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76話 油断

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 試験問題を一目見て、アルセはすべて難なく解ける問題ばかりだと微笑んだ。


「・・・・・」
 よしっ! やるぞ!!

 いくら問題が簡単でも… こんなに大切な場面で油断ゆだん大敵たいてきだと、アルセは気持ちを引きしめるために、自分のほほをパチンッ…! と一度、両手でたたいてから、試験問題にとりかかる。

 卒業試験を受けられると、学園からの吉報きっぽうが届いた日から、昨日の夜まで… アルセは朝から深夜まで、何かにとりとりかれたように、勉強をした。

 その間、勉強に集中しすぎて… アルセは情交じょうこうをピタリと止め、夜エスパーダとは別々の寝室で眠るほどだった。
(そもそも結婚前の2人なのに、寝室が一緒なのはやり過ぎである)


 試験問題をすべて解き終わり、アルセは最後にじっくりと念いりに見直してから… ニコリッ… と満面の笑みを浮かべる。

「・・・・・・」
 完璧! これで合格できなかったら、学園がわが不正をしたことになるぐらい、完璧だ! ふふふっ…

 答案用紙を試験官に提出して、アルセは会場を出る。

 知らず知らずのうちに、緊張で強張こわばっていた背中を… ググッ… と背伸びをしてやわらかくする。
 仕上げにフゥ―――ッ… ハァ―――ッ… と深呼吸をした。

「よし、帰るか!」
 早くエスパーダ様に、無事に問題を解けたと報告したい! それにギュギュギュッ…!! て抱き付きたい!! ずっと我慢してたから… 
 だってエスパーダ様ってば、いつもフェロモンの良い香りをただよわせているんだもの! あの誘惑に負けないようにするのは、本当に大変だったんだから!! ふふふっ…

 足早に廊下を歩いて、アルセは馬車が待つ学園の正門へとむかう。
 エスパーダがグラーシア公爵邸に帰ったあと… ふたたび馬車だけ、学園へアルセのむかえに戻って来ているはずだ。


 晴々はればれとした気分で、ニヤニヤと笑いながら歩くアルセは… 

 背後からいきなり、ものすごい力でグイッ…!! と腕を引っ張られて… 固い石床に引き倒された。
 試験を無事に終えて油断ゆだんして、警戒をおこたっていたアルセは… ゴツッ…! と頭を石床にぶつけて、そのまま目の前がグラッ… とゆれる。


「おい!! 急げ、メサ… 誰かに見られたら、面倒だぞ?!」

「バカッ… そんな大きな声で怒鳴るなジャベ…!」

「どうでも良いから… 早くそっちの腕を持てよ、ノチェ…」


「・・・っ?!」
 あ…… やられた…! このゲス野郎たちが、まさかこんなバカなことをするほど… バカだなんて… 本当に想像以上に、こいつらバカなんだ………?




 ぶつけた頭がグラグラとして、そのままアルセは気を失った。 






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