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第4章 映画祭編
97話 ニック・カールトンの映画
しおりを挟むナイツベリーの警察で、アーサーに付き添われ警察で被害届けを出した。
そのあと、ニック・カールトン監督の新作映画がプレミアム上映される会場へ、昨夜のパーティーと同様にアーヴィと蘇芳(若手俳優マコト)は、ハンソン姉妹のエスコート役として入場する。
ハンソン親子とオリバーは会場の真ん中辺りに座り、アーサーと蘇芳は前の方へ移動しスポンサー席に座る。
ニック・カールトン監督の、新作映画の内容は…
複雑な生い立ちの、金色の瞳に金髪の… 天使の姿をした悪魔のような美青年が、次々と男たちをたらし込んで、自分の思い通りに操り、利用価値が無くなったら順番に殺してゆく、サイコ・サスペンスだ。
映画のストーリーが進んでゆくうちに…
コテージで見たアダム(死んだアーサーの兄)の日記に書いてあった内容とよく似ているストーリーだと気づき、蘇芳は首をかしげる。
特に下品でヤラシイ言葉遣いなどは、日記そのもので… さすがにアダムは、人を殺してはいないだろうけれど。
こっそり蘇芳は、隣席のアーサーを盗み見ると、険しい表情でスクリーンを睨むようにじっと見ていた。
スクリーンにエンドクレジットが流れ始めた頃、蘇芳はアーサーの耳元でひそひそと尋ねてみると…
「主人公の青年が、アダムのイメージと重なって、見えるのですが…?」
「間違いなくアダムがモデルだろうな… ニックはアダムの学友だったから」
「ええ?」
「それも一方的に、ニックがアダムに恋慕していた」
「……っ!」
人前なのを忘れて、余計なことを口走りそうで、蘇芳は思わず自分の掌で口を隠す。
「ギルボーン家の禁忌をいくつかブチ込み、殺人鬼に恋敵(学友に似た登場人物)を殺させて、昔の鬱憤を晴らすとは… これは公私混同などというレベルではない、ニック自身の願望をそのまま映像にしたような映画だ」
アーサーは意地悪そうな笑みを浮かべる。
「正直… すごく気持ちが悪かったです… ただでさえサイコ・サスペンスは苦手なのに…」
青い顔で蘇芳は、複雑そうにアーサーを見つめた。
「私もゾッとした、だがこの映画はヒットするだろう… 間違いなく!」
会場から2人でロビーに出ると…
「アーサー!」
アーサーの親友、カルロに呼び止められた。
大男2人は何やらアイコンタクトを取り…
「私はニックに挨拶してくる …蘇芳から目を離すなよ、カルロ!」
「はいはい、仰せのままに!」
胸に手を当て応えるカルロに、アーサーは蘇芳をあずけ、足早に離れてゆく。
ムッとしながら蘇芳は、広い背中を見送った。
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