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15話 面談の後
しおりを挟む着慣れないスーツから普段着に着替え、大きな通学用のカバンを持って…
フユメは、再びカイリが運転する車の助手席に座っていた。
「あ… ありがとうございます… カイリさん、お仕事の方は大丈夫ですか? かなり、遅刻してしまっているでしょう?」
3者面談が無事に終わり、カイリはフユメの母の面接試験を通り、合格を言い渡された。
その後、フユメは大学に行くなら、カイリが会社に行くついでに車で送ると言い、母にもそうしろとすすめられ…
そして、今に至るのだ。
「大丈夫だよ、今日の出張は午後からだし、ほとんど影響は無いからそんなに気にしないでくれ」
おずおずと尋ねるフユメをチラリとカイリは見た。
助手席に腕を伸ばし、色素の薄いフユメの柔らかな髪を左手で撫で、右手でハンドルを握り、カイリは進行方向を見つめたままニコリと笑った。
「それにしても母さんったら!! 本当に失礼なんだから… 結構良い会社で働いていて、いつもは、あんなに感じの悪い人ではないけど… 僕のせいで苦労しているから、僕のことになると急に怖い人になるのです」
母の無礼の数々に、顔を赤くするフユメ。
「苦労して大切に育てた息子を、私に盗られるかもしれないなら、仕方ないよ? 私だって自分の子が嫁入りするとなったら、もっと面倒な父親になるはずだからね」
「ふふふっ… そう言ってもらえると、気が楽です」
「おやおや、私は冗談ではなくて、本気で言ったのだよ?」
「ふふふっ…」
<父親かぁ~ それは僕に将来、子供を産んで欲しいという意味だよね? カイリさん?>
「それよりもさっきの件だけど、考えてくれたかな?」
「さっきの件というと… カイリさんとの同居の話ですか?」
「うん、そう… それ!」
話が一通り落ち着くと、カイリはフユメの母に約束通り…
離婚の原因となった遺伝子の組み合わせが、最悪だったという、検査の診断書を見せた。
嘘、偽りのない話だと裏付けられ、診断書の写真をスマホで見て、母はようやく納得して、ホッ… と胸を撫で下ろした様子だった。
だが、その後の… 母の言葉がいけなかった。
『納得していただけて良かったです、他に疑問があればお答えしますので、遠慮なく言って下さい、フユメも良いね?』
カイリのキラー・スマイルにフユメはうっとりと、はい☆彡カイリさん! …と答えたが、母は少しも動じず…
『まぁ、神田さんのような社会的に有名な人が、大学生をオモチャにするためだけに、こんな面倒なことをするのも、おかしいですしね!』
『母さん―――っ!! 散々無礼なことをいっておいて、何それ?! 僕は息子として恥ずかしいよ!! きちんと今すぐ、カイリさんに誠心誠意、心を込めて謝罪して―――っ!!』
ぬけぬけと恥かしげもなく、言って退ける母に、普段はおっとりとしているフユメも、さすがに顔を真っ赤にして激怒した。
あまりにも激怒するフユメをなだめるために母は…
カイリがフユメとお互いのことをもっと知りたいからと、同居(同棲)を提案すると…
『結婚前だから、絶対に妊娠させないことと、"番"にしないこと、大学は必ず卒業することを、約束出来るなら許可します』
<ううわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――っ…!!!!!>
思いだしただけで、フユメの顔は真っ赤になり、助手席でわたわたとする。
「・・・・?」
情緒不安定気味なフユメの姿を… カイリは不思議そうに、チラチラと運転をしながらながめていた。
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