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6話 朝

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 朝の光を感じて、ふと目覚めると… アイルは知らないベッドで眠っていた。

<あら? ココは何処?  とても暖かい… ああ… それにとても… 気持ちが良い…>
 
 ウットリと、アイルはため息をつき、また眼を閉じる。

 昨日、兄に連れられてパナス・ダラムの邸に来たコトを、アイルはボンヤリ思い出す。

<ああ… そうだった、騎士様の邸に… 本当に暖かくて気持ちが良い、カチャンが背中にくっ付いて眠っているからかしら?>


 大叔母の家は隙間風が入ってとても寒かった。

<でも、お腹も暖かい… 背中では無く、お腹にカチャンがくっ付いているのかしら?>


 カチャンを撫でようと、目を閉じたままアイルはお腹に手を伸ばすと… 何かとても硬いモノが、お腹にグルリと巻き付いていた。

 寝ぼけたままアイルは、ぺたぺたと触ると、お腹の周りの硬いモノはとても暖かく… でも何か分からない。

「んんん?」
 
 ようやく目を開けアイルが上掛けを捲り中を見ると、自分が裸だと気づき… 
 
 お腹に巻き付いているのは太くて長い腕だった。

「・・・・・・ひっ!!!」


 アイルがビクリッと震え、心も身体も石のように固まると… 

 大きな手がアイルの平らなお腹を、円を描くように丸く丸く撫でる。


「はぁ・・! っ・! ・・あっ・! ・・はっ・・・!!!」

 ヒドイ混乱状態に陥り、アイルは慌てふためく。


「起きたか?」

 低い男の声が背中から聞こえた。  


 魚のように口をパクパクしながら、アイルは怖くて振り向くコトが出来なかった。

「・・・・・・っ」


「君の名前は?」 

 背中から聞こえる声にアイルは覚えがあった。
 

「ああ…!」

 昨夜聞いたパナス・ダラムの声だった。


「君の名前は?」


「アイル…です…」
 声を震わせながら答えた。

「君はドコの誰だ?!」


 昨夜は呪毒の瘴気に耐えるダケで精いっぱいだった、パナス・ダラムは、ほとんどアイルの話を理解できていなかった。


「オバット伯爵家の長女です」

「オバット!! フジャヌの妹か?! 言われてみれば… この美しい銀の髪はそっくりだ」

 アイルの腰まである長く真っ直ぐな銀髪を、パナス・ダラムは手に取りそっとキスをする。


「はい」

「昨夜のアレは、一体何だったのだ?」

「男女の契りを結ぶコトで絆ができ、パナス・ダラム様の内から直接、魔力と混ざった呪毒を吸い出し、私の体内で浄化して魔力ダケお身体に送り返したのです」

 自分では魔力の壺の蓋を開けないアイル。

 パナス・ダラムの魔力をアイルの開かない魔力の壺に繋ぎ、浄化魔法を使ったのだ。

「つまり私は君を抱けば抱くほど、この呪毒が薄まるのだな?」

「はい」


「なら、もう一度頼む!」

 パナス・ダラムは、アイルをコロリと転がし、仰向けにすると覆いかぶさって来る。


 キラキラと光る深紅の瞳の美しさに、アイルは一瞬息が止まりそうになる。


「ど… どうかお許しを!! 夜までお待ちください!」
 
 上掛けを引っ張り、慌ててパナス・ダラムからアイルは胸を隠そうとする。



「何故だ?」

 ニヤリと笑い真っ赤になったアイルを見下ろすパナス・ダラム。






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