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30話 複雑な思い カイリside
しおりを挟む実家、神田グループでカイリが重役として名を連ねる会社へ行き、重役たちとの会議を終えてようやく自分の会社へ戻ると…
弟センリの妻ヒロキと、カイリ自身の婚約者フユメが和気あいあいと並んでパソコンに向かい、作業をする姿が視界に入った。
「お帰りなさい社長」
「社長、お疲れ様です」
「ただいま、何か問題は無かったかい?」
「いたって平和でしたよ」
「そうか、ありがとう」
社員たちが社長の帰社に気づくと、続いてヒロキとフユメもカイリに気づき、声をかけて来た。
「カイリさん、お帰りなさい」
穏やかに微笑むヒロキ。
「あ! お帰りなさい!」
キラキラと瞳を輝かせるフユメ。
「ただいま」
並んだ2人の姿を見て、カイリはフゥ―――ッ… とため息を1つ吐く。
じいぃ――――っ・・・ と "構って欲しい!!" と瞳で訴えるフユメに
小さくうなずき細い肩をトンッ… トンッ… と軽くたたいた。
フロアの片隅にある、木目調のボードとガラス製のパーティションで仕切られた、社長室へ行こうと視線をそちらへ向けると…
数歩先にあるデスクに着き、カイリとフユメをジッ… と観察していたらしい平沢と目が合う。
「お帰りなさい社長」
「ただいま」
そっけなく挨拶を交わして平沢とすれ違い、カイリは真っ直ぐ社長室まで行き、扉を開いたところで振り返ってフユメを見ると…
予想通り平沢が、なれなれしくフユメの肩に手を置き口説いている様子だった。
<あの野郎ー!!>
一瞬カアッ… とカイリの頭に血が上ったが…
フユメの隣りに座るヒロキが何かを言うと、渋々平沢が口説くのを止めてフユメから離れた。
ホッ… としたカイリは社長室へ入る。
ビジネスバックをデスクの脇に置き、上着の胸ポケットからスマホを出してチェックすると…
「・・アリサ?」
離婚した元妻からのメールに気付き、内容を確認する。
"おば様からカイリさんが婚約されたと聞きました、今度会いに行っても良いですか?"
「どうやら母さんが、黙ってはいられなかったようだな」
フッ… と微笑み、カイリは直接話そうと、元妻にその場で連絡を取る。
「アリサ元気だったか? 」
《あ! カイリさん、お久しぶりですです! 連絡ありがとう!!》
「今、話す時間はあるか?」
《ええ、勿論よ! カイリさんこそ、まだお仕事中でしょう? 忙しい時にごめんなさい!》
「構わないよ、ちょうど休憩しようと思っていたところなんだ」
《うふふっ… 相変わらず優しいのね、カイリさんは》
確かに2人は離婚したが、大喧嘩をして別れたわけではなく、むしろ円満に友好的な関係を築きつつ別れた。
現に両家の実家も、特に母親同士が仲良く、そのためカイリと元妻アリサも、今は友人として付き合っている。
そうやって、離婚後も名家と名家の面目を保つことにしたのだ。
だからと言ってカイリも、元妻アリサも、何も感じないわけでは無い。
会えば必ず複雑な気分になるため、なるべく2人は距離を置くように心がけていた。
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