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5話 決裂
しおりを挟む腹がたって、腹がたって… オルテンシアはシプレスを追い返そうと怒鳴り続けた。
「この恥知らず!! 今すぐ、ここから出ていって!!」
オルテンシアは勇ましく、サッ… と玄関ホールを指差して、怒鳴った。
「何だと?! 僕はアルボル伯爵だぞ?! ここから出て行くのは、お前の方だ!! お前こそ、出て行け―――っ!!」
「ここは僕の家だ―――っ! この浮気者の、恩知らずが!!」
シプレスの太ももを、オルテンシアは思いっきり蹴とばした。
「この… 黙って聞いていれば生意気な! お前は僕が保護しなければ、何も出来ない役立たずのくせに! お前みたいなオメガは、この伯爵家にはいらない! さっさとこの邸から出て行け―――っ!」
顔を真っ赤に染めて、ツバをまき散らしながら怒り狂うシプレスは、オルテンシアの病気で痩せ細った腕をつかむと、グイグイ… と引っ張って、居間から玄関ホールまで行き、使用人に玄関の扉を開けさせると、邸の外にオルテンシアの背中を突き飛ばして、押し出した。
「この卑怯者!! 尻軽の浮気野郎―――っ!!」
邸の外に突き飛ばされて、地面に膝をついても、オルテンシアは怒りの炎がおさまらず、罵り続けた。
「オルテンシア! 今すぐ僕に謝罪したら、お前を正式にアルボル伯爵家から、持参金をつけて嫁がせてやる! 謝らなければ、このまま追いだすからな!!」
「ここは僕の家だ!! ここでお母様も、お父さまも… それにお祖父様の最期も僕が看取った場所だ… ここは僕の家で、お前のような尻軽な、ゲス野郎の家じゃない!!」
完全に頭に血が上ったオルテンシアは、冷静になれず… 謝るどころか、もっと辛辣な言葉で、シプレスを非難した。
「ああ、そうか! わかったよ! なら出て行けオルテンシア! アルボル伯爵家の当主となった僕には、お前を追いだす権利があるからな! 2度と顔を見せるなよ? 僕はお前にチャンスをやったのに、それを無駄にしたのはお前だからな! 僕は2度もチャンスはやらない主義なんだ!」
シプレスは冷ややかにオルテンシアに言うと…
バタンッ…! と木製の重い扉を閉め、丁寧にガチャンッ…! と鍵までかけた。
「クソッ…! 嘘つきは、絶対に許さないからな! 絶対に許さない!!!」
オルテンシアは拳をにぎり、復讐の炎を盛大に燃やした。
※このページの挿絵は表紙になります(笑)
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