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68話 夜の散歩2
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「おおっと、大丈夫か? 足は挫かなかったか?」
「ああ、はい」
そのまま熱い胸に抱きしめられて、アイルは広い背中に腕を回す。
<ああ… やっと帰って来た、パダム様の元に…>
「さぁ行こうアイル…」
腕を解き、アイルの顔が見えるように、パダムは少し離れる。
「はい」
差し出されたパダムの手を取ると、隣に並びゆっくり夜の庭を散歩した。
「王宮の中でも、私は小さな別邸で暮しているんだ」
「別邸ですか?」
「使用人に囲まれて暮らすのが慣れなくてな… アンギヌ王国で、武臣として身を立てていたから、宮廷は不慣れなのだ」
「その割には、今夜の晩餐会や、褒賞を授与する時など、とても優雅で堂々としていて、パダム様は立派な王子様なのだなぁと、私は思っていましたよ?」
「そうか?」
「見たコトの無いパダム様だったから、とても素敵でした」
「惚れ直したか?」
ジッと見つめられ、アイルは照れ笑いを浮かべた。
「ふふふふっ… はい!」
パダムは大きな身体を曲げて、アイルの唇を軽く奪う。
一度奪えば、2度目も欲しくなり…
3度、4度、と続け… 舌と舌を縺れさせ、夢中でお互いの舌と唇を吸い合った。
「うっ… んん…」
唇を離さずにアイルがうめき声を漏らすと…
パダムは不意に唇を離すと、アイルを抱き上げ、何処かへ走り出す。
「あっ! パダム様?」
慌てて、アイルは落ちないようにパダムの逞しい肩に掴まった。
スグに石造りの建物が見えて来た。
パダムの治療に使った、森の邸と比べると、半分ぐらいの大きさで、ソコがパダムが言っていた別邸だと、アイルも気が付いた。
「誰か… 使用人がいるのではありませんか?」
「夜は私が呼ばなければ、立ち入らないようにと、指示してある」
「え?」
建物に入る前にパダムはアイルを下ろす。
「私の命を狙う王太子派とか言う、間違った忠義者がたまに襲って来るから、夜は魔石で厳重に警戒するコトにしている… それで使用人が居ると警戒網に引っ掛かるから、邪魔なのだ」
面倒そうにパダムは、愚痴を零した。
「まぁ… パダム様、お気の毒に…」
魔獣退治から帰ってまだ、日が浅い為に…
話の通じない凶暴な魔獣ではなく、同じ国の、同じ人間に命を狙われるコトが、信じられなかった。
玄関脇の花壇の中に、パダムは手をかざし魔力を注ぐ。
専門外の魔法なので、目の前で見ていても、パダムが何をやっているのか、アイルには分からなかった。
「良し!」
重そうな木製の玄関扉を、パダムが開き、アイルを先に中へ通す。
バタンと扉を閉めると、扉に手を当てて、また魔力を込めた。
アイルは不思議そうに見ていると…
「この扉は、私がこの邸に住むことに決めた時、魔道具の職人を呼んで、人間に効く結界の魔法を仕込んである」
パダムは扉に埋まる魔石を指差した。
「人間に効く結界?」
首を傾げたアイルの頭をパダムが撫でた。
「要は外から扉に触れるとびりびりと手に稲妻が走るのだ、ソレが死ぬほど痛いから動けなくなるんだ」
「まぁ… ソレは怖いですね」
心配そうにアイルは、引っ掛かったらどうしようと言う顔で、パダムが指差した魔石を見つめた。
「邸の周りにグルリと、私の魔力をタップリ込めた魔石を、等間隔に埋めてあるから、ソレより内側に入ると邸中で、警戒音が鳴るようにしてある」
「だから使用人が、居ない方が良いのですね?」
「私の世話をする者たちは、一度はどちらかの魔法に引っ掛かっているから、夜はコチラから連絡用の幻鳥を飛ばさない限り来ないのだ」
「ソレは大変だったでしょうね?」
「きっと私は彼らに恨まれているだろうな…」
2人で顔を見合わせて、不謹慎にも忍び笑いを漏らす。
「ああ、はい」
そのまま熱い胸に抱きしめられて、アイルは広い背中に腕を回す。
<ああ… やっと帰って来た、パダム様の元に…>
「さぁ行こうアイル…」
腕を解き、アイルの顔が見えるように、パダムは少し離れる。
「はい」
差し出されたパダムの手を取ると、隣に並びゆっくり夜の庭を散歩した。
「王宮の中でも、私は小さな別邸で暮しているんだ」
「別邸ですか?」
「使用人に囲まれて暮らすのが慣れなくてな… アンギヌ王国で、武臣として身を立てていたから、宮廷は不慣れなのだ」
「その割には、今夜の晩餐会や、褒賞を授与する時など、とても優雅で堂々としていて、パダム様は立派な王子様なのだなぁと、私は思っていましたよ?」
「そうか?」
「見たコトの無いパダム様だったから、とても素敵でした」
「惚れ直したか?」
ジッと見つめられ、アイルは照れ笑いを浮かべた。
「ふふふふっ… はい!」
パダムは大きな身体を曲げて、アイルの唇を軽く奪う。
一度奪えば、2度目も欲しくなり…
3度、4度、と続け… 舌と舌を縺れさせ、夢中でお互いの舌と唇を吸い合った。
「うっ… んん…」
唇を離さずにアイルがうめき声を漏らすと…
パダムは不意に唇を離すと、アイルを抱き上げ、何処かへ走り出す。
「あっ! パダム様?」
慌てて、アイルは落ちないようにパダムの逞しい肩に掴まった。
スグに石造りの建物が見えて来た。
パダムの治療に使った、森の邸と比べると、半分ぐらいの大きさで、ソコがパダムが言っていた別邸だと、アイルも気が付いた。
「誰か… 使用人がいるのではありませんか?」
「夜は私が呼ばなければ、立ち入らないようにと、指示してある」
「え?」
建物に入る前にパダムはアイルを下ろす。
「私の命を狙う王太子派とか言う、間違った忠義者がたまに襲って来るから、夜は魔石で厳重に警戒するコトにしている… それで使用人が居ると警戒網に引っ掛かるから、邪魔なのだ」
面倒そうにパダムは、愚痴を零した。
「まぁ… パダム様、お気の毒に…」
魔獣退治から帰ってまだ、日が浅い為に…
話の通じない凶暴な魔獣ではなく、同じ国の、同じ人間に命を狙われるコトが、信じられなかった。
玄関脇の花壇の中に、パダムは手をかざし魔力を注ぐ。
専門外の魔法なので、目の前で見ていても、パダムが何をやっているのか、アイルには分からなかった。
「良し!」
重そうな木製の玄関扉を、パダムが開き、アイルを先に中へ通す。
バタンと扉を閉めると、扉に手を当てて、また魔力を込めた。
アイルは不思議そうに見ていると…
「この扉は、私がこの邸に住むことに決めた時、魔道具の職人を呼んで、人間に効く結界の魔法を仕込んである」
パダムは扉に埋まる魔石を指差した。
「人間に効く結界?」
首を傾げたアイルの頭をパダムが撫でた。
「要は外から扉に触れるとびりびりと手に稲妻が走るのだ、ソレが死ぬほど痛いから動けなくなるんだ」
「まぁ… ソレは怖いですね」
心配そうにアイルは、引っ掛かったらどうしようと言う顔で、パダムが指差した魔石を見つめた。
「邸の周りにグルリと、私の魔力をタップリ込めた魔石を、等間隔に埋めてあるから、ソレより内側に入ると邸中で、警戒音が鳴るようにしてある」
「だから使用人が、居ない方が良いのですね?」
「私の世話をする者たちは、一度はどちらかの魔法に引っ掛かっているから、夜はコチラから連絡用の幻鳥を飛ばさない限り来ないのだ」
「ソレは大変だったでしょうね?」
「きっと私は彼らに恨まれているだろうな…」
2人で顔を見合わせて、不謹慎にも忍び笑いを漏らす。
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