竜血公爵はオメガの膝で眠る~たとえ契約結婚でも…

金剛@キット

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13話 叔父の言葉2

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 書斎しょさいの扉をたたき、アルセが中へ入ると… 執務机につき書類に目を通していた叔父が顔をあげて、柔和にゅうわな笑顔で迎えてくれた。

 兄弟だから当たり前なのだが、叔父が笑うと亡くなった父にそっくりで、アルセは時々ドキリッ…とすることがある。

 祖父から子爵位を継いだ時に引退したが、父は近衛騎士団の騎士だった時の名残なごりで… 身体は筋肉質で引き締まり背が高くガッチリとしていた。
 その一方、叔父は王宮で文官をしていた頃から、父に比べて身長が低くぽっちゃり体型で、持っている印象はかなり違う。
 だが、柔和な笑顔だけは同じなのだ。

「おや、アルセ… 何か用か?」

「はい! あの叔父様… ケガもえたので、僕はそろそろ学園に戻ろうと思います」

「ああ、その話か…!」
 叔父はニコニコと微笑んだ。

「綺麗に顔のあざも無くなったから… 叔父様、戻っても良いでしょう?」
 アルセは自分の顔が、叔父にも良く見えるように、執務机の前に立つ。

「本当だ!綺麗に治っているね… それよりもアルセ、お前の嫁ぎ先が決まったよ?」

「えええ―――っ?!」
 僕と結婚しても良いという相手が、本当にいるとは思わなかった!!

 絶望的だと思っていただけに、さらりと叔父に告げられ、アルセは心底驚く。

「だから、学園に戻る必要はないんだ… 先方はすぐにでも、お前を迎え入れたいと言って下さっているんだ」

「嘘でしょう?! 僕に結婚相手が見つかるなんて?! 信じられないよ!!」
 もしかして… その人、僕とすごく年が離れているんじゃないの?! まぁ、それでも… 醜聞しゅうぶんまみれの僕を嫁にもらってくれると言ってくれるなら、我がままは言えないけどね…

「身分も高いし立派な方だから… アルセ、お前も先方に感謝しなさい」

「ええ、それはわかっています… でも、僕は学園だけは、亡くなった父のためにも卒業したいから!」

「いや… お前が大ケガをしたと聞いて、これ以上は待てないと、先方がおっしゃっているんだよ… だから学園は諦めなさい」

「でも、今は最終シーズンだし、あと数ヶ月で卒業なんですよ?! 絶対に、僕は卒業したいです!」

「アルセ… 今のお前に縁談が来るだけでも、幸運だと理解しているのか? この話を逃したら、一生お前は嫁げないと、覚悟しなければいけないよ?! 本当にわかっているのか?!」
 それまで柔和だった叔父の態度が厳しいものとなり、アルセを説得すると言うよりも… 命令する口調にガラリと変わる。

「僕だって、わかっていますよ叔父様!」

「いや、お前は何もわかっていない… お前が子爵家にいるだけで、マンダルまで醜聞に巻き込まれそうになっているんだぞ?!」
 怒りをあらわに、叔父はドンッ…! と執務机をにぎりこぶしでたたき、アルセを威嚇いかくするようににらみつけた。

 マンダルとは叔父の長男で、アルファの後継者(将来のクルシジョ子爵)。 アルセより2歳年上の従兄で、今は王宮で文官をしている。


「マンダルお兄様が… 醜聞?! いったい、どういう意味ですか?!」
 嫌な予感がする…! もしかして… まさか?!

「もちろん、お前の恋人ではないかという、噂が出ているんだよ!」

「そ… そんなのデタラメだと、叔父様も知っているでしょう?!」

「お前が素直に、このまま嫁げば… すべて、問題は無くなるんだ! これ以上の口答えは許さないぞ、アルセ! 学園はあきらめろ!!」

「でも…っ!!」

「あきらめろ、アルセ!! 先週のうちに、学園の退学手続きは終わらせてある」

「なっ…?!」
 退学?! 僕が学園を退学しているって?! そんなの嘘だ―――っ?!!

 
 

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