24 / 114
22話 再会3 エスパーダside
しおりを挟む竜血に導かれて出会い、紅玉色の瞳に心をひかれ、話してみたいと思ったのは本当だが…。
学園長から連絡を受け、急いでアルセに会いに来たのは、エスパーダに別の目的があったからである。
エスパーダはグラーシア公爵家が抱える秘密の闇に、逃げ場のないアルセを、取り込もうとしているのだ。
「・・・・・・」
傷つき裏切られたばかりのアルセに、私は付け込もうとしている… それが、卑劣で恥かしい行為だとわかっている。
だが… この機会をのがせば、自分の望みをかなえることは出来ないと、覚悟を決めた。
「今の状況を変えられる?! それは、どうすれば良いのですか?!」
「・・・っ」
大きな期待がこもった瞳でアルセに見あげられ、思わずエスパーダは視線をそらしたくなったが… 瞳を閉じて深呼吸を一度して耐えた。
「やはり… 難しいことなのですか?」
「ここでは話せない… 場所を変えよう」
エスパーダは足を上げて、石床に転がしたジャベを解放した。
「ううっ… クソッ… クソッ… クソッ…」
罵りながら… ずりずりとトカゲのようにはいずり、ジャベはエスパーダの側から離れると、よろよろと振り返りもせずに立ち去る。
「・・・っ」
悔しそうにグッ… と拳をにぎりしめて、アルセは黙ってジャベがその場を去るのを見送る。
オメガにしてはすらりと背が高い、アルセの優雅な後ろ姿は、エスパーダの瞳にはさびしげにうつった。
「行こう…!」
「はい、あの… あなたは何方ですか? 先日も助けていただいたのに、お名前を聞きのがしてしまって…」
おずおずとたずねるアルセに、エスパーダは苦笑した。
「そうか! まだ、名のっていなかったか…? 私はエスパーダ、グラーシア公爵だ」
怖がられるだろうか? 王都でこの名前を告げると、ほとんどのオメガは、怯えて逃げ出してしまうから…
「え?! あの、グラーシア公爵閣下ですか?! 建国神話に出て来る?」
「私の先祖は出ているが、私自身ではないけどな」
ああ、その強過ぎる竜血で、狂戦士のアルファを産み出す家系の、グラーシア公爵家だよ…!
「ああ、なるほど…! ハハハッ… そんな人だからかなぁ?」
気が抜けたらしく、力なく笑うと… なぜかアルセはエスパーダの背後をジッ… と見つめていた。
「ハハハッ……」
疲れた顔をしているが、先日のように怯えてはいないようだ…?
さすがにここで、怖がって気絶されるのは辛いからな……
エスパーダも力なく笑った。
8
お気に入りに追加
399
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる