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15話 告白
しおりを挟む「オルテンシア… 私の妻になって欲しい」
「…え?!」
「君が離婚を考えていることは、知っているよ…」
オルテンシアの前で、コホンッ… コホンッ… と咳払いをしたタリオの頬が、うっすらと赤く染まった。
「タリオ様……」
「私はとても不器用で… 上手く、君を口説くことが出来ないから… 私の気持ちを、正直に話すよ!」
「は… はい」
「君は私の家族だ! それに… この3年間はラーマの母親だった!」
「はい」
「私は… いつからか、君を本当の妻だと思っていた」
「・・・・・・」
確かに僕の立場は、妻だけど…?
「私は、1度… 妻を亡くしているのに、また妻を失うのは耐えられない!」
「・・・っ」
そこまで考えていなかった! 確かにタリオ様は愛情深い人だから、仮の家族でも… 僕がいなくなるのは辛いかも知れない…
僕だって、本当はタリオ様が他の誰かと、結婚することを想像しただけで、胸が張り裂けそうになる…
本当は離婚なんてしたくないけど……
「お願いだ、オルテンシア! このまま私の妻でいて欲しい! 私の“番”になって欲しい!」
タリオはオルテンシアの手を取りキスをする。
「タ… タリオ様…?」
ドクッ! ドクッ! ドクッ! ドクッ! 自分の心臓の音がうるさくて… オルテンシアの頭の中は、考えがまとまらない。
「私は君よりもずっと年上で… 若くて美しい君の“番”には、不釣り合いなのはわかっているよ! だけど、君を失うのは耐えられないんだ!」
「“番”…?」
それは… つまり、白い結婚は止めて… タリオ様は僕と…“番” になりたい…?! タリオ様は僕を選んでくれるの?!
「お願いだ… オルテンシア!」
「で… でも、僕は地味で平凡で… タリオ様のように美しくないし…?」
「君は美しいよ! 私にはいつも君が光り輝いて見える!」
「でも… シプレスが……」
シプレスの名前をオルテンシアが口に出したとたん… 急にタリオは不機嫌になり、眉間に深いしわが寄る。
「あの男は自分の腕の中にいる君が、あまりにも近くにあり過ぎて、本当の君の美しさが、少しも見えていなかったのさ!」
「///////// …タ… タリオ様…!」
うううっ…?! それは… ほめすぎでは……?!
オルテンシアの顔から首まで真っ赤に染まる。
「ほら… こうやって、すぐに恥ずかしがって顔を赤くするところなんか、本当に可愛い! 私は、いつ君に… “番”になって欲しいと告白しようか、迷ってばかりいて… 本当に情けない!」
「タリオ様…… 白い結婚を止めたいの?」
「ずっと止めたかった!」
頬を優しくタリオになでられ… 長い腕の中にオルテンシアは抱きしめられた。
ふわりとタリオから放たれた、アルファのフェロモンが、オルテンシアの鼻をくすぐる。
不器用で口下手のタリオだが… 身体から放たれたアルファのフェロモンが、言葉よりも雄弁にオルテンシアに語りかけた。
“君が欲しい! 君と番になりたい! 君を誘惑したい! 君を毎日抱きたい! 君を溺愛したい! 君に執着している! 君を絶対に離したくない!!”
「あっ…」
タリオ様のフェロモン…! 本当にタリオ様は僕を… 僕を…“番”に……!
オルテンシアの瞳から、涙がこぼれた。
タリオの腕の中から、そっとクラベールの墓を見て… 心の中で従姉に語りかけた。
「・・・・・・」
お姉様… 僕はタリオ様と幸せになっても良いですか?
「僕も仲間に入れて!! あははは―――っ!!!」
楽しげな笑い声をあげて、ラーマがおおいかぶさるように、ひざまずいて抱き合う、オルテンシアとタリオに抱き付いた。
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