上 下
6 / 19

5話 決裂

しおりを挟む

 腹がたって、腹がたって… オルテンシアはシプレスを追い返そうと怒鳴り続けた。

「この恥知らず!! 今すぐ、ここから出ていって!!」
 オルテンシアは勇ましく、サッ… と玄関ホールを指差して、怒鳴った。

「何だと?! 僕はアルボル伯爵だぞ?! ここから出て行くのは、お前の方だ!! お前こそ、出て行け―――っ!!」

「ここは僕の家だ―――っ! この浮気者の、恩知らずが!!」
 シプレスの太ももを、オルテンシアは思いっきりとばした。

「この… 黙って聞いていれば生意気な! お前は僕が保護しなければ、何も出来ない役立たずのくせに! お前みたいなオメガは、この伯爵家にはいらない! さっさとこのやしきから出て行け―――っ!」

 顔を真っ赤に染めて、ツバをまき散らしながら怒り狂うシプレスは、オルテンシアの病気でせ細った腕をつかむと、グイグイ… と引っ張って、居間から玄関ホールまで行き、使用人に玄関の扉を開けさせると、邸の外にオルテンシアの背中を突き飛ばして、押し出した。

「この卑怯者ひきょうもの!! 尻軽の浮気野郎―――っ!!」
 邸の外に突き飛ばされて、地面にひざをついても、オルテンシアは怒りの炎がおさまらず、ののしり続けた。

「オルテンシア! 今すぐ僕に謝罪したら、お前を正式にアルボル伯爵家から、持参金をつけて嫁がせてやる! 謝らなければ、このまま追いだすからな!!」

「ここは僕の家だ!! ここでお母様も、お父さまも… それにお祖父様の最期さいごも僕が看取みとった場所だ… ここは僕の家で、お前のような尻軽な、ゲス野郎の家じゃない!!」

 完全に頭に血が上ったオルテンシアは、冷静になれず… 謝るどころか、もっと辛辣しんらつな言葉で、シプレスを非難ひなんした。
 

「ああ、そうか! わかったよ! なら出て行けオルテンシア! アルボル伯爵家の当主となった僕には、お前を追いだす権利があるからな! 2度と顔を見せるなよ? 僕はお前にチャンスをやったのに、それを無駄むだにしたのはお前だからな! 僕は2度もチャンスはやらない主義なんだ!」

 シプレスは冷ややかにオルテンシアに言うと… 
 バタンッ…! と木製の重い扉を閉め、丁寧ていねいにガチャンッ…! と鍵までかけた。

 
「クソッ…! 嘘つきは、絶対に許さないからな! 絶対に許さない!!!」 

 
 オルテンシアはこぶしをにぎり、復讐ふくしゅうの炎を盛大せいだいに燃やした。 







※このページの挿絵は表紙になります(笑)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初めてできた恋人は、最高で最悪、そして魔女と呼ばれていました。

香野ジャスミン
BL
篠田 要は、とあるレーベルの会社に勤めている。 俺の秘密が後輩にバレ、そこからトンでもないことが次々と…この度、辞令で腐女子の憧れであるBL向上委員会部のBLCD部へと異動となる。後輩よ…俺の平和な毎日を返せっ!そして、知らぬ間に…BLCD界の魔女こと、白鳥 三春(本名)白鳥 ミハルにロックオン!無かった事にしたい要。でも居場所も全て知っているミハル。声フェチだと自覚して誤解されるも親との決別。それによって要の心に潜む闇を崩すことが出来るのか。※「ムーンライトノベルズ」でも公開中。2018.08.03、番外編更新にて本作品を完結とさせていただきます。

【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい

市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。 魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。 そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。 不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。 旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。 第3話から急展開していきます。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

神獣様の森にて。

しゅ
BL
どこ、ここ.......? 俺は橋本 俊。 残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。 そう。そのはずである。 いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。 7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】

彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。 「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

処理中です...