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37話 叔父ニャムック
しおりを挟む騎士たちの怪我の具合を見て処置をして回り、手持ちの薬が無くなったので、重傷者を集めた救護所テントへと入ると、フジャヌと叔父のニャムックが、治癒魔法を掛けていた。
アイルが見ただけでも、ソコにいる怪我人たちは、外で見た人たちより明らかに軽傷だった。
「お兄様、もう重傷者はいないのですか?」
何気なくフジャヌに訊ねると
「バカを言ってはイケナイよアイル、お前はそんなコトも分からないのかい?!」
後ろで治療していた叔父のニャムックが、言い方は穏やかだが、軽蔑を込めてアイルを諭す。
「申し訳ありません叔父様!」
真赤な顔でアイルは叔父に謝罪する。
「・・・・・・」
フジャヌは何か言いたげだったが、叔父に気付かれないよう、アイルに黙って小さく首を振る。
兄の態度からも、やはりアイルの間違いでは無かったのだ。
ソコにいる軽症者たちの顔には見覚えがある…
まだ、アイルが学園に在籍していた頃、学園内で見た上位貴族の子息たちばかりだ。
<叔父様は… 身分で治療の順番を決めているの?! そんな、何てコトなの!!>
「お兄様、私の薬がもうすぐ無くなります… コレでは!」
この状況にアイルは、危機感が募る。
「聖水と薬草なら、王都でかき集めて持って来た」
最初からフジャヌも、そのつもりだったらしい。
「今夜に備えて、今から調合しても良いですか?」
「あまり時間が無いから急げよ!」
「はい!」
信じられない気持ちで、アイルはチラリと叔父を振り返り、もう一度兄を見る。
「叔父様がああいう人だとは思いませんでした」
<ずっと優しい人だと思っていたのに…>
「いつものコトだ!」
フジャヌはさらりと言うが…
両親を亡くした時に、まだ、未熟だった兄に代わりアイルの治療を引き受けて献身的に、完治するまで診てくれたのは叔父のニャムックだったからだ。
「ニャムック叔父は、お前が思うよりもずっと俗物だ… こういう場所だからこそ、本性が出ると言うモノさ」
フジャヌのあまりにも、身も蓋も無い言い方に、アイルは困惑する。
「お兄様…」
「身内だからと信用するなよ、ソレより早く調合しろ! ソレで誰かの命が救えるかもしれないのだから!」
「は… はい!」
オバット伯爵家から連れて来た、護衛の騎士たちに手伝ってもらい、大急ぎでオバット伯爵家伝来の魔獣の怪我用傷薬を調合する。
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