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26話 公爵閣下の膝のうえ 

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 契約結婚について話し合った後、アルセは… なぜか、エスパーダのひざの上にいた。


「……エスパーダ様、これは恥かしいです」
 アルセはひそひそと、エスパーダの膝の上からつぶやいた。

「フフッ… こんなに頬を染めて、可愛い子だ! やはり、私の妻にはアルセが相応ふさわしい!」
 ニコリッ… と、端正たんせいな顔に笑みを浮かべて、エスパーダはチュッ… とアルセの唇にキスを落とした。

「ううっ…!」
 うわっ! 唇にキスされた?! うわっ! うわっ! まさか… こんなことになるなんてぇ…?! エスパーダ様と出会って、まだ、2度目だというのに… ほとんど初対面にひとしい人の、膝の上に座って抱き合うなんてぇ~…?!

 耳元でエスパーダに甘い言葉をささやかれたうえに、家族以外の異性アルファに、生まれて初めて唇にキスをされ、アルセは頬だけでなく… 全身が真っ赤に染まる。

 グラーシア公爵邸の応接間で、アルセは熱烈な恋人同士のように、エスパーダの膝の上で抱かれながら、叔父の前に座っていた。
 …いくら熱烈な恋人同士でも、礼儀作法にうるさい貴族なら、保護者の前で普通はこんな不作法なことはしないが…。


「当家としては、とても光栄なお話ですが… アルセはひどい醜聞しゅうぶん騒ぎを何度も起こして、学園を退学させなくては、ならなくなったようなオメガですよ? グラーシア公爵閣下のようなお方が… 何も、そのようなオメガをめとらなくとも……」
 ハンカチで額にきだす汗をふきながら、叔父はアルセを侮辱ぶじょくする言葉を並べる。

「それはっ…! うむっ……///////っ?!」
 叔父様が全部、ムゲーテにやらせてぇ……!!

 カッ… と腹を立てて、アルセが口を出そうとするが… チュウゥゥゥッ…! と長めのキスで、エスパーダに唇を吸われ、言葉をさえぎられる。

 アルセは真っ赤になって黙りこんだ。

 現クルシジョ子爵の叔父は、顔を強張らせて… エスパーダの膝の上で真っ赤に染まる、アルセの姿を見ていた。


 2人の契約結婚の話が合意にいたると、エスパーダは早速グラーシア公爵邸で、寮から運んで来たアルセの荷物を馬車から下ろし… その馬車の御者に、クルシジョ子爵への手紙をたくして帰らせた。

 エスパーダの手紙を読み、アルセの叔父はあわててグラーシア公爵邸へ訪れ… アルセをエスパーダから取り戻そうとしているのだ。


 今一番、インシエンソ王国で勢いのある権力者、コルティナ侯爵を怒らせたくないからである。






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