英国紳士の溺愛

金剛@キット

文字の大きさ
上 下
67 / 106
第3章 指輪編

66話 待ち時間

しおりを挟む
 ステファノ特製の全身ケアが完了し、ドレスアップした蘇芳はサロンのラウンジで紅茶を飲みながら、課題の本を読んでいた。

 課題と言っても学校のではなく、アーサーに渡された課題だ。

 最近はデジタル版の新聞も毎日読むようになった。


 読んでる本の上にカクテルを差し出され、蘇芳は差し出した相手を見上げると…
 若くてハンサムな見知らぬ男がいた。


「どうぞ、美味しいよ」

 年は蘇芳より4,5歳ぐらい上で、ブランド物のスーツをオシャレに着崩し遊び慣れてる感を漂わせた男だ。

「アルコールは飲まないので」

 蘇芳は身体の向きを変え、読書を再開する。

「軽いのだから平気さ! …ほら飲めばわかるって」

 再び読書を邪魔するようにグラスを押し付けられ、蘇芳は仕方なく受け取った。


「この後…食事に行こうよ、近くに良い店があるんだ!」

「迎えが来るのを待っているので」

 許しを得ずに馴れ馴れしく男は隣りに座り、蘇芳の服をジロジロ見てニヤつく。


「今夜は何処のパーティーに出るつもりだい? 友達とは会場で合流すれば良いじゃないか!」

「さぁ…知りません、ここで待つと約束してるので」

 こういう時はいつも、サロンのスタッフが助けてくれるが、今日は忙しいのか、ラウンジには蘇芳と男以外いなかった。


「そうか…残念だな、でもカクテルは飲んでよ! 本当に美味しいから」

<…良かった!  諦めてくれそうだうだ> 

 一応、男の顔を立て、飲むフリだけしておこうと蘇芳はグラスに口を付けようとするが…
 背後から伸びて来た大きな手が、カクテルを蘇芳から取り上げ、隣りのテーブルにコトンッ… と置く。


「アーサー!」

 慌てて背後を見あげ、カクテルを取り上げた人物がアーサーだと確認すると、蘇芳はホッ… とため息をつく。


「待たせたな…蘇芳」

 独占欲を隠そうとせず、蘇芳の首筋から耳までを、アーサーは男に見せつけるように、長い指の背でゆっくりと愛撫する。

「……っ!」
 真っ赤になった蘇芳は、今すぐ貪りたいと言いたげな、アーサーの情欲の籠った目と合い、頬の赤みが増々強くなってしまう。

「あっ!」

 男は慌てて蘇芳の隣りから立ち上がり、ヨロヨロと一歩離れる。

 焦る男の姿はどれだけオシャレに着飾っていても、礼装のアーサーに比べると、蘇芳の目には酷く貧弱に映った。


「Mr.ワーグマンお父上はお元気ですか? 先日ニューデリーで事故に遭われたと聞きましたが?」

 冷たい目で男を威嚇しながら、アーサーは蘇芳の項を撫でる。


「は、はい! Mr.ギルボーン! あ… あの… 失礼します!」

 慌てて立ち去る男の背中を見つめて、蘇芳はアーサーに尋ねた。


「あの人、アナタの知り合いですか?」

 蘇芳の視線を遮るようにアーサーは立つ。


「性悪の小悪魔め! 天使を真似て世の男を誑かす気だな?」

 ヒドイ言われように反抗する間も無く、蘇芳は項を掴まれ猛々しくアーサーに唇を貪られる。

「……んんっ…?!!!」





 リックの運転する車でゼフィロスへ移動中、怒り狂うアーサーに説教をされ、蘇芳はキスで腫れた唇を尖らせた。


「考えす過ぎですよ! カクテルにドラッグが入ってたなんて」

 呆れる蘇芳を、アーサーはジロリと睨んだ。


「知らない人間から、飲み物を受け取るな! 席を外し目を離した物も、けして口に入れるな! 蘇芳、コレは常識だ!」

<…あんな場所で激しいキスをする人の方がずっと非常識だと思うけどね?!>

 心の中で罵る蘇芳も、ステファノに声を掛けられるまで、アーサーとのキスに夢中になっていた。


「初対面で同性ですよ?」

 ガミガミと説教をされ続け、蘇芳は癇癪を爆発させそうになっていた。


「初対面の人間に、美味いからとイキナリ酒を押し付ける男でも警戒は不要か?」

「…確かにソレは‥ 無礼な人だと思ったけれど… でも彼は諦めかけ…て…」

 アーサーが蘇芳の耳元で囁く。
「私の忠告を聞かなければ、次は唇が腫れるダケでは済まさないからな?!」

 耳を甘噛みされながら、太ももの付け根をキワどく撫でられ感じてしまい、蘇芳は赤い顔で息を吞む。


「リムジンではないから、少し狭いが…」

 機動力重視のアーサーは当然、滅多にリムジンは使わない。

 蘇芳は慌ててアーサーの手を掴み愛撫を止めさせる。


「わ‥わかりました! 気を付けます!」

 アーサーは何事も無かったように、涼しい顔で蘇芳からサッ… と離れる。





<…腹黒意地悪大魔王―――っ!!!!!>



 心の中、大声で蘇芳は叫んだ。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

時々女体化する話〜蜂に刺されたら女の子になりました〜 『男でも女でもお前が好きだ!大好きだ!』 (BL/TS)

Oj
BL
特殊な蜂に刺されたことで、女の子になったりならなかったりする話。全体的に下品なギャグ小説です。時々エロが入りますが、女体でイチャイチャしたり男同士でイチャイチャしたりします。基本BLです。 男同士の恋愛に満足していたり戸惑ったりしているところにパートナーが女体化して益々複雑化する関係を楽しんでいただけたらと思います。 第三部までありカップリングが別れています。 第一部 木原竹彪(キハラタケトラ)✕黒木彩葉(クロキイロハ)…大学生、同棲中の同性カップル 第二部 木村梅寿(キムラウメトシ)✕柏木楓(カシワギカエデ)…高校生、同性カップル 第三部 木村松寿(キムラマツトシ)✕佐々木紅葉(ササキモミジ)…大学生、竹彪と彩葉の友人 でお届けします。 『18歳未満閲覧禁止』という作品の中にこちらの18禁短編を載せています。 ※女体化するキャラ全員、女性の月のものがきます。苦手な方はご注意下さい

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

学祭で女装してたら一目惚れされた。

ちろこ
BL
目の前に立っているこの無駄に良い顔のこの男はなんだ?え?俺に惚れた?男の俺に?え?女だと思った?…な、なるほど…え?俺が本当に好き?いや…俺男なんだけど…

淫らな悪魔に救済を

ガイア
BL
悪魔のルークは、悪魔のくせに人を不幸にするのが苦手で天使に憧れているような、悪魔界の落ちこぼれだった。 聖職者であるヴィスタ助けられたルークは、ヴィスタに『お清め』と称して犯されている。「お清めをすると、”穢れ”がなくなって、天使になれる」というヴィスタの言葉を信じて……。 (ギザ歯悪魔とヤンデレ聖職者のイチャラブものです!)

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺と父さんの話

五味ほたる
BL
「あ、ぁ、っ……、っ……」   父さんの体液が染み付いたものを捨てるなんてもったいない。俺の一部にしたくて、ゴクンと飲み込んだ瞬間に射精した。 「はあっ……はー……は……」  手のひらの残滓をぼんやり見つめる。セックスしたい。セックスしたい。裸の父さんに触りたい。入れたい。ひとつになりたい。 ■エロしかない話、トモとトモの話(https://www.alphapolis.co.jp/novel/828143553/192619023)のオメガバース派生。だいたい「父さん、父さん……っ」な感じです。前作を読んでなくても読めます。 ■2022.04.16 全10話を収録したものがKindle Unlimited読み放題で配信中です!全部エロです。ボリュームあります。 攻め×攻め(樹生×トモ兄)、3P、鼻血、不倫プレイ、ananの例の企画の話などなど。 Amazonで「五味ほたる」で検索すると出てきます。 購入していただけたら、私が日高屋の野菜炒め定食(600円)を食べられます。レビュー、★評価など大変励みになります!

処理中です...