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109話 花嫁の飾り
しおりを挟むエスパーダがマンサナの肩から手を下ろすと…
たっぷりとマンサナから魔リョクをもらったティエーラの竜は、白銀の身体をキラキラと輝かせて、満足そうに金の眼を細める。
「ああああ~… 身体の力が抜けたぁ……」
ハァ―――ッ… と大きなため息をつき、マンサナは絨毯のうえにへなへなと座り込んだ。
「お疲れ様、マンサナ… 大丈夫?」
すごいなぁ… 初めて僕がティエーラの竜に魔リョクを奪われた時は、気を失ったのに…?
マンサナは疲れた顔をしているけれど、気絶する様子は無いし? やっぱり僕よりも、マンサナは魔リョクをたくさん身体に持っているんだね?
思わず感心して、アルセもマンサナのとなりに座ろうとするが… エスパーダの長い腕がのびて来て、背後からギュッ… と抱きしめられた。
「エ… エスパーダ様? んん…?」
「・・・・・・」
エスパーダはまだティエーラの竜に、身体を支配されたままのようで… アルセの言葉に何の反応も示さない。
「エスパーダ様?!」
何だろう? まさかティエーラの竜は、僕からも魔リョクを奪う気なの?!
エスパーダの手がティエーラの竜の手と一緒に、アルセの腰を飾る金のチェーンベルトにぶら下がった、大粒の紅玉に触れ… ティエーラの竜から白銀に輝く魔リョクが、紅玉に流れ込む。
「アルセ? 白銀トカゲは“花嫁の飾り”に何をやっているの?!」
心配そうにエスパーダの手を見つめながら、マンサナはヨロヨロと立ち上がる。
「ええ?! わからないよ?! こら、白銀トカゲ!! 国宝級の宝物に何をやっているんだ?! 変なことするのは止めてよ…?!」
ちょっと待って?! ディグニダド伯爵家の家宝に、何をやっているんだよ?! うわっ! 本当に壊したらどうしよう?!!
あわててエスパーダの腕の中から、逃げ出そうとするが… ガッチリとアルセは背後から抱きしめられているため、いくら抵抗しても、長く逞しいエスパーダの腕はビクともしない。
「もう… 止めてよぉ?! うちの家宝を壊さないでよ?!」
マンサナもアルセをガッチリ抱く、エスパーダの腕を引き離そうとするが… やっぱりビクともしない。
暴れるアルセを無視して、ティエーラの竜は魔リョクを流し続ける。
アルセとマンサナがあれやこれやとするうちに、魔リョクを流された紅玉に異変が起きた。
まるで命を吹き込まれたかのように、紅玉がまぶしい輝きを放ち始める。
「今度は何?! わわっ?!」
「きゃあぁぁ…?! 何なのよ?!」
腰に下げたチェーンベルトの紅玉に、つられるように… アルセの手首の腕輪や、足につけた足輪の紅玉まで輝きを放つ。
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