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17話 治療 ※R18

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 パダムの身体からじわじわとまた瘴気が染み出し始めた。

「ああ! パダム様… ダメです、どうかお心を静めて!」

 パダムにそう言いながらもアイル自身が、溢れだした涙を止められないでいる。



「アイル、君は今すぐココを去るべきだ… 私はもっと泣かせてしまう!」

「いいえ、ソレは出来ません! パダム様」

<どれだけ恥じるべき行為だとしても、去るワケにはいかない… このままでは本当にパダム様は死んでしまう!!>



「私が悪いのだ、こんな傷を負った私が!!」


「いいえ、兄に聞きました、パダム様が居たから魔獣を撃退できたのだと! パダム様は何も悪くはありません!! 悪くなどありません!!」

 アイルは溢れる涙を何度も、何度も、拭い続ける。


「これは治療です! 治療なのです!! 涙が溢れるのは… 私が治療師として未熟だからです!!」

 アイルは広い肩に掴まり、パダムの頬に唇を寄せ、そっとキスをして、美しい深紅の瞳を間近で見つめる。

「私がアナタを綺麗に… 綺麗にします… どうか終わるまで、私にお付き合いください」

「アイル…!」

「これは治療です! アナタはこの国に必要な方です、民の為に、そして婚約者のブラヌ様の為にも… 生きなくてはなりません! 全て、生きていればこその悩みです!!」

「・・・・・・くっうう!」

 深いシワを眉間に寄せ、パダムは悔しそうにうめき声を上げた。
 

 目の前の温かい唇にアイルは吸い付き、パダムの口内に舌を入れ呪毒と魔力を吸い、絆を繋げる。

<私は迷ってはイケナイ! 泣いてはイケナイ! パダム様の心を乱させてはイケナイ! >

 拭いきれない涙を、アイルはまた、拭う。

 
 長い腕がアイルの細い腰を引き寄せ、パダムの舌がアイルの舌に絡まり吸い付いて来る。

 魔力が溢れアイルの身体をパダムの魔力で満たされる。


 たくさんの呪毒が、痛みを伴いながら流れ込み、アイルは全力で浄化する。



 ピタリとくっ付いた身体から、パダムの昂ぶりに気付き…

 不謹慎にもアイルは、感じてはイケナイ喜びを感じた。

<やはり、悪いのは私なのだ! パダム様を苦しめているのに、私はこんなにも胸が高鳴ってしまうなんて… マニス様の言う通り、私は本当にふしだらな女なのだわ>

「一日でも早く、浄化が進むように…」

 アイルは昨夜と同じように、服を脱ぐ。

 パダムは息を呑み、アイルを貪るように見つめ、なめらかな素肌に掌を添え、ため息をつきながら名前を呼んだ…

「アイル… 私だけの聖女…」


「パダム様… コレは治療なのです… 治療なのです…」

<喜んではイケナイ… 求めてもイケナイ… 私はタダ、パダム様を浄化するだけの存在なのだと、肝に銘じなければ!>

 涙がポタポタとパダムの肩に落ち、涙の線が壊れたように止まらない。
 


 アイルを抱き上げ、パダムはベッドへと一緒に倒れ込む。

 寝ころんだまま、分厚い身体に負った禍々しい怪我に触れ、額に落ちたパダムの唇が、アイルの唇に辿り着くまで瞳を閉じて待つ。

 大きな掌がアリルの美しい胸を包み込み、ゆっくりと愛撫する。

「んんっ…!」
 <パダム様に触れられて、喜んではイケナイ… 喜んでは!!>

「アイル…っ!」
パダムの唇がようやく、アイルの唇に辿り付き、肉厚の舌を受入れ、夢中で吸い付く。




<喜んではイケナイ… 喜んでは! でも、なぜこんなにも愛おしいの? なぜ触れられる度に愛しさが募っていくの?>









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