英国紳士の溺愛

金剛@キット

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第2章 コテージ編

46話 甘い毒

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 アーサーが用意してくれた夕食(管理人が作った料理を温めただけ)を気マズイ空気の中、2人で食べ終えると…
 暖炉の前で、アーサーはウイスキー片手に本棚から一冊選んだ本を読み、蘇芳はアーサーの亡くなった兄、アダムの日記を読み進めていく。

 …一応、蘇芳は日記の続きを読んで良いかアーサーにたずねると…
『目立ちたがりの兄なら注目されて満足だろう、好きにすると良い』
 と許可をもらった。

 蘇芳は再び日記をめくった。
 
"最愛の人とSEXが出来るなら、僕は死んでも良い! 出来ないなら死んだ方がマシ! アナタの甘い毒に犯され、この苦痛に耐え続け、何年も生きるのは地獄だ! 狂いそうだ! 狂いそうだ! 狂いそうだ!"


<…甘い毒… とても他人事とは思えないなぁ>

 チラリとアーサーを盗み見た後、蘇芳は再び日記へと視線を戻す。


"初めて会った時からアナタを愛している!  この世で一番、アナタを愛す僕なら、アナタを犯しても神様は許してくれる"

"アナタの甘い毒に犯された僕だけの権利だ!  アナタを犯して僕は死ぬ!  アナタは僕を嫌うから僕は狂い死ぬしかない!"


<うわあぁぁ~ 激しい… まさに狂気! 天使のようなアダムの容姿からは想像出来ない激しさだ!>

 もう一度蘇芳は、アーサーを盗み見る。

<…いつも冷静なアーサーも、甘い毒に犯される事があるのだろうか?>
 
 偶然、視線を上げたアーサーと目が合い、蘇芳が先に視線を外し、しばらくの間、日記の続きを読み進めるをする。

<赤い髪の愛人について、聞かなければイケナイのに… だけど怖くて聞けない!>


"アナタへの愛を隠せない… 時間の問題だ"

 アダムの日記はソコまでで、日記帳のページ自体が終わっているから、きっと3冊目の日記がドコかにあるハズだ。

 日記をパタンッ… と閉じて、蘇芳はため息をつき顔を上げると、アーサーにジッ… と見つめられていた。

 ちょうどアダムのパネルが、アーサーの後ろの壁に飾られていて、蘇芳は思わずギルボーン兄弟を見比べた。
 
<兄弟なのにドコも似ていない… 容姿も、性格も、人の愛し方も…>
 

「…アナタは誰かを愛したコトがありますか?  以前言っていた、家政婦見習いの女性のコトとかは?」

「16歳の私なりに愛していた」

 意外にもアーサーは穏やかに答え、自分で聞いておきながら蘇芳の胸はうずいた。


「赤い髪の愛人について、教えてください」

「何の話だ?」

「パリで‥ 会っていたのでしょう? ゼフィロスでMr.シャイデマンに聞きました」

 アーサーの顔色が一瞬で変わり、不快そうに唇をゆがめ、読んでいた本をパタリッ… と音を立てて閉じる。


「君はソレを信じたのか?」 

「分からないからアナタに質問しているのです」

「君は私を疑ったのだな?」

「はい」

 アーサーは蘇芳を嘲笑あざわらった。


「だから君は昨夜、ゼフィロスで私への当て付けにクレベールとイチャついて見せたのか?」

「何のことですか? Mr.クレベールとは話をしたダケです」

「話にならないな!」
 
 アーサーはウイスキーをグイっと飲み干した。 


 カッ… と腹を立てて蘇芳は立ち上がり、アーサーをにらみ見下ろす。 

「なぜ僕の質問に、答えないのですか?!」

「さあ、なぜだろうな?」
 
 グラスを置き、指を組んでヒザの上に手を置き、アーサーのブルーグレーの瞳が、冷ややかに蘇芳を見上げた。


「僕の質問に答えるダケで良いのに、答えないのは愛人の話が、真実だからですね?」

「簡単に信じてしまった君に呆れすぎて、答えるのもバカバカしいと思ったからだ」

 怒りで震えながら、アダムの日記をソファーに置き、蘇芳は大マタで玄関へ向かう。


「ドコへ行くんだ?!」

「散歩です!」

「待て! 寒いからコートを着てゆけ!」

「いりません! 空手をするので、どうせスグに脱ぐから邪魔になるだけだし」

「‥取って来るからソコで待て!」

 チィッ… と舌を鳴らし、アーサーは慌てて2階へコートを取りに行く。

 

 蘇芳は怒りに任せ玄関ドアを開き、真冬の闇夜へ飛び出した。




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