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79話 コルティナ侯爵邸2 ※流血注意
しおりを挟む自分の手で、指を2,3本引きちぎると、エスパーダはジャベたちに言ったが… 結局は時間を短縮するために、メサとノチェの腕を手首から剣で切り落とした。
もちろん利き腕の右手をエスパーダは選んだ。
「ひぃ…っ うううっ… ううっ 痛いっよぉ… 助けてくれ…ジャベ…!」
「ジャベ… ジャベ… ぐうっ… オレの腕がぁ… 腕がぁ……」
「ああ… あんた、狂っているよ?! いくら、公… 公爵でも… コルティナ侯爵家で… こんなことするなんて?!」
ジャベの部屋の絨毯を、血だらけにしてのたうち回り… 痛みにうめき、涙で顔をグチャグチャにして泣く、2人の悪友たちを見下ろし… ジャベはガタガタと震えていた。
「腕は2本、足も2本ある… この2人からはあと、3本ずつ取れるという訳だが? どうするジャベ?! そろそろアルセの居場所を、言う気になったか?!」
エスパーダはジャベの前で、自分の腰にさした剣の柄を、トンッ… トンッ… とたたき、カチャッ! カチャッ! と冷たい金属音を室内に響かせる。
「ああっ… そ… それは……!」
「お前は薄情なやつだな? この2人はお前の友人ではなかったのか?!」
「で… でも、話したら… 父上に殺される! 本当に怖い人なんだ! 父… 父上は…!」
「そうか? なら今度はお前の腕を切り落とすか… 薄情なお前は、どうやら友人の腕や足が全部無くなっても、ぜんぜん気にしないようだからな?」
意外と強情だな… このゲス野郎は? それほど父親のコルティナ侯爵を、恐れているということだが?!
エスパーダは鞘から剣を抜いた。
「さっきも言った…! 知らないんだ! 本当にオレは…」
ジャベは少しでもエスパーダから離れようと、じわじわと後ずさるが… エスパーダは1歩… 2歩… と前に進み、ジャベを追いつめる。
「仕方ない…」
こいつにアルセの居場所まで、案内させるつもりだったが… 腕を落とすと、手当てをしなければならないから、面倒なんだが……
「ひいっ…?!!」
その場から逃げ出そうと、ジャベが身体の向きを変えた一瞬で… エスパーダはちょうど良い位置にあった、ジャベの耳を切り落とした。
「ギャア―――ッ…!! ううっ…?! ぐうっ痛いっ…! 痛いっ…! 痛いっ…!!」
失くした耳があった場所をおさえて、ジャベが泣きさけぶ。
「もう片方の耳が重たそうだな? そっちも落とすか?」
「止めて… 止めて…下さいっ…!」
「アルセはどこにいる! 私の“番”をどこへやった?!」
「わかりません!! だ… だけど、父上が… いつも気に入ったオメガを誘拐して連れて行く… 別邸が王都のはずれにあります… オレはそこしか知らない!」
「そこまで、私たちを案内しろ!」
「ううっ… は… はい…!」
エスパーダの護衛騎士たちが、ジャベの寝室へ行きベットのシーツをはいで、手ぎわ良く切り裂き包帯を作ると、腕を切り落とされたメサとノチェの腕を、かたくしばり止血する。
「おやおや… これはまた、派手にやったね?!」
のんびりとエスパーダの背中に声をかけて、王弟殿下がやって来た。
「これは王弟殿下… お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありません! 少し急いでいたので」
それまでの威圧的な態度を引っ込めて、エスパーダは胸に手をあて、礼儀正しく王弟殿下に頭を下げた。
「それで?」
「はい殿下、この者らがアルセを学園から誘拐したのは、間違いありません! 本人たちも自白しました」
「そうか… なら、腕や耳だけでは足りないなぁ… よく我慢出来たね、エスパーダ?」
「はい、アルセを見つけるまでは… ですが」
エスパーダはニヤリと笑った。
エスパーダが由緒正しきグラーシア公爵でも… 単独でコルティナ侯爵家にケンカを売り、後でコルティナ侯爵に真実を曲げられでもすれば、エスパーダが私的な理由で、嫌がらせをして秩序をみだしたと取られかねない。
そこで第3者の、王国でもっとも強力な権力を持つ王族を巻き込み… コルティナ侯爵がおかした、犯罪行為の証人となってもらうことで、エスパーダがしていることに、正当性があることを王国法で証明できる。
ついでに、王妃の生家となり最近急激に力をつけ始め、コルティナ侯爵家の傲慢な態度に困っていた王家に、エスパーダは恩を売るつもりだった。
この件を上手くかたずければ、コルティナ侯爵を失脚させられる理由になるからだ。
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