英国紳士の溺愛

金剛@キット

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第4章 映画祭編

82話 カールトン邸

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 パーティーはカールトン邸 主催者のニック(ニコラス)・カールトン監督の家で開かれた。

 ロンドンのギルボーンハウスよりも、上を行く豪邸だ!! と蘇芳が内心たじろいでいると…

「昔は公爵家の別邸だったが… 貧しい家に生まれたモーリス・カールトン監督が映画で成功して、生まれ故郷でもあるこのナイツベリーで、一番格の高い屋敷を手に入れたというのだから、栄枯盛衰の見本のような場所だな」
 アーサーの伯父オリバーが、恋人のエリザベスとそんな話をしていた。

 ニック・カールトン監督とその妹のジョーンに挨拶が済むと、オリバーはハンソン親子を連れてその場を去っていく。
 ハンソン姉妹は、アーサーと別行動となるのが、スゴク残念そうにしていたが…
 エスコート役と言っても、アーサーの場合は仕事で来ているコトをオリバーは知っていて、気を利かせたのだ。
 
 蘇芳に対しては、アーサーにひっつく害虫扱いだが…
 子供のいない独身主義者のオリバーは、ギルボーン家の跡継ぎである甥のアーサーを大切にしているのだ。 

<…やるコトは少々ズレてはいるけれど、オリバー氏がアーサーを息子のように愛しているのは分かるよ…>
 オリバーの後ろ姿を見送りながら、蘇芳はようやく緊張を少し緩められると、小さなため息をホッ… とついた。


「悪いが蘇・・ マコト、一通り知人に挨拶してくる、何ならサリー嬢と一緒にいてはどうだ?」

「…うっ、いえ1人で平気です!」
 あのキラキラ光る眼でウットリ見つめられるのはスゴク、気マズイのだ。

 どうやらサリー嬢はいわゆるオタクで、まくしたてるようにその手の話を次から次へと全力疾走するみたいに話すから、蘇芳の脳内は、ハテナだらけでヘトヘトになってしまう。

「あははは…」
<彼女… なんとなく僕の大親友直輝クンと気が合いそうだよね?!> 



 軽食を摘まみながら、蘇芳は離れたところからアーサーの様子をチラチラと眺めていると、最初に挨拶した主催者の妹ジョーンが、アーサーに豊満な胸をギュッ… と押し付け、腕にまとわりつき2人で部屋から出て行くのを目撃してしまった。

「あっ…!」
 ウッカリ蘇芳は、小さな叫び声を上げてしまう。
 
「モテル男は大変だ! 夏の間は妹の恋人だったのに、冬にはもう別の誰かがいるなんて僕には無理だな」

「・・・っ」
 唐突に蘇芳は誰かに話しかけられ、息を呑む。

 一方的にぺらぺらと、こちらが聞いていなくても喋り続ける男の顔を蘇芳が確認すると…
 相手はなんと、主催者のニック・カールトン監督だった。

「監督…?」
<いや、この監督自身も気になるけど、それより今 …アーサーの恋人だったような言い方しなかった?! 監督の妹ジョーンが?!>

「それより、君!! "ブレイカースタイル" だね?」
 少し太り気味で若いのに髪が薄くなりかけているが、蘇芳と目線の高さがほとんど同じの監督が茶色い瞳を子供のように輝かせる。


「…友人のステファノがどうしてもと言うので」
<ああ、ヤッパリこの人も、僕のコスプレ姿に食い付いたか>
 蘇芳は渋い顔をする。


「ああ、ステファノね!! 彼は元気?」

 セレブ御用達、ビューティー・サロンの経営者である、ステファノもアーサーと同じぐらい有名人だから、監督が知り合いでも不思議ではない。

「ええ監督、元気すぎるぐらいだと思いますよ… 本当に!」
<ちょっと迷惑なほど!!>
 アーサーのパートナーなら当然だと押し切られ、派手なコスプレ姿を強制的にさせられて、心の中でちょっとダケ蘇芳は毒を吐いた。


「僕のコトはニックと呼んでくれ」
「はい、ええ~と、ニック」

 監督は満足そうにうなずく。

「実は "B.D"ブレークダウン の続編を考えているんだ、父が急逝したせいで計画を中断していたが、僕もようやく撮る自信が出て来たから… 13年目にしてやっとだよ!」

 さすがの蘇芳も興奮した。
 映画祭に来る前に直輝と一緒に、ブレイカースタイルの元となった映画を、見てから来たのだ。(ステファノからDVDを借りた。)

<…直輝とステファノに教えないと!>


「それは楽しみです!」
「マコトも俳優ならオーディションを受けるとイイよ」

 胸がドクンッと跳ね、顔が強張る。
「…いえ、僕は… 未熟なので」

「君の立ち姿は良いね… 凛々しくて、端正で… 何か武道をやっているのかな?」

「たぶん空手をやっているせいでしょう」
<…立ち姿ダケでそんなコトも分かるのか?>


「良いねぇ」

「・・・っ!」
 ねっとりと身体を嘗めるように見つめられ赤くなる蘇芳。


 


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