85 / 106
第4章 映画祭編
84話 カルロ・バレッティ
しおりを挟むジョーンと一緒に戻って来たアーサーに…
「大親友よ! 私を慰めてくれ!!」
「だから臭い芝居は止めろ、カルロ!」
大男を見るアーサーの嫌そうな顔がオカシクて、蘇芳はまた吹き出す。
この大男こそアーサーのライバルで親友、元ビジネスパートナーだった、あの"カルロ・バレッティ" なのだと知り、蘇芳は笑みが零れる。
元ジャック・ブレイカーのアレックスは怒気を削がれ、フラフラと黙って去ってゆく。
「ふぅ~… やっと解放されたよ…!」
「彼は既に酔っているようだ… 良い俳優なのに酒癖が悪すぎるな…」
面倒そうにため息をつくニックをチラリと見て、カルロがふざけるのをピタリと止めた。
ヨロケながら歩くアレックスの後ろ姿を観察するカルロを見つめ…
新作映画の話から、アレックスの気を逸らすために、機転を利かせカルロは割って入ったのだと、蘇芳はようやく気付く。
「・・・・・・」
蘇芳が思わず感嘆していると…
カルロと目が合い、パチンッ… と、グリーンの瞳でウインクされる。
「カルロ・バレッティだ!」
気さくに自己紹介をして、カルロは蘇芳に大きな手を差し出す。
「初めまして、お会いできて光栄です… 蘇… マコト・ワダです!」
カルロの大きな手を取り、蘇芳はギュッ… と握手をし自分も名乗ろうとして…
本名を言いそうになるが、コスプレイヤーの芸名? で言い直す。
蘇芳的には本名が言いたかったが仕方ない。
「マコト? そうか、ふふふっ… 君にずっと会いたかったよ 良い指輪だな」
カルロはアーサーを見てから、意味深長に蘇芳の左手を見る。
すでにカルロは、蘇芳の素性を知っているようだ。
「それでジョーンとは、交際を再開するのか、アーサー?」
背後から親し気に介入する声がして…
蘇芳は声の主に振り向いた。
「…ルイス伯父さん」
アーサーは表情を消し、声の主を見つめる。
「ジョーン! そうなのか?!」
瞳をキラキラとさせた天才映画監督ニックは、天然ボケなトコロがある。
「兄さんたら、詮索好きね! そういう大切なお話は2人だけの時にするつもりよ」
ニックの妹ジョーンは、若いハンソン姉妹のように唇を尖らせ甘えるように、自分よりも若いアーサーの腕にしがみつく。
「その様子だと、今年中に婚約の話が聞けそうだな? コレでお前の伯父オリバーに、花嫁候補を見つけろとウルサク言われなくて済む」
アーサーにとって、オリバーが父方の伯父なら、ルイスは母方の伯父である。
伯父たちは学友だった。
「みんなをからかうのは止めてください伯父さん、本気にされそうだ」
ジョーンの手を嫌そうに自分の腕から剥ぎ取り、さりげなく離れるアーサー。
「お前が結婚しないからだ、暇になったら声を掛けてくれアーサー、後で話がある」
「ええ、分かりましたルイス伯父さん」
アーサーは表情を消して、ルイスが悠然と去る姿を眺めた。
「ほらジョーン、ほらアントニオ(カルロ弟)が来た! 僕たちは失礼するよ… ああ、それとマコトはオーディション忘れないで!!」
「ああもう! 兄さんったら」
ニックに連れられて名残惜しそうに去るジョーン。
「マコトにオーディション?」
眉間にシワを寄せ、アーサーは蘇芳を見る。
「アナタは本当に悪い人です!!」
赤い顔で蘇芳は、自分にコスプレをさせて困った立場に追い込んだアーサーをジロリと睨む。
「何の話だ蘇芳?」
「知りません!」
腕を組んでプリプリと怒る蘇芳。
そんな2人のやり取りを、ニヤニヤと面白そうに眺めるカルロ。
0
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
時々女体化する話〜蜂に刺されたら女の子になりました〜 『男でも女でもお前が好きだ!大好きだ!』 (BL/TS)
Oj
BL
特殊な蜂に刺されたことで、女の子になったりならなかったりする話。全体的に下品なギャグ小説です。時々エロが入りますが、女体でイチャイチャしたり男同士でイチャイチャしたりします。基本BLです。
男同士の恋愛に満足していたり戸惑ったりしているところにパートナーが女体化して益々複雑化する関係を楽しんでいただけたらと思います。
第三部までありカップリングが別れています。
第一部 木原竹彪(キハラタケトラ)✕黒木彩葉(クロキイロハ)…大学生、同棲中の同性カップル
第二部 木村梅寿(キムラウメトシ)✕柏木楓(カシワギカエデ)…高校生、同性カップル
第三部 木村松寿(キムラマツトシ)✕佐々木紅葉(ササキモミジ)…大学生、竹彪と彩葉の友人
でお届けします。
『18歳未満閲覧禁止』という作品の中にこちらの18禁短編を載せています。
※女体化するキャラ全員、女性の月のものがきます。苦手な方はご注意下さい
学祭で女装してたら一目惚れされた。
ちろこ
BL
目の前に立っているこの無駄に良い顔のこの男はなんだ?え?俺に惚れた?男の俺に?え?女だと思った?…な、なるほど…え?俺が本当に好き?いや…俺男なんだけど…
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
俺と父さんの話
五味ほたる
BL
「あ、ぁ、っ……、っ……」
父さんの体液が染み付いたものを捨てるなんてもったいない。俺の一部にしたくて、ゴクンと飲み込んだ瞬間に射精した。
「はあっ……はー……は……」
手のひらの残滓をぼんやり見つめる。セックスしたい。セックスしたい。裸の父さんに触りたい。入れたい。ひとつになりたい。
■エロしかない話、トモとトモの話(https://www.alphapolis.co.jp/novel/828143553/192619023)のオメガバース派生。だいたい「父さん、父さん……っ」な感じです。前作を読んでなくても読めます。
■2022.04.16
全10話を収録したものがKindle Unlimited読み放題で配信中です!全部エロです。ボリュームあります。
攻め×攻め(樹生×トモ兄)、3P、鼻血、不倫プレイ、ananの例の企画の話などなど。
Amazonで「五味ほたる」で検索すると出てきます。
購入していただけたら、私が日高屋の野菜炒め定食(600円)を食べられます。レビュー、★評価など大変励みになります!
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる