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4話 自分だって地味顔のくせに
しおりを挟む視線をそらし頬をうっすらと赤くするシプレスに、嫌な予感がして… オルテンシアは、ジッ… とシプレスを見つめた。
「でも、フレサさんも婚約者がいたよね?」
学園でも友達で、すごく仲が良いとお兄様に聞いていたから… 一時期、僕はすごく嫉妬して辛かったし浮気されるかも?! …とか、グルグル… グルグル… といっぱい考えて、苦しかったけど…? でもフレサさんにも、婚約者がいるならと、我慢してたのに…? んんん?!
「ああ、実はね… フレサは婚約を破棄されたんだよ」
「えええっ?! 何で?!」
「いや、まぁ… 彼は… その… 妊娠してしまってね…」
「何だって?! ちょっと待ってよ! フレサさんが妊娠した?!! じゃあ、シプレスお義兄様は妊婦と卒業パーティーで踊ったの?!」
「ああ、そうだよ」
「何でお義兄様がパートナーをするの? フレサさんを妊娠させた人がパートナーをつとめれば、良いじゃないか! だって妊婦をパートナーになんかしたら… お腹の子がシプレスお兄様の子どもだと、思われるじゃないか?!」
「ああ……… うん」
「・・・・・・」
嫌な予感しかしないよ?! さっきからシプレスお義兄様ってば、ぜんぜん僕と目を合わせよとしないし……?!
ドクッ… ドクッ… ドクッ… ドクッ… とオルテンシアの心臓が、胸の中で激しく暴れ出した。
「…………実は、ずっと子供の頃から、フレサが好きだった」
「それで…… フレサさんと浮気したの?」
「浮気じゃないさ、フレサとは真実の愛で結ばれたんだから!」
「僕という婚約者がいるのに?!」
「だって、お前はずっと、こっちの田舎にこもりっぱなしだったし… それにお前の容姿は、フレサと違って地味で平凡だし…!」
「それでも、約束は約束だよね?! シプレスお義兄様は、お父様とお母様と… 僕と結婚して伯爵家を2人で守るって! 僕を幸せにするって!! 約束したじゃないか―――っ!」
フレサと違って、僕の容姿が地味で平凡だから?! それを浮気の理由に付け加えるなんて!! なんてゲス野郎だ!
「仕方ないだろう?! お前よりも100倍も美人のオメガに誘惑せれたら、断れないに決まっているじゃないか! …僕とお前では釣り合わないんだよ! フレサはいつも、そう言っているし!!」
「釣り合わないだって?! シプレスお義兄様は、自分の姿を鏡で見たことがないの?! 僕と同じで地味顔じゃないか!! それで良く、僕の悪口をいえるね? 浮気したのは自分のくせに!!」
シプレスが生まれた家は、亡くなった先代伯爵の従弟の家で、オルテンシアとも血のつながりがある親類だから… 容姿はオルテンシアと同じで、平凡で地味な顔の家系だった。
オルテンシアの亡くなった父は、当然のことながら、シプレスを容姿の良さで、養子に選んだのではなく… 学園の成績の良さで選んだのだから、容姿が地味だとオルテンシアを貶すのは、自分の容姿を貶すことにつながると、シプレスは気づいていないのだ。
2人は数時間、口汚い罵り合いを、続けて… 最期にシプレスはオルテンシアに言い放つ。
「お前に新しい結婚相手との縁談を持って来た! ありがたく思えよ!」
「何だって?! どこまで僕をバカにする気なんだ?!」
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