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3話 パニック
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パニックになりかけていたフユメは、低く穏やかな声でなだめられ、少しずつ冷静さを取り戻してゆく。
「慌てないで、落ち着いて… 君が"スプラウト"…だね? 大丈夫だよ、私が側に付いているから大丈夫だ!」
「は… はい…」
<ううっ… やっぱりこの人が、待ち合わせのアルファさんだ!!>
アプリに登録したアカウント名を確認され、フユメはドキリッとした。
逞しい腕に支えられ、フユメは相手の顔を見あげると…
すごいイケメンの瞳に、映る自分の顔が確認出来るぐらい、近くでニコリと微笑まれた。
増々フユメの顔も身体も熱くなってしまう。
<あわわわっ… 顔、近っ! 近過ぎるよっ~っ…! おでこのブツブツ見られたら、どうしよう?! 恥ずかしいよぉ~っ…>
どうしても我慢出来ず、フユメはおでこのブツブツを、さっと手で隠す。
「初めまして、"Meer"こと、神田カイリです」
「…初めまして… 僕は… 朝日フユメ… です…」
「上に部屋を取ってあるから、そちらに移動しようか」
「部屋… ですか?」
<えええええ―――っ?! どうしよう…! どうしよう!? 僕はまだ、そんなつもりないのに、初めて会った人とそんな…っ! エッチなんて、どうしよう?!>
口をパクパクするフユメ。
「大丈夫だよ、フユメ君! いきなり押し倒して抱くような、野蛮なことはしないから…」
決心がつかず、グズグズと悩むフユメの姿を見て、カイリは苦笑した。
「あっ… ごめんなさい! 僕は… 全然経験が無くて、どう対処して良いかわからなくて…」
ここまで自分がアルファに対して、過剰な反応を示すとは思わなくて… フユメは制御できない自分の心と身体に、じわりと悔し涙がにじむ。
激しいフユメの混乱ぶりを、正確に読み取った大人アルファの神田カイリは、残念そうに小さくため息をついた。
「このまま、家まで送って行こうか?」
「え…?」
<…そうした方が良いかも知れない… このままだと、この人にすごく迷惑かけてしまいそうだし… でも、そうすれば… この人は二度と僕と、会ってくれないだろう>
どうしよう? どうしよう? とフユメが迷いに迷っていると…
「君の前に会った相手が、今の君と同じような反応をして、困ったことになってしまったから… その時は、オフィス街のカフェで相手が発情してしまってね… それで今回、君とはホテルの部屋で会うことにしたんだ」
「そ… そんな事情が?!」
「うん… つまり、君の発情は想定済みなんだ! 抑制剤は持っている?」
「は… はい…」
「ただね、アプリの遺伝子情報通り、私たちは身体の相性が良過ぎるんだよ… 前回会った相手よりも、君の方が強い反応に見えるから…」
「それって、やっぱり僕たちが… "運命の番"だから?」
「たぶん… だけど私は心の相性も含めて良い相手のことを"運命の番"と、呼びたいけどね!」
神田カイリはうなずき、答えた。
「神… 神田さん…?!」
「私は君を下の名前で"フユメ君"と呼びたいから、君も私を名前の"カイリ"と呼んで欲しいな?」
神田カイリはニコリと笑い、さりげなくフユメの心をギュッとつかむ。
「・・・っ」
<うわっ… この人、容姿だけでなく… 中身もカッコイイ人だ… わあっ、どうしよう…! このまま離れたくないよう…! 僕は本当に… "運命の番" を見つけたかも知れないのに?!>
すごく嬉しくて、感動して… さっきまでとは違う種類の胸のドキドキが、フユメの全身にめぐり出す。
「カイリさん… お部屋に連れて行って下さい!」
「慌てないで、落ち着いて… 君が"スプラウト"…だね? 大丈夫だよ、私が側に付いているから大丈夫だ!」
「は… はい…」
<ううっ… やっぱりこの人が、待ち合わせのアルファさんだ!!>
アプリに登録したアカウント名を確認され、フユメはドキリッとした。
逞しい腕に支えられ、フユメは相手の顔を見あげると…
すごいイケメンの瞳に、映る自分の顔が確認出来るぐらい、近くでニコリと微笑まれた。
増々フユメの顔も身体も熱くなってしまう。
<あわわわっ… 顔、近っ! 近過ぎるよっ~っ…! おでこのブツブツ見られたら、どうしよう?! 恥ずかしいよぉ~っ…>
どうしても我慢出来ず、フユメはおでこのブツブツを、さっと手で隠す。
「初めまして、"Meer"こと、神田カイリです」
「…初めまして… 僕は… 朝日フユメ… です…」
「上に部屋を取ってあるから、そちらに移動しようか」
「部屋… ですか?」
<えええええ―――っ?! どうしよう…! どうしよう!? 僕はまだ、そんなつもりないのに、初めて会った人とそんな…っ! エッチなんて、どうしよう?!>
口をパクパクするフユメ。
「大丈夫だよ、フユメ君! いきなり押し倒して抱くような、野蛮なことはしないから…」
決心がつかず、グズグズと悩むフユメの姿を見て、カイリは苦笑した。
「あっ… ごめんなさい! 僕は… 全然経験が無くて、どう対処して良いかわからなくて…」
ここまで自分がアルファに対して、過剰な反応を示すとは思わなくて… フユメは制御できない自分の心と身体に、じわりと悔し涙がにじむ。
激しいフユメの混乱ぶりを、正確に読み取った大人アルファの神田カイリは、残念そうに小さくため息をついた。
「このまま、家まで送って行こうか?」
「え…?」
<…そうした方が良いかも知れない… このままだと、この人にすごく迷惑かけてしまいそうだし… でも、そうすれば… この人は二度と僕と、会ってくれないだろう>
どうしよう? どうしよう? とフユメが迷いに迷っていると…
「君の前に会った相手が、今の君と同じような反応をして、困ったことになってしまったから… その時は、オフィス街のカフェで相手が発情してしまってね… それで今回、君とはホテルの部屋で会うことにしたんだ」
「そ… そんな事情が?!」
「うん… つまり、君の発情は想定済みなんだ! 抑制剤は持っている?」
「は… はい…」
「ただね、アプリの遺伝子情報通り、私たちは身体の相性が良過ぎるんだよ… 前回会った相手よりも、君の方が強い反応に見えるから…」
「それって、やっぱり僕たちが… "運命の番"だから?」
「たぶん… だけど私は心の相性も含めて良い相手のことを"運命の番"と、呼びたいけどね!」
神田カイリはうなずき、答えた。
「神… 神田さん…?!」
「私は君を下の名前で"フユメ君"と呼びたいから、君も私を名前の"カイリ"と呼んで欲しいな?」
神田カイリはニコリと笑い、さりげなくフユメの心をギュッとつかむ。
「・・・っ」
<うわっ… この人、容姿だけでなく… 中身もカッコイイ人だ… わあっ、どうしよう…! このまま離れたくないよう…! 僕は本当に… "運命の番" を見つけたかも知れないのに?!>
すごく嬉しくて、感動して… さっきまでとは違う種類の胸のドキドキが、フユメの全身にめぐり出す。
「カイリさん… お部屋に連れて行って下さい!」
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