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63話 葬儀4 リブレside
しおりを挟む父親の葬儀にあらわれたアルセの姿に、怒りを爆発させたムゲーテが怒鳴り声をあげ… ムゲーテの母親と兄、リブレも一緒に止めたが、ムゲーテは言うことを聞かず、良くとおるかん高い声で大騒ぎし始めた。
「ムゲーテ!!」
いくらなんでも、これはマズい! オレの父上も、近くにいるのに?! ただでさえ父上は、醜聞で婚約破棄したアルセの従兄のムゲーテに、良い印象を持っていない。
そこでムゲーテの父親、クルシジョ子爵に説得してもらい、渋々父上にオレたちの結婚を、認めてもらったばかりだ…。
焦ったリブレは、ムゲーテを抑えようとするが… ムゲーテは聞く耳を持たなかった。
「アルセがお父様の言うことを聞いていたら、こんなことにはならなかったのに!! アンタのせいだ、尻軽アルセ―――ッ!!!」
「・・・っ」
ムゲーテ、今日はどうかしているぞ?! いつもはもっと冷静なのに… いくら父親が亡くなって悲しんでいても… いきなりコルティナ侯爵が、父親を殺したとか? 訳の分からないことを言い出して…?!
こんな大勢の前で騒ぎを起こしたら、礼儀を重んじる父上に、婚約を白紙に戻されてしまうかも知れない!
ただでさえ、クルシジョ子爵が亡くなって、喪が明けるまで結婚を、延期するつもりの父上を説得して… ムゲーテのお腹の子が産まれる前に、結婚しなければいけないのに?!
…リブレの心配など関係なく… ますます感情的になったムゲーテは、アルセへの暴言を止めようとした、グラーシア公爵にまで噛みつき始めた。
「あ… あなたは、 誰ですか…?! も… もしかして尻軽アルセの愛人?! だったら、口を出さないで下さい! これは、クルシジョ子爵家の問題ですから!!」
「なるほど… その気の強さは、アルセの従兄というだけはあるな? 私への無礼は許そう… だが、アルセへの侮辱は許さない!」
「・・・うっ!!」
グラーシア公爵の激しい怒りに触れ、ムゲーテはようやく口を閉じる気になったらしく、顔面を蒼白にして、あとずさった。
「ムゲーテ…?!」
よりにもよって… この場にいる人たちの中で、一番身分の高い貴族に… ケンカを売るなんて…! それこそ、グラーシア公爵はコルティナ侯爵なんかよりも、ずっと恐ろしい人なのに?!
公爵が放つ、猛々しいアルファの威圧感が…… 肌を突き刺すように、ビリビリとした脅威を感じる?!
近くにいたリブレの父親、マンディブラ伯爵がムゲーテの言葉を聞き、顔をしかめているのが視界に入る。
自分が何とかしなければ、本当にムゲーテと結婚出来なくなると、焦るリブレを裏切るかのように… 先代グラーシア公爵夫人が爆弾発言をした。
「あら、エスパーダ! あの子… 妊娠しているみたいよ?」
「…っ?!!!」
どうしよう…?! どうしよう…?! どうしよう…?! まだ父上に、ムゲーテがオレの子を妊娠していることを話してないのに?!
ああ… どうすればこの状況から逃げ出せるんだ?!
もうすぐ、オレの子どもが産まれるから… 学園を退学させて、ムゲーテとすぐに、結婚したいと父上に言えば… オレたちの結婚を、許してくれるだろうか? その前に… この状況自体が、醜聞になるのでは…? 父上が一番嫌いなやつだ…! どうしよう…?!!!
この時リブレは、自分が言うべき言葉が、本当にわからなくなっていた。
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