感極まり、発情期の獣と化しトイレに"愛する恋人"を連れ込み…

『センリ… 早く… センリの入れて…っ!』
『欲しい? ヒロキ、オレが欲しい?』
『欲しい! んんっ… センリが欲しい!』
『全部欲しい?』

 後でずるい奴だとヒロキに責められても構わない、きっとヒロキなら謝れば許してくれると…
 アルファに極端に弱いオメガの弱点を突き、抑制剤無しでアルファのフェロモン全開にしてヒロキを抱いた。

『んんっ…! 全部! 全部入れて欲しい…っ!』
『ふふっ… ヒロキも全部、オレにくれる?』
『…あげるっ… あっ… んっ… 全部あげる!センリにあげる!』

 誰にも奪われないよう、自分のあとをシッカリと、ヒロキのうなじに残した。




 ココまでは、センリの思惑通りだった。


 ヒロキは失神し、慌てたセンリは次兄のオフィスがスグ近くにあるのを思い出し、末っ子の特権をまだ使えるかどうか分からないが、試しに連絡して事情を話すと…

 血相を変えて次兄はかけ付け、ソレどころかセンリの職場のトップ、超カリスマ・ビジネスマンの相模氏まで巻き込んでトイレに連れて来た。

 オメガの治療に定評のある病院を、相模氏に紹介され(手配までしてくれた)、そのうえ自身が運転する車でヒロキを運んでもらった。



 病院に着いてからセンリは…

『セックスも中出しも、家でヤルのが一番だと学んだよ』

 そう次兄にこぼすと、相模氏の目の前で思いっきり拳で3発殴られ、センリは鼻血を出した。

 次兄から話を聞き病院に駆け付けた、長兄には2発殴られ、その後到着した父にも一発もらう。

 ボコボコに殴られたセンリから事情を包み隠さず聞くと、会社のトップである相模氏は…

『まだ、若いからな… 気持ちは分かるよ』 と、なぜかセンリを気に入った様子で、肩をたたいて機嫌良く会社に戻って行った。



 そして三日間、ヒロキが昏睡状態に入り、愛する恋人を失うかも知れないという恐怖をヒシヒシと感じ、センリは自分の愚かさに死ぬほど後悔した。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

噛痕に思う

阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。 ✿オメガバースもの掌編二本作。 (『ride』は2021年3月28日に追加します)

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。

N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ ※オメガバース設定をお借りしています。 ※素人作品です。温かな目でご覧ください。

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》

市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。 男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。 (旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

花いちもんめ

月夜野レオン
BL
樹は小さい頃から涼が好きだった。でも涼は、花いちもんめでは真っ先に指名される人気者で、自分は最後まで指名されない不人気者。 ある事件から対人恐怖症になってしまい、遠くから涼をそっと見つめるだけの日々。 大学生になりバイトを始めたカフェで夏樹はアルファの男にしつこく付きまとわれる。 涼がアメリカに婚約者と渡ると聞き、絶望しているところに男が大学にまで押しかけてくる。 「孕めないオメガでいいですか?」に続く、オメガバース第二弾です。

処理中です...