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5話 恩人もアルファだった。
しおりを挟む親身になってマキの話を聞いてくれた、相談窓口の女性職員に、後日お礼を言いに訪ねた時…
「大学の経営陣の1人に、社会的地位の高いアルファ性の人が居てね、その方が杉山君が怖い思いをしたコトに、とても心を痛めいて、相手方に直接、厳重に注意してくれたらしいのよ… 私もソレを聞いてホッとしたわ」
相談窓口の女性が、コッソリ教えてくれた。
「あ… あの、その方にお礼が言いたいのですが?」
<正直、アルファに接触するのはスゴク怖いけど… 僕を助けてくれた人だから、きっと良い人のハズだよネ?>
マキは前のめりになって、尋ねたが…
「とても忙しい方らしくてね… 私の上司を経由してメールぐらいなら、転送してあげられるわよ? 先方のアドレスを、アナタに教えるワケには行かないけれど」
「ソ… ソレで、充分です!! ありがとうございます!!」
相談窓口の女性に、感謝の気持ちを表したくて、マキは腰を90度曲げて頭を下げ、お礼を言った。
<いくら恩人でも、やっぱりアルファは怖いから、直接会うよりメールの方が良い>
アルファ性を持つ者は、その血に秘めた能力の高さから、社会的地位が高い家の出身者が多く…
ゲス野郎アルファの実家も例外では無く、資金面で大学を支援するコトで、コレまでは問題を起こしても、ゲス野郎アルファは退学を回避していたらしい。
<息子がゲス野郎だと、その親もゲス野郎なんだね?! 本当に最低だよ!! 被害者の僕の方が襲われた時も、襲われた後も、怯えまくっているのに!!>
大学に入っても変な誘いばかりで、ハリネズミのように警戒するマキは疑心暗鬼になり…
結局、期待した友人など1人も出来ず、大学に時々ボランティアで訪れるカウンセラーに愚痴を零すと、オメガのコニュニティーを紹介され、誰かと仲良くなれればと、顔を出すようになった。
先輩オメガたちに、マキは大学でアルファに襲われた話をした。
「悔しいけどね… 付き合う気が無いのなら、極力関わらない方が良いよ! 恨みを買わないように、目を付けられないように、アルファには近寄らないのが、私たちには一番の自衛だから」
今は無事に結婚して主婦をしている30代のお姉さんオメガが…
昔、出会ったアルファのせいで、酷い目に遭った経験をいくつか話してくれた後で、アキにそう助言した。
「なんか聞いてると、アルファって… ヤクザみたいだね?」
思わずマキはそんな印象を、口に出す。
「まぁ犯罪者では無いから、その点だけはマシかしら」
プハッ… と吹き出すお姉さんオメガ。
「100年前からあまり変わらないんだよね、アルファは… 今もオメガを自分たちの付属物ぐらいにしか考えて無いから、番になるとそういう部分が、顕著に表れるんだ」
自宅で仕事ができるイラストレーターで、20代後半のお兄さんオメガは…
付き合っていたアルファと番になったが、後で結局別れることになり、番から人工的に解放されるまで、心療内科で長期のカウンセリングに催眠療法、病院で投薬にホルモン治療と、ズイブン苦労をしたらしい。
「マキ君はさ、ネックガード付けた方が良いよ? 格好悪いけどね、服とか会わせるの大変だし、でも番にされるとホント、後でキツイからさぁ、お兄さんが良い店教えてあげるから、一度見て来なよ」
お兄さんオメガはマキが遭った災難に心底心配し、そう助言した。
「うん」
お兄さんオメガの助言を素直に聞き入れ、マキは項を守るネック・ガードを首に付けるコトにした。
<自分の弱さを曝すようで嫌だけど、ゲス野郎に項を掴まれた時、悪戯に番にされたらと…本当に怖かった! 屈辱的だけど、あんな心配をするぐらいなら、プライドを曲げた方が良い>
思い出すとブルッ… と、マキの身体は震えてしまう。
アルファはマキにとって、恋愛対象ではなく、マキを害する捕食者なのだ。
<今なら、ライオンに狙われる小鹿の気持ちが良く分かる>
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