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55話 愛される身体

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 自分のせいで大ケガをしたエスパーダが心配で、真夜中にこっそり寝室に忍び込んだアルセは… その翌日になっても、エスパーダの自室から一歩も出ることが、できなくなってしまう。

 初めての性体験のせいか…? それとも愛するアルファと、“つがいちぎり”をかわわしたせいか…? 本来の発情周期しゅうきを狂わせて、数ヶ月に1度アルセを悩ませる、本格的な発情期へと突入してしまったからだ。


 ―――エスパーダの“つがい”になって2日目の夜。

「・・・・・・」
 元々… 僕の発情期の周期は、従弟のムゲーテや他のオメガに比べると、遅れることが多かったのになぁ…? 前回の発情期は… まだ、2ヵ月ぐらい前だったのに、僕の計算では次の発情期まであと、1か月半ぐらいあると思ってた。

 エスパーダの寝室に置かれた特大のベッドに、ポツン… と1人で座り、アルセは赤くれて一回り大きくなった、2つの乳首を見下ろして…
 フゥ―――ッ… と大きなため息をつく。

 ふいにエスパーダが、アルセの乳首を甘噛あまがみしながら、しみじみと語った言葉が、頭の中をよぎる。
『アルセ… 君の瞳が紅玉色ルビーレッドだからか、君は深紅しんくが似合うな…』
 乳首の周りにはエスパーダが付けた、深紅のバラの花びらのようなあとが、無数に散っていて… ポッ… とアルセの頬が赤くなる。

「ううっ… マズイ!! ダメダメ…!! エッチな記憶を、今思いだすのは禁止!」

 エスパーダの長大な性器を受け入れ続けた、アルセの身体の奥が、ヂクリ… とうずく。
 激しい情交じょうこうにおさまっている、発情熱がふたたび燃えだしそうになり、アルセはあわてて赤くなった顔の前でパタパタと手を振って、数時間前に体験した記憶を追い払う。

 自分の部屋ではないから、自分の服や下着は、真夜中に忍び込んだ時に着て来た物しか無い。(その服も自分の恥ずかしい体液で汚れている)
 そのため、ローブの代わりにエスパーダから借りた、白いシャツを肩から羽織はおり… エスパーダのうっとりする、良い匂いに包まれながら、アルセはそんなことを、グルグルと考えていた。

「それよりもさぁ……」
 エスパーダ様は、僕の濃厚なフェロモンが、すごくいっぱい出ているから… 『頭がクラクラするほど、誘惑される』 …と、言っていたけれど…?
 でも元婚約者のリブレは、僕の隣にいても全然、オメガのフェロモンを感じないから… 『お前って、本当はベータじゃないのか?!』 とバカにされるほど、僕は人よりフェロモンの量がすくないんだよね……?
 もちろん、きっちり抑制剤を飲んでいたのも、あるけど… でも発情期になると、人並みに、辛かったし…!

 アルセは首をかしげた。

「…本当になんでだろう?!」
 エスパーダ様は僕に対する、その手の反応が違っていて… 本当に戸惑とまどうばかりだよ?
 ………嬉しいけどね!


 アルセは知らなかった。
 負けず嫌いで気が強いアルセは、人一倍努力家で、学園の成績も飛びぬけて良いし、スラリと背が高く華やかで美しいオメガだと… 学園生たちの間で、密かに人気があったことを。

 そんなふうに、学園でもひときわ目立つオメガ、アルセの婚約者だったリブレは、学園のアルファたちに嫉妬されていた。

『リブレのような家柄以外は、何も良いところが無いやつに、アルセは勿体もったいない』
『平凡なアルファには、アルセは不釣り合いだよな?』 
『そのうち、リブレはアルセに捨てられるに、決まっているさ!』 

 …などと、学園で陰口をたたかれ、リブレは劣等れっとう感に苦しみ… そんな辛さを、何も知らない婚約者のアルセに当たり散らすことで、解消していたのだ。


 ずっと婚約者に傷つけられる理由を、アルセは自分に魅力がないせいだと、思い込んでいたのだ。

 エスパーダはアルセに対して、正しい反応をしているだけである。






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