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第1章 誓約編
11話 準備 挿絵ステファノ
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学校が終わると、書斎で会ったアーサーの秘書エディが迎えに来て、蘇芳はエステ・サロンへと送られた。
「ごきげんいかが? "SALON DE BEAUTE' STEPHANO -LONDON- へようこそ!」
ラベンダー色のユニフォーム、ピンクのウイッグを付け、綺麗に整えた口ひげに付けボクロをした、すっごく派手なお姉系店長…ではなくて、お姉系経営者のステファノさんが担当してくれた。
「あ… こんにちは、よろしくお願いします!」
蘇芳はぺこりと頭を下げた。
「んまぁ~! なんてかわゆい王子様なの!? さあ、パーティに遅れないよう急がないとね!! んまぁ~! 本当に素敵なおめめ!」
ステファノは蘇芳の顔を引き寄せ、獲物を狙う猛禽のように瞳をギラギラさせた。
「…っ!!!」
いきなり蘇芳のパーソナル・スペースを侵略したステファノにタジタジになる。
「ウフフ、最初はお風呂よ!! 王子様♡」
「・・・・・・」
ニッコリと微笑むステファノに、蘇芳は嫌な予感がした。
ステファノは風呂と言ったが、泥の風呂だった。
それも凄く生臭い異臭がするドロドロで…
「ひいええええええ~っ!」
その臭い泥を鼻の穴以外に、べったり塗られて蘇芳は泥の下で泣いた。
ステファノのサロンの美容フルコースは、蘇芳にとって修行の域に突入するほどの体験であった。
オイルパックをしながら軽食を取り、マッサージに、爪の手入れを念入りにされ、そしてヘアカット。
スタッフが何人かいたけど、全員ステファノのクローンのようにそっくりで、蘇芳には見分けがつかない。
わかるのは当のステファノ本人ダケである。
最後にアーサーがバレッティで選んだ…
アーサーの瞳の色と同じ、ブルー・グレーの生地に刺繍がオシャレに入った服で、ドレスアップしたら完了だ。
全部終えたのは夜会の時間ギリギリで、迎えに来た秘書のエディにガン見され、蘇芳は顔を赤らめた。
寝不足で出来た目の下の黒ずんだクマが消え、しっとりふっくら肌に艶々サラサラの黒髪が、蘇芳の清楚で可憐な魅力を醸し出していた。
「コンタクトですか?」
エディが不思議そうに蘇芳の顔を観察する。
「いえ… 本当はあまり目は悪く無いんです、取り外しが面倒なだけで」
ステファノに命令されて、蘇芳の顔に今は眼鏡は無い。
"跡が残るからパーティが終わるまでかけちゃノンノンよ♡" だそうだ。
待ち合わせをした高級レストランで、緊張気味だった蘇芳はアーサーと合流すると、絶賛され少しホッとした。
「ステファノはいい仕事をする」
「ゴシップ・キングが連れ歩く女性たちには大差で負けるでしょうが」
褒められて、蘇芳は照れ隠しで少しダケ卑屈な言葉を口にした。
「私の可愛い子… 君ほど完璧な愛人はいない、だが残念ながら君のゴシップは表に出ることは無いだろう… 実に残念だ!」
芝居じみたアーサーの言い方に、思わず蘇芳は吹き出してしまう。
「ゴシップ? ‥そこまで考えてなかった!」
そういうアーサー自身も蘇芳の瞳と同じ、漆黒の礼装にダーク・ブロンドとブルー・グレーの瞳がビシリと決まってる。
成熟したゴージャスな大人の艶気が、ムンムン漂い蘇芳は目が離せなかった。
それに良い匂いまでするから、気になって仕方ない。
「さあ行こう! 夜会に遅れる」
アーサーがウェーターを呼ぶと、なぜか店の奥に先導され小さな倉庫の中に入り壁の隅に隠されていた鍵穴に鍵を差し込み、カチリと音を立て隠し扉が開き狭くて暗い通路が現れる。
「へえ~っ…!?」
まるでシャーロックホームズのノリで、蘇芳はワクワクと心躍らせた。
「蘇芳」
アーサーが先に通路へ入り、蘇芳に手を差し出す。
「はい」
蘇芳は両頬をビンタし、気合いを入れてからアーサーの手をギュッ… と握り、暗い通路へと入った。
「ごきげんいかが? "SALON DE BEAUTE' STEPHANO -LONDON- へようこそ!」
ラベンダー色のユニフォーム、ピンクのウイッグを付け、綺麗に整えた口ひげに付けボクロをした、すっごく派手なお姉系店長…ではなくて、お姉系経営者のステファノさんが担当してくれた。
「あ… こんにちは、よろしくお願いします!」
蘇芳はぺこりと頭を下げた。
「んまぁ~! なんてかわゆい王子様なの!? さあ、パーティに遅れないよう急がないとね!! んまぁ~! 本当に素敵なおめめ!」
ステファノは蘇芳の顔を引き寄せ、獲物を狙う猛禽のように瞳をギラギラさせた。
「…っ!!!」
いきなり蘇芳のパーソナル・スペースを侵略したステファノにタジタジになる。
「ウフフ、最初はお風呂よ!! 王子様♡」
「・・・・・・」
ニッコリと微笑むステファノに、蘇芳は嫌な予感がした。
ステファノは風呂と言ったが、泥の風呂だった。
それも凄く生臭い異臭がするドロドロで…
「ひいええええええ~っ!」
その臭い泥を鼻の穴以外に、べったり塗られて蘇芳は泥の下で泣いた。
ステファノのサロンの美容フルコースは、蘇芳にとって修行の域に突入するほどの体験であった。
オイルパックをしながら軽食を取り、マッサージに、爪の手入れを念入りにされ、そしてヘアカット。
スタッフが何人かいたけど、全員ステファノのクローンのようにそっくりで、蘇芳には見分けがつかない。
わかるのは当のステファノ本人ダケである。
最後にアーサーがバレッティで選んだ…
アーサーの瞳の色と同じ、ブルー・グレーの生地に刺繍がオシャレに入った服で、ドレスアップしたら完了だ。
全部終えたのは夜会の時間ギリギリで、迎えに来た秘書のエディにガン見され、蘇芳は顔を赤らめた。
寝不足で出来た目の下の黒ずんだクマが消え、しっとりふっくら肌に艶々サラサラの黒髪が、蘇芳の清楚で可憐な魅力を醸し出していた。
「コンタクトですか?」
エディが不思議そうに蘇芳の顔を観察する。
「いえ… 本当はあまり目は悪く無いんです、取り外しが面倒なだけで」
ステファノに命令されて、蘇芳の顔に今は眼鏡は無い。
"跡が残るからパーティが終わるまでかけちゃノンノンよ♡" だそうだ。
待ち合わせをした高級レストランで、緊張気味だった蘇芳はアーサーと合流すると、絶賛され少しホッとした。
「ステファノはいい仕事をする」
「ゴシップ・キングが連れ歩く女性たちには大差で負けるでしょうが」
褒められて、蘇芳は照れ隠しで少しダケ卑屈な言葉を口にした。
「私の可愛い子… 君ほど完璧な愛人はいない、だが残念ながら君のゴシップは表に出ることは無いだろう… 実に残念だ!」
芝居じみたアーサーの言い方に、思わず蘇芳は吹き出してしまう。
「ゴシップ? ‥そこまで考えてなかった!」
そういうアーサー自身も蘇芳の瞳と同じ、漆黒の礼装にダーク・ブロンドとブルー・グレーの瞳がビシリと決まってる。
成熟したゴージャスな大人の艶気が、ムンムン漂い蘇芳は目が離せなかった。
それに良い匂いまでするから、気になって仕方ない。
「さあ行こう! 夜会に遅れる」
アーサーがウェーターを呼ぶと、なぜか店の奥に先導され小さな倉庫の中に入り壁の隅に隠されていた鍵穴に鍵を差し込み、カチリと音を立て隠し扉が開き狭くて暗い通路が現れる。
「へえ~っ…!?」
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「蘇芳」
アーサーが先に通路へ入り、蘇芳に手を差し出す。
「はい」
蘇芳は両頬をビンタし、気合いを入れてからアーサーの手をギュッ… と握り、暗い通路へと入った。
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