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34話 グラーシア公爵家の母子2
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エスパーダは、自分自身の話はあまりしたがらない。 …だが、そのかわりにアルセの話を、よく聞きたがる。
『なぁアルセことをもっと知りたい! 私に話を聞かせてくれ!』
『僕の話… ですか? うう~ん… 家族との話なら、面白い話がたくさんありますから、それでも良いですか?」
『ああ、聞きたい!』
いつもそう言われて、アルセは自分の話をたくさんする。 おもに亡くなった家族との話を。
昨日の昼間も……
幼い頃から父に剣術を習っていたことと、弟はアルセよりも、のんびりとした性格だったが、とても賢かったことは、すでに話してしまっていたから… そこでアルセは、母親の話をすることにした。
『お母様も男性オメガだったのですが… 王都の中心街に2人で買い物に行くと、よく店の者に兄弟と間違われたりしました… 顔や雰囲気が僕とそっくりで、お母様は若く見えたので、 僕は恥ずかしかったけれど、お母様はいつも嬉しそうにしていました』
『ふふふっ… なるほど、アルセの紅玉色の瞳は、母上からもらった色か?』
『はい、そうです! 僕の母方に時々出る色だそうです… 髪は僕の方が赤みが強いけど… 母のはちみつ色の金髪は、本当に美しくて… 父の好みで… 少し長めにのばして…… それから……っ…』
そんなふうに家族の話をするうちに、アルセは寂しくなり、涙がこぼれるのを我慢できなくなる。
だから、いつも話の最後には泣いてしまうのだ。
普段から口数が少なく寡黙な質のエスパーダは、慰めの言葉をかけるのではなく… 涙が止まらなくなったアルセを、自分の膝にのせて抱きしめ、何度もキスをして泣きやむまで、黙って寄り添ってくれる。
夜会の会場内を、アルセはエスパーダと先代侯爵夫人とともに、コルティナ侯爵の元へ向かいながら… 小さな声でつぶやいた。
「僕は優しい、エスパーダ様が好きだ…!」
それに亡くなったお母様の代わりだからと… 社交界デビューをすることになった僕のために、たくさん知恵を絞って頑張ってくれた、お義母のことも大好き…!
だから、学園で僕に嫌がらせをし、暴力をふるったコルティナ侯爵の3男ジャベのように… 今度は、ジャベの父親コルティナ侯爵が、エスパーダ様やお義母様に権力を使って、嫌がらせを始めたらどうしよう?! エスパーダ様はグラーシア公爵家なら大丈夫だと言ってくれるけど… でも、それが一番怖い…! 僕はもっと、しっかりしないと!
社会的に何の力も無いアルセは、エスパーダのために何も出来ることは無いけど… それでも不安でおろおろと瞳を揺らすのは止めて、紅玉色の瞳に気力を込めて、顔をあげた。
『なぁアルセことをもっと知りたい! 私に話を聞かせてくれ!』
『僕の話… ですか? うう~ん… 家族との話なら、面白い話がたくさんありますから、それでも良いですか?」
『ああ、聞きたい!』
いつもそう言われて、アルセは自分の話をたくさんする。 おもに亡くなった家族との話を。
昨日の昼間も……
幼い頃から父に剣術を習っていたことと、弟はアルセよりも、のんびりとした性格だったが、とても賢かったことは、すでに話してしまっていたから… そこでアルセは、母親の話をすることにした。
『お母様も男性オメガだったのですが… 王都の中心街に2人で買い物に行くと、よく店の者に兄弟と間違われたりしました… 顔や雰囲気が僕とそっくりで、お母様は若く見えたので、 僕は恥ずかしかったけれど、お母様はいつも嬉しそうにしていました』
『ふふふっ… なるほど、アルセの紅玉色の瞳は、母上からもらった色か?』
『はい、そうです! 僕の母方に時々出る色だそうです… 髪は僕の方が赤みが強いけど… 母のはちみつ色の金髪は、本当に美しくて… 父の好みで… 少し長めにのばして…… それから……っ…』
そんなふうに家族の話をするうちに、アルセは寂しくなり、涙がこぼれるのを我慢できなくなる。
だから、いつも話の最後には泣いてしまうのだ。
普段から口数が少なく寡黙な質のエスパーダは、慰めの言葉をかけるのではなく… 涙が止まらなくなったアルセを、自分の膝にのせて抱きしめ、何度もキスをして泣きやむまで、黙って寄り添ってくれる。
夜会の会場内を、アルセはエスパーダと先代侯爵夫人とともに、コルティナ侯爵の元へ向かいながら… 小さな声でつぶやいた。
「僕は優しい、エスパーダ様が好きだ…!」
それに亡くなったお母様の代わりだからと… 社交界デビューをすることになった僕のために、たくさん知恵を絞って頑張ってくれた、お義母のことも大好き…!
だから、学園で僕に嫌がらせをし、暴力をふるったコルティナ侯爵の3男ジャベのように… 今度は、ジャベの父親コルティナ侯爵が、エスパーダ様やお義母様に権力を使って、嫌がらせを始めたらどうしよう?! エスパーダ様はグラーシア公爵家なら大丈夫だと言ってくれるけど… でも、それが一番怖い…! 僕はもっと、しっかりしないと!
社会的に何の力も無いアルセは、エスパーダのために何も出来ることは無いけど… それでも不安でおろおろと瞳を揺らすのは止めて、紅玉色の瞳に気力を込めて、顔をあげた。
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