7 / 27
6話 夜明け前 近江side
しおりを挟む
…夜明け前、近江はふと目覚めた。
自分の身体に巻き付いた神田の太い腕が、息苦しさを感じるほど重かったからだろう。
熟睡する神田の腕を静かにズラシ、近江はゆっくりと身体を起こし、ベッドから出て洗面所へと向かった。
歩く度に身体の奥の深い場所が鈍く痛み、小さなため息をつく。
ベタついた自分の陰部が気になり、もう一度浴室へ入り暖かいシャワーを浴びた。
神田を受け入れた自分の蜜壺を片手で開き、もう片方の指を中に差し入れ丁寧に、ヌルヌルとした自分の体液をお湯で洗い流す。
セックスに夢中になっていた近江とは違い、神田はシッカリ避妊具を付けたコトを思い出し…
「やっぱり遊び慣れている男は違うな…」
苦笑しながら近江は首を振った。
ヂクヂクと疼く場所に触れてしまい、そのまま自慰を始めたい衝動にかられたが…
一度始めれば、今夜は簡単に止められそうに無いと感じ、昂ってしまった身体を冷ますためにシャワーの湯を水へと変えた。
久しぶりに感じた神田という強いアルファの、濃厚なフェロモンが…
未熟なオメガだった学生時代のように、近江ヒロキから理性を奪い、原始的な欲望と本能をムキ出しにしてしまったのだ。
<項を神田に噛まれなかったのは、幸運だった… 神田のフェロモンシャワーを浴びたとたん、僕の理性は簡単に吹っ飛んで消えてしまい、神田が欲しくて我慢出来なくなった… 本当に神田が遊び慣れた奴で良かった>
「まさか… こんなに僕は尻軽だったなんて…」
噛まれずに済んだ項に触れ、冷たい水の中で近江は自分を嘲笑った。
『ヒロキ! 項を噛むよ、オレの"番"になってくれるよな?』
『嬉しい… 噛んで! 僕を"番"にしてよ! アナタと"番の契り"を結びたい!!』
学生時代、付き合ったアルファに項を噛まれ、"番の契り" を結んだが…
相手が大学を卒業すると同時に、近江が相手をすてたのだ。
お互い婚約者がいたが、"番の契り" を結んだ自分を恋人は選んで結婚してくれると信じていた。
だが、近江家と恋人の婚約者の家とでは、明らかに相手の方が家格が上で…
愛ではなく家の格で近江は負け、恋人に愛人になってくれと乞われた。
『ゴメンよヒロキ、逆らえないんだ! 婚約は家同士の政略的な契約だから、オレにはどうにもならなくて… 結婚は"彼女"としなければ、絶縁されて相続権まで奪われるから』
『わかっているよ、そういうのは僕の家も同じだからさぁ… 僕たちが一緒に居られれば、ソレで良いよ! 僕はソレで良いから』
一時は応じようとしたが、恋人の結婚式に友人として招待され、考えを改めた。
恋人の妻になったオメガ女性が、何も知らず幸せそうに微笑む顔を見たら…
罪悪感と嫉妬という激しい二つの感情に襲われ、耐えられそうにないと悟り近江は恋人に別れを告げた。
何年も放置していた、"番"を捨てたオメガの身体を…
近江は"番の契り"の縛りから解放される為の治療を半年ほど前から始めていた。
20代後半になり、近江は1人でいるのが辛くなったからだ。
誰かの"番"になって、番以外の体液を受入れると、強烈な拒絶反応を起こすためにセックスどころかキスさえ出来なくなる。
毎日薬を飲み続け、オメガホルモンを安定させる為の注射を週に2回打ち、心療内科では"番"を解く専門の医師の元に通いカウンセリングを受けた。
治療が無事、終わり(人によっては"番"が解けない事例もあるらしい)
"番"だった恋人以外のアルファでも、近江のフェロモンを感知出来るようになり…
近江自身も、今まで感じ取れなかった"番"以外のアルファフェロモンを、感知出来るようになった。
ホッとしていたところで…
ウッカリ神田にオメガだと知られてしまったのだ。
<抱かれた後だから言える、神田を誘う気は無かったけど、拒む気も無かった… 1人の時間があまりにも長すぎて、自慰ダケでは物足りなくて、誰かに抱かれたかったのが正直な気持ちだ>
「アイツ上手かったなぁ… もう一度ぐらいヤリたいな」
近江はカバンの中から抑制剤とミネラルウォーターを出して飲むと…
ベッド脇に放り出してあった、オメガフェロモンを拡散させない為のローションを手に取り、乳白色の液体を丁寧に首から順番に塗り込んで行く。
ベッドで熟睡する神田をしばらく見つめた後、少し考えて神田の隣に入り、ペタリと胸に鼻をすり寄せて…
満足げなため息をつくと、意識を手放した。
自分の身体に巻き付いた神田の太い腕が、息苦しさを感じるほど重かったからだろう。
熟睡する神田の腕を静かにズラシ、近江はゆっくりと身体を起こし、ベッドから出て洗面所へと向かった。
歩く度に身体の奥の深い場所が鈍く痛み、小さなため息をつく。
ベタついた自分の陰部が気になり、もう一度浴室へ入り暖かいシャワーを浴びた。
神田を受け入れた自分の蜜壺を片手で開き、もう片方の指を中に差し入れ丁寧に、ヌルヌルとした自分の体液をお湯で洗い流す。
セックスに夢中になっていた近江とは違い、神田はシッカリ避妊具を付けたコトを思い出し…
「やっぱり遊び慣れている男は違うな…」
苦笑しながら近江は首を振った。
ヂクヂクと疼く場所に触れてしまい、そのまま自慰を始めたい衝動にかられたが…
一度始めれば、今夜は簡単に止められそうに無いと感じ、昂ってしまった身体を冷ますためにシャワーの湯を水へと変えた。
久しぶりに感じた神田という強いアルファの、濃厚なフェロモンが…
未熟なオメガだった学生時代のように、近江ヒロキから理性を奪い、原始的な欲望と本能をムキ出しにしてしまったのだ。
<項を神田に噛まれなかったのは、幸運だった… 神田のフェロモンシャワーを浴びたとたん、僕の理性は簡単に吹っ飛んで消えてしまい、神田が欲しくて我慢出来なくなった… 本当に神田が遊び慣れた奴で良かった>
「まさか… こんなに僕は尻軽だったなんて…」
噛まれずに済んだ項に触れ、冷たい水の中で近江は自分を嘲笑った。
『ヒロキ! 項を噛むよ、オレの"番"になってくれるよな?』
『嬉しい… 噛んで! 僕を"番"にしてよ! アナタと"番の契り"を結びたい!!』
学生時代、付き合ったアルファに項を噛まれ、"番の契り" を結んだが…
相手が大学を卒業すると同時に、近江が相手をすてたのだ。
お互い婚約者がいたが、"番の契り" を結んだ自分を恋人は選んで結婚してくれると信じていた。
だが、近江家と恋人の婚約者の家とでは、明らかに相手の方が家格が上で…
愛ではなく家の格で近江は負け、恋人に愛人になってくれと乞われた。
『ゴメンよヒロキ、逆らえないんだ! 婚約は家同士の政略的な契約だから、オレにはどうにもならなくて… 結婚は"彼女"としなければ、絶縁されて相続権まで奪われるから』
『わかっているよ、そういうのは僕の家も同じだからさぁ… 僕たちが一緒に居られれば、ソレで良いよ! 僕はソレで良いから』
一時は応じようとしたが、恋人の結婚式に友人として招待され、考えを改めた。
恋人の妻になったオメガ女性が、何も知らず幸せそうに微笑む顔を見たら…
罪悪感と嫉妬という激しい二つの感情に襲われ、耐えられそうにないと悟り近江は恋人に別れを告げた。
何年も放置していた、"番"を捨てたオメガの身体を…
近江は"番の契り"の縛りから解放される為の治療を半年ほど前から始めていた。
20代後半になり、近江は1人でいるのが辛くなったからだ。
誰かの"番"になって、番以外の体液を受入れると、強烈な拒絶反応を起こすためにセックスどころかキスさえ出来なくなる。
毎日薬を飲み続け、オメガホルモンを安定させる為の注射を週に2回打ち、心療内科では"番"を解く専門の医師の元に通いカウンセリングを受けた。
治療が無事、終わり(人によっては"番"が解けない事例もあるらしい)
"番"だった恋人以外のアルファでも、近江のフェロモンを感知出来るようになり…
近江自身も、今まで感じ取れなかった"番"以外のアルファフェロモンを、感知出来るようになった。
ホッとしていたところで…
ウッカリ神田にオメガだと知られてしまったのだ。
<抱かれた後だから言える、神田を誘う気は無かったけど、拒む気も無かった… 1人の時間があまりにも長すぎて、自慰ダケでは物足りなくて、誰かに抱かれたかったのが正直な気持ちだ>
「アイツ上手かったなぁ… もう一度ぐらいヤリたいな」
近江はカバンの中から抑制剤とミネラルウォーターを出して飲むと…
ベッド脇に放り出してあった、オメガフェロモンを拡散させない為のローションを手に取り、乳白色の液体を丁寧に首から順番に塗り込んで行く。
ベッドで熟睡する神田をしばらく見つめた後、少し考えて神田の隣に入り、ペタリと胸に鼻をすり寄せて…
満足げなため息をつくと、意識を手放した。
10
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
黒の執愛~黒い弁護士に気を付けろ~
ひなた翠
BL
小野寺真弥31歳。
転職して三か月。恋人と同じ職場で中途採用の新人枠で働くことに……。
朝から晩まで必死に働く自分と、真逆に事務所のトップ2として悠々自適に仕事をこなす恋人の小林豊28歳。
生活のリズムも合わず……年下ワンコ攻め小林に毎晩のように求められてーー。
どうしたらいいのかと迷走する真弥をよそに、熱すぎる想いをぶつけてくる小林を拒めなくて……。
忙しい大人の甘いオフィスラブ。
フジョッシーさんの、オフィスラブのコンテスト参加作品です。
噛痕に思う
阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。
✿オメガバースもの掌編二本作。
(『ride』は2021年3月28日に追加します)


【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。
N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ
※オメガバース設定をお借りしています。
※素人作品です。温かな目でご覧ください。

君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》
市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。
男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。
(旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
【完結】もう一度恋に落ちる運命
grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。
そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…?
【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】
※攻め視点で1話完結の短い話です。
※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる