英国紳士の溺愛

金剛@キット

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第4章 映画祭編

100話 ストーカー

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「こんなところに隠れていたのね兄さん! 探したのよ… あら、アーサーも一緒だったの?」

「やあ、ジョーン…アーサーが話したいと言っているんだよ」
 ニックは指を組み、もじもじと居心地が悪そうに、妹のジョーンを見る。

 アーサーがニックにジョーンを呼び出させたのだ。

「後は2人で話し合ってくれ… 僕は観客にもっと感想を聞かないと!!」
 逃げるように、ニックは控室を慌てて出て行く。

「まあ… 話ってなあに? 今日はとぉっても忙しいのよ? でも許してあげるわぁ」
 アーサーの肩を撫でながら、誘惑しようと豊満な胸をつき出し唇をとがらせるジョーン。 
 
 だが、アーサーは… ブルーグレーの瞳で冷ややかにジョーンを見下ろすだけで、誘惑にピクリとも反応しなかった。

「調査会社に依頼し、君がバカンスシーズンからずっと、私をストーキングしていた証拠をそろえてある」

「なっ…?!」

 顔をこわばらせるジョーンからゆったりした動作で離れ、アーサーは触れられた肩から、ありもしないゴミを指先ではらう。

「あの調査報告書を誰に見せるか迷っていてね… ジョーン?」

「でも! あ、あなたは愛人に強迫されて… 私を守るために本当の気持ちを隠して… 私を拒絶する“フリ”をしていたのでしょう?」
  アーサーの表情が一切消え、部屋の温度が急激に下がった気がしたジョーンは、自分の両腕を抱きしめた。

「彼と出会う前から、君とは付き合えないとハッキリ伝えたはずだ!」

「嘘! そんなの嘘だわ! だってルイスがそう言ったのよ?!」
 ジョーンはアーサーから少しでも離れようと壁際まで下がる。

 アーサーはポケットに手を入れ、その体格で威圧いあつしジリジリとジョーンを追い詰める。

「ルイス伯父は君の愛人だろう? 2人で私をはめて何を企んでいる?」
 意地悪な言い方をするアーサーにジョーンは青ざめた。

「…何を言っているの?! 意味が分からないわ?」

「君が最初の夫と婚約した頃、ギルボーンハウスで開かれたパーティーを抜け出し、死んだアダムの寝室でルイス伯父と君がみだらな声を上げていたのは、覚えているか?」

「何かの…間違いよ! そんな…」

「隣の部屋が私の寝室だったから… 窓を開けて寝ていたら、誰もいないはずの死んだアダム部屋から淫らな声が聞こえて、とても驚いたよ?」
 隠し扉で繋がるアダムの寝室は、現在は蘇芳の寝室になっている。

「君はあの頃からずっと叔父と、関係していると調査報告にあった」

「違うの! …悪いのは彼よ! ルイスが無理やり…っ!」

「見えすいた嘘はたくさんだ!! 計画をすべて話せ!!」

「ひっ…っ!」
 ドンッと壁を殴り、アーサーが威嚇いかくすると、ジョーンが飛びはねる。

「すべて話せ、ジョーン!」

「知らないわ!! 何の話?!」

「調査報告にもう一つ興味深い内容があった、アレクサンダー・カナリスと不倫関係にあると… これが暴露されれば、ナイツベリーの貴婦人とは2度と呼ばれないだろうな…? さぁジョーン、良く考えろ!」

 軽蔑を隠さず不快そうにアーサーは眉間にしわを寄せて離れると… ずるずると顔を隠し、ジョーンは床に座り込む。

「…乱交映像を撮ってパパラッチに渡すと脅せば… 自分から消えると思ったのよ」
 美しくセットしてあった髪が乱れ、ジョーンの顔にかぶさり、若々しかった姿がいっきに何歳も年をとったように見えた。

「まだ無名の新人俳優蘇芳マコトに、興味を持つパパラッチはいないさ」

「だから… あなたの愛人がB.D続編の主演俳優だと先に噂を流したから… それに実際に彼はブレイカースタイルで現れたから、噂を流すのは簡単だったわ… もう、パパラッチたちも追い始めているし…」

 アーサーは渋い顔になる。
<クソッ! 蘇芳を守りたくて、私が作った新人俳優マコト・ワダの作り話が、真実味を出してしまったのか?! 何てことだ!!>

「もしも蘇芳マコトの映像が少しでも流出すれば、アレックスと君の淫らな乱交パーティーの映像も流出するだろう! 覚悟すると良い! 私は中途半端なことはしないからな!!」

「嘘… 嘘でしょう?! どうやってそんな映像を…?!」
 ぶるぶると震えながら、おびえた顔でジョーンはアーサーを見あげた。

「彼の映像を全部、今すぐ、私に渡せ! どこにある?」

「ここに…」
 ぐっと小さなバッグを、ジョーンが握りしめる。

「今日、脅すつもりだったのか?!」



 ジョーンからバッグを取り上げ、アーサーはUSBメモリを奪った。






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