英国紳士の溺愛

金剛@キット

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第2章 コテージ編

55話 茶番劇

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  アーサーと蘇芳は、ステファノのサロンで礼装へと華麗にドレスアップし、ゼフィロスに到着する。


 2人はクレベールとシャイデマンを見つけると、彼らから見えない位置へと移動した。

 アーサーがスタッフに注文したフルートグラスを受け取り、中身の無色透明な液体を観葉植物の鉢に、半分だけ捨てる。

「何をする気ですか?」

 蘇芳が首をかしげて聞くと、アーサーはイタズラを思いついた子供のように楽しそうに笑う。


「 "炎の水" だ、飲むフリはしても良いが、絶対に飲むなよ蘇芳」

 蘇芳はフルートグラスを渡され、アーサーに捨てられ半分になった中身の匂いを嗅ぐと…
 匂いだけで"炎の水"の正体が強い酒だと分かった。


「何をのですか?」

 蘇芳の黒く清らかな瞳が、アーサーを見上げる。


「先にクレベールのところへ行くんだ、私は用事を済ませたらすぐに行く」

「でも…?」

 蘇芳は自分の手にある、フルートグラスをを見下ろす。


「 君は"炎の水が大好きと" とニッコリ笑って言うダケで良い」

 蘇芳の頬にキスして、アーサーはスタッフを呼び止め、また何かを注文する。




「おお‥ 可哀そうに蘇芳!  ギルボーンの奴… また君を1人にして、冷血漢め! 少しはらしめないと」

「Mr.クレベールお気づかい、ありがとうございます」

 蘇芳が可愛らしく微笑むと、クレベールは蘇芳の肩を抱き耳元で囁く。


「名案がある… 私たちがイチャついて見せて、ギルボーンに嫉妬の炎を付けてやろうじゃないか?」

 蘇芳はどう答えようか迷い、フルートグラスを口に付け飲むフリで時間稼ぎをする。

 唇に着いた液体をペロリと舐めて驚いた。
 
<…アルコール強っ!!!  唇がカアーッとする! まさに"炎の水"! 唇が熱くて火が付きそう!>

 まじまじと蘇芳はフルートグラスの中身を見つめる。


「ダメじゃないか!  また飲んで」

 背後からアーサーの声がして、蘇芳の手からフルートグラスを取り上げた。

「アーサー!」

 ホッ… とする蘇芳。

 ベタベタとくっ付いていたクレベールが、慌てて蘇芳から離れる。

 あまり怒らせると、アーサーが危険な相手だと、クレベールは知っているからだ。


「悪い子だ!」

 アーサーが愛し気に蘇芳の頬を撫でる。

 スタッフが新たなフルートグラスをを運んできて、アーサーが受け取り新しい方をクレベールに渡す。


「この子はコレをがぶ飲みできる男にしか、興味がないと豪語ごうごするのですよ」

 クレベールがフルートグラスに口を付け驚く。


「ウォッカじゃないか!! まさか?!」

 アーサーが持つ、蘇芳が口を付けたグラスをクレベールが取り上げ、中身を確認する。

「ウォッカだ…?!」

 驚愕の眼差しで、クレベールは蘇芳を凝視した。

 近くにいたシャイデマンもクレベールの手から蘇芳のグラスを取り中身を確認する。


「 "炎の水" が大好きなので…」

 恥ずかしそうにぽつりとこぼすと、蘇芳はアーサーの指示通りニコリッ… と笑った。


「いつも普通の飲むから、誰もこの子が飲んでいるモノがウォッカだとは気づかない」

 アーサーはスタッフから新たなフルートグラスを受け取り、ゆっくりと飲み干す。

<…いつもは水しか飲んでいないけど?>

 思わず心で蘇芳は突っ込みを入れた。

 シャンパンは飲めないから、代わりに水を入れて下さいと支配人に頼んだら…
 それ以来、蘇芳にはフルートグラスで水が来るようになったのだ。

「おや、飲まないのですか?」

 ニヤリと笑いクレベールを挑発するアーサー。

 蘇芳もクレベールに、飲まないの? と瞳で問いながら見る。


「ああ飲むとも!」

「止めておけ、お前は強くないだろう?」

 シャイデマンがクレベールを止めるが、クレベールは半分グイッと飲み、火を噴きそうな顔をする。
 
 興味津々で2人のやり取りを見ていた観客が、集まり出した。

 アーサーが新しいグラスを受け取り半分飲むと…
 クレベールも真っ赤な顔で残りを飲み干し、新しいグラスと交換する。


「ダメだ…!! アナタに勝てそうも無い… 次は誰かを落とす賭けにしましょう!」

 アーサーは真っ赤でへべれけのクレベールに新たな勝負を持ちかける。


ずるいぞギルボーン!  私は蘇芳を…」

「蘇芳はダメです私のパートナーですから… ここはフリーの誰かを… Mr.シャイデマンはどうですか?」

 クレベールの側にいたドワーフ男を名指しする。


「シャイデマン?」

 真っ赤な顔で友人を見つめるクレベール。


「落とす自信が無い?  自信が無いなら仕方ない!」

 観客たちがクスクス笑う。


「何?  違うぞ!  そんら… コトは無い! やれるぞ!」

 真っ赤な顔でクレベールはわめき散らした。


「なら決まりだ!  Mr.クレベールが10日以内に、Mr.シャイデマンを落とすそうだ!」

「シャリ‥レマンなら… 簡単に落と…せ…る」

 クレベールがななめに立ち、真っ赤な顔で豪語ごうごする。


「私は彼が落ちない方に賭けよう!」

 アーサーが微笑み、怒った顔のシャイデマンを見た。





「ちょっと飲み過ぎた…少し休みたい」

 アーサーと蘇芳は薄布で仕切られたアルコーブ "見せたがりの部屋"  へ入る。

(のぞき見されるのが前提で、情交を楽しむ空間。ゼフィロス内には他にも趣向をらした個室があるらしい。)

 ローションや、コンドーム、タオル、淫具、その他もろもろをまとめてトレイに載せた、情交セットをアーサーは机から長椅子(ベッドの代用)に移す。

 ナゼかアーサーは、蘇芳を持ち上げ机に座らせる。


「‥あんな仕返し… アナタは悪魔だ!」

 なるべく声が仕切りの外へ漏れないようアーサーを引き寄せ耳元で話す蘇芳。

「一方的にハメられて、黙ってはいられない」

「アナタ酔って… 痛いっ!」

 アーサーはイラつき、ぷりぷりと怒る蘇芳の首筋を強めに噛んだ。


「これで君を口説く男が1人減る」

「シャイデマンはクレベールを愛している… 賭けでもてあそぶのは残酷過ぎます」

 蘇芳はシャイデマンがクレベールを情熱的に誘惑するのを見たことがあった。


「君も気づいていたのか?」

 アーサーは服の上から、蘇芳の脇腹から腰を撫で、シャツをパンツから引き抜き、大きな手を服の下へ潜り込ませる。


「君をもてあそぼうとした奴らに情けは無用だ!」

「でも、あまり気持ちの良いコトではありません…」

 蘇芳は耳を甘噛みされ、かさついた指で乳首の周りを乱暴に弄ねられた。

「あっ… んっ…!」

「ここには仲間意識も確かにあるが、どこにでも弱肉強食は存在する、何も反撃しなければあなどられて、誰にも相手にされなくなる」

「…ただの嫌がらせではなく、必要だったから… アナタは意地悪をしたと言うのですね?」

「そうだ」

 肉厚で柔らかいアーサーの唇が、蘇芳の唇に重なり…
 蘇芳が伸ばした舌を、アーサーが迎え入れ、チュク…ッ…チュチュと強く吸う。

「ん… っ…」
  
 芯が熱を持ち、身体を反らしながら蘇芳はアーサーの首に腕を回すと…
 唐突にアーサーは愛撫を止めて、蘇芳の服を直した。

「アーサー‥?」

 アーサーはため息をつき、ギュッと蘇芳を抱きしめた。

「蘇芳… 観客のいない、2人っきりになれる場所へ行こう」
 
 蘇芳がふと、仕切られた薄布の向こう側を見ると、男たちがひしめきあい、自分たちをのぞいていた。


 恥かしがり屋の蘇芳が、真っ赤になって心の中で絶叫したのは言うまでもない。






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