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47話 誤解
しおりを挟む社長室へ入りフユメをソファにおろすと、カイリは入口のドアに鍵をかける。
「う゛う゛~…」
真っ赤になった顔を両手で隠し、フユメはソファに座りうめき声をあげた。
<1週間の発情期が明けたばかりなのに!! もう嫌だ! カイリさんが相手だと僕は乱れっぱなしで… もしかして僕は淫乱なの?! いや、もしかしなくても、僕はすごい淫乱なんだ?! うわっ、どうしよう~>
自分が職場のオフィスにいることも忘れて、カイリのキスに夢中になり、発情しかけていたことが、フユメは恥かしくて… 恥かしくて… たまらないのだ。
「誤解は解けた?」
ソファに腰をおろし、カイリはフユメを自分の膝の上に乗せて抱きしめた。
「解けてません!」
カイリがたずねると… フユメはキッ… とにらんだ。
「だね…」
苦笑するカイリ。
「それで… 何があったのですか?」
「うん… 私たちが婚約したから、彼女も家族に早く自分の結婚相手を作れと、急かせれていたようなんだ」
「ああ、それでカイリさんに会いに?」
<本当に運命…? て残酷だよね… カイリさんとなら、僕よりも奥さんの方が絶対、お似合いなのに…>
自分の考えに地味に落ち込み、カイリの腕の中でフユメはため息をつく。
「君が社長室に来る前、アリサに復縁を迫られていたけど… 私たちのキスを見て、彼女は私に幻滅していたようだから… たぶん、もう2度と彼女は私と復縁する気にはならないだろうな」
カイリはニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「あっ! そういえば奥さんは?!」
「“元”奥さんなら、気持ち悪そうにハンカチで口を押えてオフィスを急いで出て行ったよ?」
フユメの母と同じように、カイリも“元”を強調した。
「そ… そうなんだ?」
「誤解は解けたかな?」
「えっと…」
もじもじと… フユメは視線をさまよわせる。
「フユメ?」
「カイリさんは… 今も奥さんを愛しているの?」
<何となく、僕の思い込みだったのかなぁ? …て今はそんな気がするけれど…>
フユメの心をおおっていた漆黒のモヤモヤを、今度こそ綺麗に消したかった。
「確かに昔は“元”妻を愛していたけど… 君は一緒に暮らしていて、私がどれだけ君に夢中なのか、本当に分からないのか?」
じろりとカイリはフユメをにらんだ。
「だって… 奥さ…」
「“元”!!」
ムッとしたカイリが言い直す。
カイリに言い直されて、フユメもムッとする。
「だって、元奥さんの方が良い家のお嬢様だから、カイリさんとお似合いに見えたし! それにこの前、あの人が来た時はすごく仲が良さそうで… カイリさんあの人に身体を触らせていたし!! 僕の目の前で元奥さんと会っていて、僕には何の説明も無いし!!」
「ああ… そういうことか!」
困った顔をして、カイリが頭をぽりぽりとかく。
「何が、そういうことですか?! カイリさんが話してくれないから、僕も聞けなくて悩んでいたら… ストレスで身体の調子も悪くなるし!!」
「いや… フユメは元妻の顔を知らないと思っていたから… 正直、知らないなら、君には言わないで、知らないままにしておこうと思っていたんだ」
実際… 平沢がフユメに余計なことを吹き込まなければ、カイリの思惑通り何も起こらず… フユメは平和に過ごせたはずだった。
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