竜血公爵はオメガの膝で眠る～たとえ契約結婚でも…

９２話 覚醒２ エスパーダside ※R18

『奪え！　奪え！　奪え！　奪え！　奪え！　奪え！』

「クソッ…！！　止めろ！　今はダメだ…　アルセを死なせてしまう！！　ダメだ！　ダメだ！　ダメだ！！！」　
　弱り切ったアルセを『奪え』と命じるティエーラの竜に、エスパーダは必死で抵抗するが…　戦いの場で敵を殺す時のように、エスパーダは自分を乗っ取られてしまう。

「くうぅ………っ……」
　普段からティエーラの竜に、自分の心も身体も自由にはさせまいと…　隙すきを作らないよう心がけているが、アルセを失うかも知れないというエスパーダの恐怖に、つけ込まれたのだ
『奪え！　奪え！　奪え！　奪え！　奪え！　奪え！』

　あっという間にエスパーダは、ティエーラの竜の獰猛どうもうな意識に飲み込まれ…　訳がわからなくなった。




　ティエーラの竜の支配から、心と身体が解放された時…　エスパーダは夢中でアルセを抱き、オメガの性器に精をまき散らしたあとだった。

「ううっ…　クソッ…！！」
　やられた！　いつの間にか、ティエーラの竜に私は乗っ取られていたのか？！　

　あわててエスパーダは、アルセから性器をひき抜こうとしたら…　

「ああっ…んん…　嫌…ああっ…　エスパーダ様…！　んんっ……んんっ……！」

「・・・っ？！」
　フワリとオメガの誘惑フェロモンが立ちのぼり、アルセの甘い声が聞こえ、エスパーダは、ハッ…　と息をのんだ。

　コルティナ侯爵に噛まれてできた、傷に巻かれていた包帯ほうたいがほどけて、アルセの白いうなじが…　傷の無い元通りの綺麗なアルセのうなじがさらされていた。
　

　アルセのうなじに残っているのは、ティエーラの竜に支配されたエスパーダが…　たった今つけた噛み痕あとだけだ。

「これは……？！」
　何が起きているんだ？！　うなじにあった、アルセの傷がなくなっている？！　治癒ちゆ……　した？！　あのひどい傷が……？　

　ためしに、アルセの腕に巻かれた包帯をほどくと…　猟犬りょうけんの噛み痕あとも綺麗に無くなっている。　

「まさか…　ティエーラの竜が……？」
　宿主しゅくしゅの私が負った致命傷ちめいしょうを、治す時と同じように…　ティエーラの竜がアルセの命を救うために、身体の傷を治療したのか？！

　エスパーダは自分の性器をひき抜き、うつ伏せのアルセをあおむけにして顔を見た。

「アルセ…？！」
　本当にアルセは大丈夫なのか？　医師に死ぬかもしれないと、言われた瀕死ひんしの状態だったアルセが…　本当に治ったのか？！

「んんん…っ…」
　欲望で潤んだ紅玉色ルビーレッドの瞳が開き、エスパーダはうっとりとアルセに見つめられた。

「アルセ…？」

「エスパーダ様ぁ…　エスパーダ様ぁ……」
　アルセの手がのびて、エスパーダの頬に触れ…　ゆっくりと唇をなでた。
　アルセはエスパーダのキスが欲しいのだ。

「くっ…！」
　ああ、本当に無事…　なんだな？！　私のアルセは救われたのか！

　不覚にもエスパーダは、傷が消えたアルセの姿を見て…　涙が出そうになった。

　自分の唇に触れるアルセの指を捕まえ、キスをすると…　エスパーダはアルセの唇を奪うようにキスをした。