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50話 その後 ーENDー

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 大学の講堂前で、カイリとフユメの母は他の保護者たちと共に、卒業式を終えたフユメを待っていた。

「あ~あ… フユメも社会人かぁ~ これで肩の荷が下りたのは良いけど、なんだか寂しいわねぇ~」
 フユメの母が微笑みながら、贅沢ぜいたくな愚痴をこぼした。

 大学卒業後フユメは、カイリの会社で働く予定である。

「私はカナコさんとの約束を守ることが出来て、ホッ… としてますよ」
 結婚後、まだ若いフユメの母を“お義母さん”と呼ぶのは気が引け… カイリは名前で呼ぶようにしていた。
 
「うふふっ… 1年遅れだけどね!」
 フユメの母は揶揄からかいながら、カイリの腕の中で眠る孫を、愛し気に見つめた。
 
「…本当に申し訳ありませんでした!」
 渋い顔でカイリは義母カナコに謝った。

「順番は逆になったけれど、約束は破ってないし… 私としては文句はないわ」
 義母カナコは手をひらひらと振り、機嫌良く笑う。

 “つがいちぎり”をかわす時、オメガは体内にアルファの体液を受け入れる必要があり…
 フユメもカイリの体液(精液)を受け入れて“番”となったが… 必死だった2人は避妊をおこたり、フユメは妊娠してしまい、大学を1年休学した。

 有能な男カイリも、婚姻届けまでは準備万端だったが…
 オメガ用のアフターピル(避妊薬)を用意することまでは、考えつかなかったのだ。



「お待たせ! 母さん、カイリさん!」
 友人たちと別れの挨拶を終え… 花束を抱えて満面の笑みを浮かべたフユメが、2人の元へ戻って来た。

 番が出来たフユメの誘惑フェロモンは変化して、感知できるのは番のカイリだけとなり、他のアルファの脅威きょういが無くなったため、フユメは引きこもり生活を止めることにした。

 元々明るい気質のフユメは、大学で友人ができ親交を深めることに成功している。


「卒業おめでとう、フユメ!」

「ありがとう母さん!」

「よく頑張ったねフユメ、卒業おめでとう… 結婚式にいどむ、心の準備はできた?」

「はははっ…! ありがとうカイリさん! 大学の卒業式と、結婚式を同じ日に続けてするなんて、聞いたことないよ! さっきも友達に笑われちゃったし」

「神田家の人間は、みんな気が短いと知っているだろう?」
 カイリはニヤリと笑った。

 結婚式の会場は、2人が出会った思い出の場所、ガーランドホテルである。

「さぁさぁ! あなたは主役だから、そんなこと言ってないで急いで! きっとヒロキさんが、式場で気をもんでいるわよ?!」
 フユメ母はパチンッ! と両手を打ち合わせて急かした。

「わかってるよ!」
 本当はフユメも、大学の卒業式よりカイリとの結婚式が楽しみでたまらなかった。

 プラチナの結婚指輪がキラリと光る手で、フユメは熟睡する息子を抱く夫カイリのたくましい腕をなでる。

 フユメが背伸びをすると、カイリはすぐに愛する番が何を求めているか気づき…
 幸せそうに笑いながら唇にキスをした。


 2人は身体の相性だけではなく… 

 心の相性も最良の番となった。





  ー END ー








 あとがき  ○  ○

 ここまで読んで下さり、ありがとうございます☆彡

 何度も中断し、投稿を休んでしまい、ほんとうにすみません…(>_<)
 表現不足が多々ありますが、最後までなんとか書くことができたのは、お気に入りや、エール、しおりを付けて下さった皆様のおかげです。

『アルファの初恋に~』でカイリの弟センリとその妻ヒロキのお話などもあります。

 本当に感謝感激であります!!

 また、何処かでお会い出来れば幸いです!!

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