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6話 解決 シプレスside

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 シプレスはアルボル伯爵邸の執務しつむ室へゆき、伯爵がいつも座ってい革張りの椅子に腰をおろすと… 目の前にある執務机をうっとりとなでた。


「やっとこの時が来た! ふふふっ… 」
 これで何もかもが、僕の思いのままだ! 邪魔なオルテンシアも追いだせて、面倒ごとも無くなった!!
 伯爵家に養子に入った時から、オルテンシアと結婚するのは、僕の義務だと割り切っていたけれど… 伯爵夫妻が先に亡くなったのは、僕には何よりも幸運だったな!

 綺麗にみがかれた執務机に、シプレスは行儀ぎょうぎ悪く靴底に泥をつけたままの足を、グイッ… と上げてドンッ… とのせる。

「ふふふふっ…! うははははは―――っ!!」
 そのうえ、子供の頃からずっと片思いを続けて来た、あのフレサと結婚できるなんて…!! 

 嬉しくて、嬉しくて、自分の幸運を噛みしめながら、シプレスは大笑いをした。
 

 アルボル伯爵夫妻が亡くなったと、学園に知らせが来た時… 学園も卒業まじかだったシプレスは、幼馴染おさななじみのフレサに、思わず愚痴ぐちをこぼした。

『あ~あ… 伯爵位をげるのは嬉しいけれど… 学園を卒業したら、あの子供っぽいオルテンシアと、結婚しなければいけないかと思うと… あ~… 本当にうんざりするよ!』

『君の婚約者? まだ15歳だっけ?』

『そうだよ、まだ15だよ!』

『でも、もうすぐ16でしょう? 立派りっぱに結婚できる年齢じゃないの』

『そうなんだよ! オルテンシアがもっとチビだったら、伯爵夫妻に僕に結婚しろとは、言われなかっただろうけどね!』

『でも、君に話を聞いた感じだと、そのオルテンシアという子… とても可愛い感じじゃないの?』

『確かに、無邪気むじゃきなところは可愛いけどさぁ… 僕としては、やっぱりフレサみたいな、洗練せんれんされた美人が良いよ!』

『嬉しい! 僕の婚約者はシプレスみたいに優しくないから… 本当にオルテンシアがうらやましいよ! どうせなら、オルテンシアに婚約者を交換してくれないか、直接交渉してみようかな?』

『え…? フレサ…?! それってどういう意味だ?』
 ドキドキとシプレスは期待を込めて、フレサの気持ちを知りたくてたずねた。

『もう、何だよ! ずっとシプレスが好きだって、僕はサインを出してたのに~ 全然、君ってば、気づいてくれないんだもん! オルテンシアにメチャクチャ嫉妬しちゃうよぉ~!!』

『フレサ… それって、僕のことを好きだってことか?!』

『好きに決まっているじゃないか! だってシプレスは誰よりも賢くて、素敵だもの!!』

『僕もずっと綺麗きれいな君が… フレサが…! 子供の頃から好きだった! ずっと僕の片思いだと思っていたのに! 嬉しいよフレサ!』

『本当に? 僕のほうこそ嬉しいよシプレス!! だったらオルテンシアなんか止めて、僕と結婚してよ?! 伯爵夫妻が亡くなったのなら、シプレスが爵位を継いでしまえば… オルテンシアも文句は、言えないでしょう?』

『まぁ…そうだけど…』


 アルボル伯爵邸の執務室で、精巧せいこうな彫刻がされた天井板をながめながら… フレサと初めて、心が通じ合った時のことを思い出し、シプレスはだらしないニヤニヤ笑いが、止まらなかった。





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