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第3章 指輪編
66話 待ち時間
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ステファノ特製の全身ケアが完了し、ドレスアップした蘇芳はサロンのラウンジで紅茶を飲みながら、課題の本を読んでいた。
課題と言っても学校のではなく、アーサーに渡された課題だ。
最近はデジタル版の新聞も毎日読むようになった。
読んでる本の上にカクテルを差し出され、蘇芳は差し出した相手を見上げると…
若くてハンサムな見知らぬ男がいた。
「どうぞ、美味しいよ」
年は蘇芳より4,5歳ぐらい上で、ブランド物のスーツをオシャレに着崩し遊び慣れてる感を漂わせた男だ。
「アルコールは飲まないので」
蘇芳は身体の向きを変え、読書を再開する。
「軽いのだから平気さ! …ほら飲めばわかるって」
再び読書を邪魔するようにグラスを押し付けられ、蘇芳は仕方なく受け取った。
「この後…食事に行こうよ、近くに良い店があるんだ!」
「迎えが来るのを待っているので」
許しを得ずに馴れ馴れしく男は隣りに座り、蘇芳の服をジロジロ見てニヤつく。
「今夜は何処のパーティーに出るつもりだい? 友達とは会場で合流すれば良いじゃないか!」
「さぁ…知りません、ここで待つと約束してるので」
こういう時はいつも、サロンのスタッフが助けてくれるが、今日は忙しいのか、ラウンジには蘇芳と男以外いなかった。
「そうか…残念だな、でもカクテルは飲んでよ! 本当に美味しいから」
<…良かった! 諦めてくれそうだうだ>
一応、男の顔を立て、飲むフリだけしておこうと蘇芳はグラスに口を付けようとするが…
背後から伸びて来た大きな手が、カクテルを蘇芳から取り上げ、隣りのテーブルにコトンッ… と置く。
「アーサー!」
慌てて背後を見あげ、カクテルを取り上げた人物がアーサーだと確認すると、蘇芳はホッ… とため息をつく。
「待たせたな…蘇芳」
独占欲を隠そうとせず、蘇芳の首筋から耳までを、アーサーは男に見せつけるように、長い指の背でゆっくりと愛撫する。
「……っ!」
真っ赤になった蘇芳は、今すぐ貪りたいと言いたげな、アーサーの情欲の籠った目と合い、頬の赤みが増々強くなってしまう。
「あっ!」
男は慌てて蘇芳の隣りから立ち上がり、ヨロヨロと一歩離れる。
焦る男の姿はどれだけオシャレに着飾っていても、礼装のアーサーに比べると、蘇芳の目には酷く貧弱に映った。
「Mr.ワーグマンお父上はお元気ですか? 先日ニューデリーで事故に遭われたと聞きましたが?」
冷たい目で男を威嚇しながら、アーサーは蘇芳の項を撫でる。
「は、はい! Mr.ギルボーン! あ… あの… 失礼します!」
慌てて立ち去る男の背中を見つめて、蘇芳はアーサーに尋ねた。
「あの人、アナタの知り合いですか?」
蘇芳の視線を遮るようにアーサーは立つ。
「性悪の小悪魔め! 天使を真似て世の男を誑かす気だな?」
ヒドイ言われように反抗する間も無く、蘇芳は項を掴まれ猛々しくアーサーに唇を貪られる。
「……んんっ…?!!!」
リックの運転する車でゼフィロスへ移動中、怒り狂うアーサーに説教をされ、蘇芳はキスで腫れた唇を尖らせた。
「考えす過ぎですよ! カクテルにドラッグが入ってたなんて」
呆れる蘇芳を、アーサーはジロリと睨んだ。
「知らない人間から、飲み物を受け取るな! 席を外し目を離した物も、けして口に入れるな! 蘇芳、コレは常識だ!」
<…あんな場所で激しいキスをする人の方がずっと非常識だと思うけどね?!>
心の中で罵る蘇芳も、ステファノに声を掛けられるまで、アーサーとのキスに夢中になっていた。
「初対面で同性ですよ?」
ガミガミと説教をされ続け、蘇芳は癇癪を爆発させそうになっていた。
「初対面の人間に、美味いからとイキナリ酒を押し付ける男でも警戒は不要か?」
「…確かにソレは‥ 無礼な人だと思ったけれど… でも彼は諦めかけ…て…」
アーサーが蘇芳の耳元で囁く。
「私の忠告を聞かなければ、次は唇が腫れるダケでは済まさないからな?!」
耳を甘噛みされながら、太ももの付け根をキワどく撫でられ感じてしまい、蘇芳は赤い顔で息を吞む。
「リムジンではないから、少し狭いが…」
機動力重視のアーサーは当然、滅多にリムジンは使わない。
蘇芳は慌ててアーサーの手を掴み愛撫を止めさせる。
「わ‥わかりました! 気を付けます!」
アーサーは何事も無かったように、涼しい顔で蘇芳からサッ… と離れる。
<…腹黒意地悪大魔王―――っ!!!!!>
心の中、大声で蘇芳は叫んだ。
課題と言っても学校のではなく、アーサーに渡された課題だ。
最近はデジタル版の新聞も毎日読むようになった。
読んでる本の上にカクテルを差し出され、蘇芳は差し出した相手を見上げると…
若くてハンサムな見知らぬ男がいた。
「どうぞ、美味しいよ」
年は蘇芳より4,5歳ぐらい上で、ブランド物のスーツをオシャレに着崩し遊び慣れてる感を漂わせた男だ。
「アルコールは飲まないので」
蘇芳は身体の向きを変え、読書を再開する。
「軽いのだから平気さ! …ほら飲めばわかるって」
再び読書を邪魔するようにグラスを押し付けられ、蘇芳は仕方なく受け取った。
「この後…食事に行こうよ、近くに良い店があるんだ!」
「迎えが来るのを待っているので」
許しを得ずに馴れ馴れしく男は隣りに座り、蘇芳の服をジロジロ見てニヤつく。
「今夜は何処のパーティーに出るつもりだい? 友達とは会場で合流すれば良いじゃないか!」
「さぁ…知りません、ここで待つと約束してるので」
こういう時はいつも、サロンのスタッフが助けてくれるが、今日は忙しいのか、ラウンジには蘇芳と男以外いなかった。
「そうか…残念だな、でもカクテルは飲んでよ! 本当に美味しいから」
<…良かった! 諦めてくれそうだうだ>
一応、男の顔を立て、飲むフリだけしておこうと蘇芳はグラスに口を付けようとするが…
背後から伸びて来た大きな手が、カクテルを蘇芳から取り上げ、隣りのテーブルにコトンッ… と置く。
「アーサー!」
慌てて背後を見あげ、カクテルを取り上げた人物がアーサーだと確認すると、蘇芳はホッ… とため息をつく。
「待たせたな…蘇芳」
独占欲を隠そうとせず、蘇芳の首筋から耳までを、アーサーは男に見せつけるように、長い指の背でゆっくりと愛撫する。
「……っ!」
真っ赤になった蘇芳は、今すぐ貪りたいと言いたげな、アーサーの情欲の籠った目と合い、頬の赤みが増々強くなってしまう。
「あっ!」
男は慌てて蘇芳の隣りから立ち上がり、ヨロヨロと一歩離れる。
焦る男の姿はどれだけオシャレに着飾っていても、礼装のアーサーに比べると、蘇芳の目には酷く貧弱に映った。
「Mr.ワーグマンお父上はお元気ですか? 先日ニューデリーで事故に遭われたと聞きましたが?」
冷たい目で男を威嚇しながら、アーサーは蘇芳の項を撫でる。
「は、はい! Mr.ギルボーン! あ… あの… 失礼します!」
慌てて立ち去る男の背中を見つめて、蘇芳はアーサーに尋ねた。
「あの人、アナタの知り合いですか?」
蘇芳の視線を遮るようにアーサーは立つ。
「性悪の小悪魔め! 天使を真似て世の男を誑かす気だな?」
ヒドイ言われように反抗する間も無く、蘇芳は項を掴まれ猛々しくアーサーに唇を貪られる。
「……んんっ…?!!!」
リックの運転する車でゼフィロスへ移動中、怒り狂うアーサーに説教をされ、蘇芳はキスで腫れた唇を尖らせた。
「考えす過ぎですよ! カクテルにドラッグが入ってたなんて」
呆れる蘇芳を、アーサーはジロリと睨んだ。
「知らない人間から、飲み物を受け取るな! 席を外し目を離した物も、けして口に入れるな! 蘇芳、コレは常識だ!」
<…あんな場所で激しいキスをする人の方がずっと非常識だと思うけどね?!>
心の中で罵る蘇芳も、ステファノに声を掛けられるまで、アーサーとのキスに夢中になっていた。
「初対面で同性ですよ?」
ガミガミと説教をされ続け、蘇芳は癇癪を爆発させそうになっていた。
「初対面の人間に、美味いからとイキナリ酒を押し付ける男でも警戒は不要か?」
「…確かにソレは‥ 無礼な人だと思ったけれど… でも彼は諦めかけ…て…」
アーサーが蘇芳の耳元で囁く。
「私の忠告を聞かなければ、次は唇が腫れるダケでは済まさないからな?!」
耳を甘噛みされながら、太ももの付け根をキワどく撫でられ感じてしまい、蘇芳は赤い顔で息を吞む。
「リムジンではないから、少し狭いが…」
機動力重視のアーサーは当然、滅多にリムジンは使わない。
蘇芳は慌ててアーサーの手を掴み愛撫を止めさせる。
「わ‥わかりました! 気を付けます!」
アーサーは何事も無かったように、涼しい顔で蘇芳からサッ… と離れる。
<…腹黒意地悪大魔王―――っ!!!!!>
心の中、大声で蘇芳は叫んだ。
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