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87話 救出 エスパーダside

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 別邸べっていまでの案内をさせている、コルティナ侯爵家のジャベと、王弟殿下を乗せた馬車について馬に騎乗きじょうして走るエスパーダは…
 侯爵家の別邸近くまで来ると、背中にゾクッ… ゾクッ… と鳥肌が立つような悪寒おかんに襲われる。

「ティエーラの竜がさわぎ出した!」
 アルセにの身に、危険が迫っているのか?! クソッ…!!

 ピリピリとした緊張感が、エスパーダの体内をかけめぐる。

「嫌な感じがする… 私は先にゆく!」
 馬車の周囲を走る騎士たちに伝えると、エスパーダは馬の速度をあげて、馬車から離れた。

閣下かっか!」
 エスパーダの護衛騎士2人も、主人にピッタリついて馬の速度をあげる。

「・・・っ!」
 広がる平原にのびる道を、進めば進むほど… ピリピリとした感覚が強くなる! アルセがこの近くにいるのか?! 

 周囲を警戒しながら、馬をもうスピードでけさせるうちに… どこかから激しくえる犬の声が聞こえた。
 エスパーダは後ろからついてくる護衛騎士たちに、手を上げて合図を送ると… 馬を止めて、犬のき声がどこから聞こえて来るのかを、耳をすませてさぐる。

 ピイィィィ――――――ッ!! と指笛を吹く音が平原に鳴り響く。

「道をはずれた平原の中から聞こえますね?!」
 護衛騎士がつぶやく。

 エスパーダはすばやく馬首ばしゅを平原の中へむけ、ふたたび馬をけさせる。

 ヂクッ… と針で刺すようなしびれが背中を走り、エスパーダは身体をかたくする。
「…くっ!! ティエーラの竜がうるさくなった…」
 アルセ…! アルセ…!! どこにいる?! どこだ?!!!

 荒々しくえる犬の声が大きくなり… 草原の中に馬に乗った者たちがエスパーダの視界にはいる。

「あれか…?!」
 あそこにアルセがいるのか?!

 馬に乗った者たちの方へまっすぐ向かおうとしたとき… 
 


「うわああああああぁぁぁ―――っ!!!!!」 


「ハッ…?!」
 アルセ?!!

 馬に乗った者たちとは離れた場所から、アルセの悲鳴が聞こえた。
 犬たちがグルグルと取りかこみ、その中心で地面にかがんだ何者かが見える。

「あれだ! 間違いない!」
 アルセの悲鳴が聞こえた場所まで、夢中で馬をけさせると… 犬たちがエスパーダに気づきむかって来るが、エスパーダが放ったアルファの威嚇いかくに、本能でひるんだ犬たちは、足をとめ道を開ける。


 エスパーダの馬が走るひづめの音が耳に届いたのだろう。地面にかがみこんだ何者かが顔をあげふり返った。

「・・・・・・」
 コルティナ侯爵…!!

 コルティナ侯爵に押しつぶされるように、地面に倒れるアルセを見つけ… エスパーダは馬から飛びおりる。
 カァッ… と身体中の血液が沸騰ふっとうしたかと思うほど、熱くなり… エスパーダの視界が真っ赤に染まり、猛烈もうれつな怒りがこみあげた。

 辺り一面を焼きつくしそうな、強い怒りをまとったエスパーダは… あわてて逃げ出そうとする、コルティナ侯爵の顔を殴りつけた。

 殴られて立ち上がろうとするが、太ももまで下ろした下衣が邪魔をして、コルティナ侯爵は足をもつれさせて転ぶ。

「グ… グラーシア公爵… 閣下かっか…?! なぜ、ここに? ああっ… ひぃ…っ…!!!」
 下衣を太ももまで下げて、性器をさらしたまま、元騎士とは思えない情けない姿で、コルティナ侯爵はズルズルと地面をはいずり逃げようとするが… 


 エスパーダは拳で殴り続けた。





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