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6話 メール 相模side
しおりを挟む深夜過ぎにようやく帰宅し、相模は手早くシャワーで汗を流すと、浴室から出て水が滴る髪をワシャワシャとタオルで拭きながら、書斎へ行き半裸でノートパソコンを開き、メールをチェックする。
ほとんどが仕事関連のメールばかりだが、ふと相模の目が留まった。
大学から送られたモノだが…
"杉山マキ"
「彼だ!」
年甲斐もなく、胸がドキドキと鳴り、相模は慌ててそのメールを開いた。
"初めまして、杉山マキと言います。
大学で僕がアルファの男性に襲われた件で、ご助力頂いたと大学職員の方に聞きました。
本当にありがとうございました。
どうしてもお礼が言いたくて、本来なら直接お会いして言うべきですが、相模さんは忙しい方だと聞き、不躾ではありますがメールにしました。
襲われて大学に相談した後で、もしかしたら相手に逆恨みをされ、嫌がらせをされるのではないかとずっと不安だったので、今は心からホッとしています"
「こちらこそ、君の役に立てて嬉しいよ」
微笑みながら、相模はポツリとパソコンの画面に向けてつぶやき…
メールアプリを立ち上げると、添付されたマキのアドレスに返信した。
マキの為にしたコトは、相模にとってけして些細な気まぐれや、親切心からというワケではなく…
だからと言って、マキに一目惚れしたからというワケでもない。
相模にとって、マキは妻の代理だった。
数か月前、自殺で妻を亡くし、強い後悔の念で、相模自身が深く傷ついていた。
友人と深夜まで大量の酒を飲み、泥酔した妻は…
一緒に呑んでいた友人が帰宅した後、マンションのベランダから柵をよじ登り、飛び降りたのだ。
相模はちょうど、海外出張でドイツにいて、日本本社に残した秘書の1人から連絡を受け、妻が亡くなった事実と経緯を知った。
真夜中の自殺だった為に、翌朝まで妻は誰にも気づいてもらえず…
冷たいコンクリートの上に、1人ぼっちで転がっていたと聞く。
数年前…
婚約者に恋愛感情も、思い入れも何も無く、相模は決められていたから、義務を果たすつもりで結婚した。
妻のフウカは女性のオメガで、女子高を卒業してすぐに相模と結婚した為に、世間知らずで何時までも大人に成り切れない、子供のような女性で…
『私はエイジさんの奥さんになれてスゴク嬉しい!! だって婚約して初めて会った時からずっと好きだったから!』
頬を染めて少女のように笑うフウカを、相模も結婚当初は愛しいと思っていた。
それまで勤めていた英国にあるフランス系企業を、結婚を機に退職し、日本へ帰国した相模は…
家業を手伝い、重役として働くようになった。
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